―死ぬまでに食べたい物、それはモカミルクシェイク
エミリーはワシントンDC近くのホスピスに入院していた。彼女はすい臓癌だった。
人生最後の日が間近に迫っていると知っていた彼女。彼女はワシントンDC近くのホスピスに入院していたが、出身はオハイオ州クリーブランドハイツ。
同じくクリーブランドハイツ出身で彼女の友人であったサムは、お見舞いに行った時にエミリーに何か欲しい物はないか聞いた。
すると彼女は笑顔で言った。
「もしも願いが叶うなら、もう一度トミーズのモカミルクシェイクが飲みたいわ」
アメリカ人にとってシェイクというと、小さいころから慣れ親しんだ思い出の味。バーガーショップには必ずシェイクがあり、好きな人はフライドポテトを付けながら食べたりする。
アメリカの有名チェーンファストフード店の「ソニック」などは、シェイクだけで何十種類ものフレーバーがあるくらいだ。
また、ダイナー(ファミリーレストランのような場所)にもシェイクは必ずあり、地元のダイナーにはそこだけの特別な味がある。
エミリーにとってもシェイクは思い出の味。しかも地元、クリーブランドハイツのダイナー、「トミーズ」のシェイクは彼女にとって特別なシェイクだった。
ただ、ここはクリーブランドハイツからは遠く離れた場所。もちろん、その願いが叶うなどとは思っていなかった。
サムは最初、トミーズのお問合せ窓口のEメールにエミリーの事を書いて送った。数日後、なんと、オーナーのトミー自身から電話がきた。
トミーは「なんとか方法を考えよう」と言ってくれたのだ。ただ、今までそんな注文を受けたことは一度もなかったトミー。「本当にできるかどうかは正直わかりませんでした」と後にトミーは言った。
モカミルクシェイクはドライアイスを詰めた箱に入れられ、123ドル(約1万3千円)の特急便で600キロメートル先のエミリーへ届けられた。
エミリーの願いは彼女が亡くなる1か月前に叶えられた。
大好きなミルクシェイクを嬉しそうに飲んだエミリーは7月28日に50歳でこの世を去った。
―海外の反応