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コケ愛好家・藤井久子さんに聞く! コケトリップの魅力




はじめに


最近、「コケガール」「コケトリップ」という言葉が注目を集めています。コケを楽しむ旅の魅力はどんなところにあるのでしょうか? コケトリップの楽しみ方と初心者におすすめのスポットを、コケ愛好家として活躍中の藤井久子さんに伺いました。

text・photo:藤井久子

コケトリップの魅力とは?


コケは世界に約18,000種類、日本だけでも約1,700種類も存在しています。遠目で見ただけではただの緑の塊ですが、近寄ってゆっくり眺めてみると、種類によって色も形もさまざま、意外と多彩な表情をしています。また触ってみると、モコモコ、しっとり、ツンツンと手触りも違い、なかなかおもしろいのです。

さらにルーペで拡大して見てみると、肉眼で見ていたのとは別世界。彼らにもちゃんと茎や葉がついていて、1本1本のコケはまるで大木。生命力あふれるミクロの森の美しさに思わず感嘆のため息が出てしまいます。

コケは、気候や風土など環境の違いによって自生する種類が変わるのも大きな特徴。行った先々で違った顔ぶれのコケとの出合いを楽しみ、ミクロの世界を通して自然そのものと親しむ「コケトリップ」へ、あなたも出かけてみませんか? 首都圏から気軽に出かけられるコケスポットをご紹介します。
コケスポット① 高尾山/東京都

コケスポット① 高尾山/東京都


高尾山は東京都心から電車で約1時間とアクセスがよく、ケーブルカーやリフトがあるので、体力に自信がない人でも登りやすくおすすめの山です。複数の登山路がありますが、コケを見るなら沢沿いを歩く6号路がおすすめ。キヨスミイトゴケやケチョウチンゴケ、アブラゴケ、トヤマシノブゴケ、ジャゴケなど、湿った場所や日陰がちな場所を好むコケたちと出合えます。下の画像はアブラゴケ(上)とキヨスミイトゴケ(下)。

山頂まで登ると、天気がよければ富士山が拝めるのも高尾山の魅力です。ですが、コケを観察しながら歩いていると数メートル進むのに1時間以上かかるなんていうのはよくあること。「コケを見ているうちに時間がなくなった」という場合は途中で引き返して、続きはまた次回のお楽しみにしましょう。6号路は道幅が狭いので、コケ観察をする時は他の登山者の迷惑にならないように気をつけてくださいね。

◆高尾山
住所:東京都八王子市高尾町
コケスポット② 鎌倉/神奈川県

コケスポット② 鎌倉/神奈川県



「古刹には必ずコケとの出合いあり」というのが、コケ好きの間の常識。市内に100以上の寺院があるといわれる古都・鎌倉は、コケに興味がある人にはぜひ訪れてほしい場所です。なかでも「鎌倉の苔寺」の異名を持つ妙法寺をはじめ、杉本寺、報国寺、瑞泉寺、安国論寺、寿福寺、長谷寺などは境内にコツボゴケやコバノチョウチンゴケ(上の画像)などがよく生育しています。鎌倉に生えるコケたちの姿は、わびさびの風情にあふれていますよ。

また、鎌倉時代に築かれ、現在も北鎌倉~鎌倉に点在する古道「切通し(きりとおし)」には、岩壁一面がコケという場所も多くあるので、ぜひそちらも散策してみてください。

さらに最新のコケスポットとしてもう1か所おすすめしたいのが、2018年にオープンしたばかりのお店「苔むすび」です。

コケを使った手芸園芸教室がメインのお店ですが、古民家のお庭には店主・園田純寛さん作庭のミズゴケ湿原があり、驚きの景色が広がっています。園田さんのご出張で臨時休業になる日もあるので、訪問の際は事前連絡をしてから伺ってくださいね。


◆苔むすび
住所:神奈川県鎌倉市由比ヶ浜2丁目4−22
営業時間:11:00 - 16:30
定休日:金曜日、月曜日(祝日を除く)
※臨時休業の場合あり。
TEL: 090-3008-5636
コケスポット③ 箱根美術館/神奈川県

コケスポット③ 箱根美術館/神奈川県


箱根登山鉄道の「強羅駅」を下車後、ケーブルカーで「公園上駅」を下車してすぐのところにある美術館です。古墳時代や桃山時代などの焼き物が多く展示されている館内も見事ですが、渓流や石垣を配した苔庭には約130種類のコケと200本のカエデが植えられていて圧巻の景観。
ホソバミズゴケのまとまった群落(上の画像)や、エビゴケ、オオホウキゴケなど、他の苔庭ではなかなか観られない種類も豊富です。おすすめは、お茶室で苔庭を眺めながらの一服。なんともいえない贅沢な時間がすごせますよ。

◆箱根美術館
住所:神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300
営業時間:4月~11月 9:30~16:30
     12月~3月 9:30~16:00
     ※最終入館は閉館30分前
休館日:木曜日(祝休日の場合は開館)、年末年始
TEL:0460-82-2623(代表)
番外編:北八ヶ岳/長野県

番外編:北八ヶ岳/長野県


最後は番外編です。「コケのことをもっと本格的に知りたい!」と思ったら、泊りがけのコケトリップへ出かけてみませんか。北八ヶ岳の標高2,115mに位置する白駒池周辺の原生林では、セイタカスギゴケ、イワダレゴケ、ムツデチョウチンゴケなど亜高山帯(低山帯と高山帯の間。本州中部では標高1,700~2,500m)特有のコケたちが林床を旺盛に覆い、神秘的な景観を作り上げています。その景観の規模と美しさが評価され、日本蘚苔類学会(コケの学会)から「日本の貴重なコケの森」にも認定されているんですよ。

上の画像はセイタカスギゴケ(上)とムツデチョウチンゴケ(下)です。
周辺には山小屋が複数あり、コケに詳しい山小屋のオーナーが森を案内してくれるコケツアーがあります。また、毎年5~9月にはコケの研究者を招いての1泊2日のコケ観察会(上の画像)も開催されるので、そういったイベントに参加するのもおすすめです。今年の日程など詳細は「北八ヶ岳苔の会」のホームページをチェックしてみてください。

おわりに


コケは、梅雨時はとくに生命力にあふれ、濃い緑で目を引きますが、それ以外の季節も、胞子を飛ばしたり、新芽を出したりと常に成長を続けていて、とても変化に富んでいます。また、晴れの日が続くとカラカラに乾いて一見枯れてしまったように見えますが、実は次の雨が降るまでじっと息をひそめて休眠しているだけ。また雨が降ればすばやく水を吸収して葉を開き、光合成を再開します。その姿は小さいながらもたくましく、観ているだけで元気をもらえます。ぜひ1年を通してコケを楽しんでみてください。

なお、今回ご紹介した場所はすべてコケの採取は厳禁です。持ち帰ればその土地の環境破壊にもつながります。これからも私たちが末永くコケとお付き合いしていくためにも、マナーやモラルは必ず守りましょう。

◆藤井久子
ライター/エディター。著書に『コケはともだち』(リトルモア)、『知りたい 会いたい 特徴がよくわかるコケ図鑑』(家の光協会)。岡山コケの会、日本蘚苔類学会会員。趣味はコケ散策を兼ねた散歩・旅行・山登り。

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