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絶滅危惧種の産卵魚が巻き網で一網打尽…本マグロ今年初の水揚げに「仲卸業者が素直に喜べない」深刻すぎる理由とは?【生田よしかつ】



いよいよ今年も本マグロの水揚げが始まった。これには毎年ため息しか出ない。「おめぇはマグロ屋だから儲かってしょうがねぇっていうため息かっ!」と怒られるかもしれないが、まったくその逆だ。


本マグロ:1000本43.4トン 境港で初水揚げ 昨年より8日早く /鳥取 - 毎日新聞 https://t.co/Vi6vOezJXI

— New's vision (@news_vision_o) 2018年6月11日


今、太平洋クロマグロは初期資源量の2.6%しかいなくなってる。まさに絶滅一歩手前という状態なんだ。このことは国際的にも知られた話で、国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種のリストに載せられている。


このリストは世界的にも認められたもので、絶滅しそうな動物の貿易を禁ずる「ワシントン条約」にも大きな影響力を持っている。ちなみに二ホンウナギもこのリストに載せられている。


オレもマグロが生業の人間だし、食べるのも好きだから、何も「捕るなっ!売るなっ!喰うなっ!」と言ってるわけじゃない。要は程度問題だと思うんだ。


このニュースの漁法は巻き網漁というものだ。読んで字のごとく、群れに対して網を巻いて捕る漁法だ。ご推察の通り、群れのほぼすべてを一網打尽にすることが出来る。とても効率的な漁法で、海外の漁業先進国もほぼこの漁法が主流だ。消費の立場からすれば、安くある程度安定的な供給につながるのだから、決して悪い話じゃない。


ただそれは水産資源というものに、真正面からきちんと向き合っていればという前提があっての話だ。







実はこのニュースに書かれている漁獲は、産卵場で行われている。もちろん捕ってるマグロは子供を産むためにやって来た産卵魚たちだ。次世代を残す前の段階で、一網打尽にされているというのが現状だ。これらのマグロの腹の中からはたくさんの卵が採取されている。


産卵場で産卵魚を網で巻くなんてことは、わが国以外ではほとんど禁止されていると聞く。大いに納得というより、当たり前のことナニ言ってやがる!ってなもんだ。



でも、その当たり前のことが、日本では長年にわたって放置されてきている。その結果が「初期資源量の2.6%しかクロマグロがいない」ということだ。


ただここで注意しなきゃいけないのは、巻き網漁業者が悪者ではないってこと。まぁ資源事情を知っていて捕ってるのだから、悪いのかもしれない。


でも法的にはこれといって違反をしているとは言えないし、彼らにも生活があり、もし意識高い系漁師が「オレは資源のために捕らねぇゾ」といっても、他の人が捕っちゃうんだよね。だから現場の意識が上がることに、期待しても無駄だと思うんだ。


残念ながら、産卵場で産卵魚を捕っちゃダメって決まりがない。だから決まりを作れば良いだけの話だ。決まりを作るのってだれ?


でも決まりを作っても漁業者が衰退しちゃ本末転倒だから、そこはしっかり保護してあげなきゃいけないと思う。だったら「これ誰が使うの?」みてぇな明らかに無駄な漁港整備とかのカネを、そっちの生活に回してあげれば良い。資源が回復すれば、漁業は必ず儲かるようになる。きちんと資源管理をやってる海外の漁業を見れば一目瞭然だ。


そうなったら、たっぷり税金を払ってもらえばいいじゃん。


これは単に漁業というひとつの産業の話じゃない。日本の食糧安全保障にもつながる話だ。さらに言えば、日本の6000以上あるといわれる離島を守るためにも、絶対に必要な政策だと思う。なぜなら離島の主たる産業たり得るのは、漁業しかないのだから。


 

生田よしかつ <東京都中央卸売市場築地市場 仲卸業者「鈴与」三代目>

東京都中央卸売市場築地市場 仲卸業者「鈴与」三代目。著書に『あんなに大きかったホッケがなぜこんなに小さくなったのか』(角川学芸出版)『たまらねぇ場所築地魚河岸』(学研新書)など多数。レギュラー番組に『報道特注』(文化人放送局)、『築地一揆+』(チーム・デジタル民主主義)。



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