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山水画の風景が残るのも共産党のおかげ?中国・桂林市の観光の目玉「漓江くだり」でノスタルジーに浸る【村田らむ】



中国の旅行を調べてみると上海ツアーと北京ツアーがまっさきに出てくる。上海は、近代的な超高層ビル群と昔ながらのノスタルジックな裏通りのコントラストが人気だ。ディズニーランドへ行く人も多い。北京は首都であり、万里の長城など歴史好きにはたまらない観光名所がたくさんある。北京ダックなど食べ物もたくさんある。


パンダ繁殖研究基地でパンダに触れ合うことができる成都ツアーや、ロシア文化と中国文化の入り混じった異国情緒のある景色を楽しむことができる大連市西崗区への旅行も人気が高い。


2017年夏、僕は中国の南部に旅行に出ていた。桂林でガイドと合流し、高速鉄道(日本でいう新幹線)で玉林に移動して数日間取材した。そして、再びガイドと高速鉄道で桂林に戻る。電車の中でガイドがいかにも不思議そうに語る。


「日本から桂林来る人、みんな『漓江(りこう)くだり』が目的。体験しない人はじめて。もし時間あるなら絶対行くべきよ。もし乗るなら、安くチケット取るよ」


と何度も言われた。観光地にはあまり興味がなかったものの、ずっと言われると乗りたくなる。再び中国南部に来ることもまずないだろうなと思い、話に乗ることにした。


ホテルに泊まった翌朝、ガイドとガイドが雇った自動車に乗って漓江くだりのスタート地点へ移動する。



観光用の船が何隻も停泊している。


船内はとても豪華な作りだ。どの船も大いに賑わっている。


しばらくしてボートは進みだした。


「曇りなのよかった。漓江くだりは曇りの日が一番キレイって言われています」


しばらく進んでいくと、いかにも中国の山水画に出てくる風景が出てきた。社会の教科書に載っているカルスト地形というやつである。「烏龍茶のCMで見たな〜あとドラゴンボールの一巻に出てくる孫悟空のふるさともこんな雰囲気だったな」とひとりごちると、まさかガイドが乗ってきた。


「ドラゴンボール!! 私もとても好きでした。あとスラムダンクも好きでしたね。当時の高校生や大学生みんな読んでました。それらが流行って、みんな日本のアニメも見るようになりました」


と楽しそうに話す。日本の漫画・アニメは中国でも高い人気があるらしい。



玉林は日本人はほとんど訪れない場所だし、玉林の人たちも日本人には特に興味がなかった。しかし『ワンピース』の絵が描かれた自動車が停まっていた。他にもちょくちょく、ドラえもんなどの日本の漫画の絵を見かけた。


他にはLINEのキャラクター(ウサギとか)も良く見かけた。ただし、中国ではLINEは使えない。キャラクターだけ人気というのも変な話である。


ボートはゆっくりと川を下って行く。


ボートの屋根に登って観光する人が多い。いかにも派手な服を着込んだオバサマたちが、スマートフォンで自撮りをしている。ピンクや赤の派手な服を着ている人が多かった。



日本に来ている中国の観光客の人たちだなと思った。実際、北京や上海からの観光客が多いそうだ。


「北京や上海から『キレイな空気を吸うために』来る人が多いですね。何よりもGDPを優先してますから、排気ガスなどの公害問題には目をつむります」


しかしなぜ桂林では工場を稼働しないのだろう。観光もたしかに儲かるだろうが、やはり工場のほうが儲かるだろう。


「昔、偉い人が桂林の漓江くだりをした時に、これだけキレイな場所に工場があるのよくない。工場やめろって言ったんです。それで工場なくなりました」


とガイドは告げた。国の偉い人の一言で、工場がなくなってしまう。さすがの共産主義国家である。ちなみに漓江くだりの山のすそのに生えている竹林も、偉い人が「竹林があった方が良い」と言ったので一斉に植えたんだそうである。でもたしかに、竹林は風景に合っていた。鳥や水牛など動物もいて、なんとも気持ちの良い風景だ。







中国っぽくない村が見えてきたので尋ねると「昔からイスラム文化の人たちが住んでいる村です」と言われた。様々な人たちが住んでいるのは面白い。



しばらく船の上で風景を眺める。見どころのポイントがあり、そこで皆写真を撮る。むき出しの壁が馬に見える場所、滝が流れている場所、などでみんな写真を撮る。日本人には、サントリーの烏龍茶のCMで使われたポイントが人気だそうだ。20元札に使われている場所も人気で、ガイドに写真を撮りましょうと言われて1枚撮った。今回の中国旅行で唯一の僕の写真である。


食事をとるため船内に戻った。他の客を見てみると、楽しそうに風景を見ているのは大人だけだった。子どもたちは、いかにもつまらないという顔で、スマートフォンやゲーム機をいじっていた。小学校の修学旅行で神社仏閣を見させられるのと一緒だろうな、と思う。こういう観光地は大人が自分で決めて自分のおカネで見に来るから楽しいのである。子供には渋すぎる。


弁当は米、肉団子、グリーンピース、コーンがびっちり詰まっていた。



3時間ほどかけてボートは下流のゴールにたどり着いた。川の流れがゆっくりの時は4時間ほどかかるらしい。


停泊しているあたりは商店が出ている。


ボート乗り場まで送ってくれた自動車はすでに到着していた。乗り込んで次の目的地まで向けて出発した。




 

村田らむ <ライター / 漫画家 / カメラマン / イラストレーター>

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教、富士の樹海などへの体験取材、潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ゴミ屋敷奮闘記』(有峰書店新社)など多数。

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