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江戸吉原おいらん道中で賑わう浅草の色街で見つけた「悲しき遊郭の女たち」を弔う吉原神社弁財天【村田らむ】



毎年4月中旬に、浅草では『浅草観音うら一葉桜まつり』というお祭りが開かれる。小学生のパレード、フリーマーケットなどが開催される。祭りのメインイベントであり最も賑わうのが『江戸吉原おいらん道中』である。


おいらんとは、吉原遊廓の遊女の中でレベルの高い人の名称だ。パレードの場所は吉原に近い場所で開催される。


さすがに実際の吉原の中心部ではパレードはしない。なぜなら、ほぼソープランドしかないからだ。まれに「吉原のあたりに行ってみたい!!」という女性に会う。


漫画『さくらん』(安野モヨコ)、『花宵道中』(宮木あや子)などの吉原を舞台にした作品を読んで憧れたのかもしれない。または歌舞伎町のようなソープランド“も”ある街の雰囲気が好きなのかも知れない。


実際のソープランド街はそんなに楽しいものではない。ソープランド街はそもそもそれほど多くの人通りはない。あらかじめ店を決めて来る人がほとんどだし、車で最寄り駅まで出迎えに行く店舗も多い。



ソープランドの前には、強面のお兄さんが立っている場合も多く、歩いているだけで緊張する。まだ基本的に、働いていない女性は歓迎されない。さすがに怒鳴られることはないだろうが、睨まれたり舌打ちくらいはされるかもしれない。


歌舞伎町などのソープランド“も”ある繁華街は、近くにはバーや居酒屋などがたくさんあり盛り上がっているが、吉原には飲食店はほとんどない。喫茶店はあるがそれは、ソープランドを紹介してもらえる、ガイド喫茶だ。女性でも利用できなくはないのだが、困った顔をされる。それでも少し離れた場所には、獣肉などを食べられる古くからのお店はある。ただ、そのためにわざわざ足を運ぶのかと考えると、ちょっとハードルが高い。


見返り柳、吉原大門などもあるが、もちろん後から作られた物だ。江戸時代の吉原の雰囲気が残っている場所はほとんどない。


今回紹介するのは、吉原神社だが、ここもそれほど古い建物ではない。


吉原にはそもそも5つの稲荷社があったが、明治5年に合祀して吉原神社と名付けられた。しかし1923年に発生した関東大震災で焼け落ちてしまった。仮社殿を経て、1934年に現在の場所に新社殿が作られた。その際、吉原の花園池にあった吉原弁財天も合祀された。


しかしその社殿も1945年の東京大空襲で焼け落ちてしまう。吉原炎上は五社英雄の映画のタイトルだが、本当によく燃える。







そして1968年に建てられたのが現在の社殿である。たった50年ほどの歴史がない。吉原神社から少し離れた場所に建てられている『吉原弁財天』はそんな吉原の凄惨な歴史を慰霊している。


関東大震災の時には大火事になり、遊女たちが500人近く亡くなった。歩いてみると分かるが、吉原はそれほど広い場所ではない。この狭い範囲で500人も亡くなっていたのかと思うと驚愕だ。


また、第二次大戦中でも大火事になりやはり少なからず死亡者が出たという。


戦後すぐは、米兵のための慰安施設・RAA(特殊慰安施設協会)になった。暴力事件はしょっちゅう起こり、性病が広がったので1年足らずで禁止になった。戦後の暗部だ。


敷地の真ん中に作られた観音さまは、関東大震災の殉難者を慰霊している。山の周りにも様々な慰霊碑が建てられている。大量の卒塔婆もある。そんな歴史のある場所なので、吉原弁財天を心霊スポットだと言う人も多い。以前、霊能者を名乗る人が「ここはダメです!!」と言って大騒ぎしていたという。


僕は霊のたぐいは信じていないので、そういう霊能者を見ると問答無用でどつきたくなる。ただ、それでも吉原弁財天は奇妙な雰囲気のある神社だと思う。歩いているとなんだか不安な気持ちになっていく。



祀られていた弁財天は、江戸時代吉原で働く人達には信奉されていた。今でも弁天様(実際には市杵島姫命(イチキシマヒメ)、神仏習合において弁財天と同じとされた)が祀られている。


吉原のソープランドで働いている女性が、良い姿勢で手を合わせ丁寧に拝んでから出勤していた。なんだか清々しい気持ちになった。



 

村田らむ <ライター / 漫画家 / カメラマン / イラストレーター>

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教、富士の樹海などへの体験取材、潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ゴミ屋敷奮闘記』(有峰書店新社)など多数。

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