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米朝首脳会談はカタチを変えた米中戦争か…”蚊帳の外”から国際関係をコントロールする安倍首相の存在感【西村幸祐】



6月12日に全世界が注目する、史上初の米中首脳会談がシンガポールで開催される。すでに9日からシンガポールは厳戒態勢に入った。というのも、二日前の6月10日に金正恩国務委員長(朝鮮労働党委員長)とトランプ米大統領もシンガポール入りするからだ。シンガポール政府はリー・シェンロン首相が、10日に金正恩国務委員長、11日にはトランプ米大統領とそれぞれ個別に会談することを発表した。


BBCニュース - トランプ米大統領と金委員長、それぞれシンガポール到着  https://t.co/gNvwbTDSKM pic.twitter.com/dwFDfs8iLS

— BBC News Japan (@bbcnewsjapan) 2018年6月10日


10日午後2時半過ぎ(現地時間)に金正恩は中国共産党からチャーターした特別機でシンガポールに到着した。恐らく世界中のインテリジェンス関係者も秘密裏にシンガポール入りしている。というのも、今回の米朝首脳会談の結果は、東アジアの安全保障や地政学に影響を与えるだけでなく、世界中の安全保障環境や地政学的変化にも大きい影響を与えるからだ。


先日、CNNがシリアのアサド大統領が北朝鮮を訪問するというスクープを報じた。現時点では誤報になっているが、そんな報道が出る根拠はあった。一昨年の9月にシリア内戦で北朝鮮人民軍がシリア政府軍と一緒に軍事行動をしていると、シリア政府関係者が述べたことがあったからだ。しかも、2007年9月にイスラエル空軍のF-15戦闘機がシリアの核施設を爆撃、破壊した時に派遣されていた北朝鮮の技術者も死亡した。


この時、興味深かったのはイスラエルのアラブ諸国への爆撃にも拘らず、アラブ諸国は無反応だったが、真っ先にイスラエルを非難したのが北朝鮮だったことだ。シリアの首都、ダマスカスには「金正日公園」と名付けられた公園まである。


一方、米朝首脳会談に至る過程で、最後の土壇場で北朝鮮に泣きつかれた中国共産党は、これまでの金正恩の無法で野蛮な振る舞いに我慢をこらえていたのだが、最後の局面で金正恩を庇護する立場を取ることで、朝鮮半島情勢を有利に展開しようという戦略が見えたのである。それが異例の短期間での2回に及ぶ中朝首脳会談となった。


この2回の習・金会談の意味と重要性がなかなか的確に報じられていない。韓国の文在寅大統領は盧武鉉元大統領の重要なブレーンであったことから解るように、現在の韓国政権は北の代理人の役割を担っている。盧武鉉元大統領が退任後に逮捕され、検察の取り調べ中に自殺したのが2009年5月23日だったが、朴槿恵前大統領と李明白元大統領という盧武鉉政権後の保守派の大統領の裁判が、それぞれ昨年の 5月23日、今年の5月23日に開廷している。


そんな韓国の状況も習近平は俯瞰しながら、南北朝鮮をそろって中華帝国の手駒にしようという戦略に自信を深めている。







■緊張と駆け引きの中で胎動する新・世界秩序、日本は?


第二次大戦後73年になる今年は、大きく世界秩序が変化する局面を迎えた。それはここ数年のさまざまな世界中の地殻変動や胎動を反映したもので、大きな歴史の流れである。歴史事実を客観的に捉えることが困難である以上に、同時代を的確に視ることの方が難しい。


1979年の米中国交正常化は、冷戦時代に米国がソ連を封じ込めるための戦略であったが、米朝首脳会談の前日、6月11日から米国でチャイニーズの入国ビザが厳しく制限されることになった。それは1979年の米中国交正常化からの流れと違ったものだ。その上、米朝首脳会談が行われる6月12日には、台湾の在台湾米国政府事務所(大使館に相当)が新築の巨大なビルの中にリニューアル開設される。しかも今後は世界各国の米大使館のように米海兵隊が警護をするという。事実上の大使館扱いではないか?


先週始まった日米印三カ国海軍共同訓練、「マラバール2018」は、日本海軍(海自)は連続3年の参加だが、今年初めて南シナ海で行われる。すでに南シナ海の中国共産党の違法な岩礁埋め立てによる南シナ海へのシナの覇権拡大を牽制する米海軍の「航行の自由作戦」に英仏両海軍が参加している。


そんな軍事的な緊張と駆け引きの中で、地政学的な優位を保つための外交と情報戦が展開されているのが世界の現状である。


6月8日に閉幕した今年のG7サミットは、昨年に引き続き安倍首相の存在が際立っていた。トランプ大統領の自由貿易体制を否定する言動が続くことから、米国が〈蚊帳の外〉になり、今や世界の動きを先頭で牽引するのが安倍首相である。


にもかかわらず、拉致問題解決に武力行使というカードも見せられないまま、日本の外交は片翼をもがれた状態で進むしかなかった。おまけに日本の朝日、毎日を筆頭とする反安倍メディアは、米朝会談や拉致に関して安倍外交を〈蚊帳の外〉と批判してきた。


だが、すでに多くの情報の受け手が認識しているように、〈蚊帳の外〉なのはそんなメディアであり、日本の主権や自主性を阻害して来た9条の改正を妨害し続けているのである。


 

西村幸祐 <批評家 / 岐阜女子大学客員教授 / 関東学院大学講師>

1952年東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科在学中より「三田文学」編集担当。「ニューミュージック・マガジン」(現「ミュージック・マガジン」)、音楽ディレクター、コピーライターを経て1980年代後半からF1やサッカーを取材、執筆活動を開始。2002年日韓共催W杯後は歴史認識や拉致問題、安全保障やメディア論を展開。「表現者」編集委員務め「撃論ムック」「ジャパニズム」を創刊し編集長を歴任。一般社団法人アジア自由民主連帯協議会副会長。著書に『ホンダ・イン・ザ・レース』(講談社)、『幻の黄金時代—オンリーイエスタデイ ’80s』(祥伝社)、『「反日」の正体』『「反日」の構造』(文芸社文庫)、『マスコミ堕落論』(青林堂)、『NHK亡国論』(KKベストセラーズ)など。

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