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ヘビ毒を注射する男、新たな解毒剤開発の希望に

  • 2018年01月04日 10:19:00

【1月3日 AFP】かれこれ30年近く、英ロンドン在住の爬虫(はちゅう)類愛好家でミュージシャンのスティーブ・ラドウィン(Steve Ludwin)さん(51)は、ヘビの毒を自分に注射し続けている。死にかけたこともあるといい「正気の沙汰ではない」と自ら口にするが、その習慣が今、何千人もの命を救う可能性があると注目を集めている。

 ヘビ毒に対するラドウィンさんの生体内反応を観察して新たな解毒剤を開発する研究が進んでいるのだ。

「僕がやっていることはまるで正気の沙汰ではないように思われているけれど、健康に大きく役立つかもしれないと分かったんだ」と、ラドウィンさんはロンドンの自宅でAFPの取材に語った。

 ラドウィンさんは記者の前で、長年の習慣を実演してみせた。緑色の毒ヘビ、ポープアオハブの頭部をがっちりとつかみ、毒を数滴、搾り出す。そして数分後、その毒液を注射器で自分の腕に注入した。こうやってもう何年も、世界有数の危険な毒ヘビの毒を注射しているとしながら、これまでにブラックマンバやコブラの毒も注入したことがあると話した。おかげで免疫系が強化され、この15年間は一度も風邪を引いたことがないのだという。

 だが、万事良しというわけではない。これまでに、注射する毒の量が多すぎてロンドン市内の病院の集中治療室に3日間、入院する羽目になったこともあるという。「事故だって少なくなかった。これは極めて危険な行為だ。他の人には勧めない」と、胸にヘビのペンダントを下げたラドウィンさんは語った。

 ヘビの毒を注射するときの感覚については「全然気持ちの良いものではない」と話す。「ジム・モリソン(Jim Morrison)のトリップみたいにはいかないし、ものすごく痛い」と、ラドウィンさんは米ロックバンド「ドアーズ(The Doors)」のボーカルを引き合いに出して説明した。

■安価な解毒剤

 この独特の習慣に2013年、デンマークのコペンハーゲン大学(University of Copenhagen)の研究チームが着目した。ラドウィンさんの持つ抗体を利用して抗毒血清の開発に乗り出したことで、新たな意義が生まれたのだ。

 現在、4人の研究者がフルタイムで携わる抗毒素開発は、年内にも完了する見込みだ。成功すれば、各種ヘビ毒を自ら注射したドナー(提供者)から作られたヒト由来の抗毒素第一号ということになる。これまでの解毒剤には、ウマなどの動物に毒を与えて抗体を採取したものが利用され、数千ドルから高いものでは数万ドルと非常に高価となっていた。

 コペンハーゲン大健康科学医学部のブライアン・ローゼ(Brian Lohse)教授は、開発中の解毒剤は100ドル(約1万円)程度で提供することを目指していると説明。政府や非営利団体(NGO)の協力を得て、いずれは無料の新しい抗毒素を実現したいと語った。

 世界保健機関(WHO)によると、世界では毎年約540万人がヘビにかまれ、8万1000~13万8000人が命を落としているという。

 ローゼ教授はラドウィンさんの研究への貢献度は無視できないと評価しつつも、やはりその習慣は手放しで賛成できるものではないとしている。

 同教授は「科学と、将来ヘビにかまれる犠牲者は恐らく、スティーブさんの努力に感謝するだろうが、自己免疫を自らつけようとするのは非常に危険だ」と指摘し、「スティーブさんは何度か非常に危険な目に遭っている。他の人たちには、まねしないよう強く忠告する」と念を押した。映像は、2017年11月9日撮影。(c)AFP/AFPBB News
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