はじめに

SNSとの相性の良さもあり、過去の遺産かと思われた顔ハメ看板が、再び注目されて久しいです。旅の目的として取り上げる人はあんまりいないかもしれませんが、顔ハメ看板があるということは、記念になるような何か、宣伝したいような何かがあるということ。顔ハメ看板をきっかけに、この秋出かけてみるのはいかがでしょうか。

Text&Photo:塩谷朋之 「雨ニモマケズ」に童話作家の足跡を辿る、おがの化石館<埼玉>

「雨ニモマケズ」に童話作家の足跡を辿る、おがの化石館<埼玉>

郷里である岩手をモチーフにした“イーハトーブ”のイメージが強い宮沢賢治ですが、小さい時から石が大好きで、子どもの頃は「石っこ賢さん」と呼ばれるほどの石マニアであったそうです。
そんな石っこ賢さんが20歳の時に盛岡高等農林学校の地質調査旅行で訪れたのが秩父。こちらの化石館近くにある、秩父を代表する大露頭(地層・岩石が露出している場所)「ようばけ」にも立ち寄り、歌を詠んでいます。

顔ハメ看板は盛岡高等農林学校の同志たちとの思い出を封じ込めたような一枚で、宮沢賢治と保阪嘉内の部分が開閉式になっていて、仲良くハマれます。角度に気をつけてハマりましょう。


◆おがの化石館
住所:埼玉県秩父郡小鹿野町下小鹿野453
開館時間:9:00~17:00
休館日:火曜日
入館料:大人300円 こだまでしょうか、いいえ誰でも金子みすゞに、金子みすゞ記念館<山口>

こだまでしょうか、いいえ誰でも金子みすゞに、金子みすゞ記念館<山口>

26歳で短すぎる生涯を閉じるまでに、500余編もの詩を綴ったとされる金子みすゞ。生まれ育った山口県の長門市仙崎に記念館があり、そこに来館記念の顔ハメ看板があります。

ACジャパンで取り上げられた「こだまでしょうか」でお馴染みとなった金子みすゞ。その生涯は明るいものではなく、23歳で結婚したものの、文学に理解のない夫から詩作を禁じられてしまい、病気、離婚と不幸が続きます。26歳の早すぎる死は、最愛の娘を前夫に奪われないための自死でした。

読書が好きで、誰にでも優しい人であったという金子みすゞの人柄がにじみ出ているようなイラストの顔ハメ看板です。記念館で彼女の優しい作品に触れるついでにハマりましょう。


◆金子みすゞ記念館
住所:山口県長門市仙崎1308
電話:0837-26-5155
開館時間:9:00~17:00
休館日:12月29日~1月1日
入館料:一般 350円 梯子を上って馬上の花嫁に、草枕温泉てんすい<熊本>

梯子を上って馬上の花嫁に、草枕温泉てんすい<熊本>

夏目漱石の代表作の一つである「草枕」。そこに出てくる、馬上の花嫁と馬子になれる顔ハメ看板です。小説に出てくる「那古井温泉」のモデルは、漱石が英語教師として赴任していた熊本時代に旅行した玉名市天水の小天温泉。そのためこちらの温泉は「草枕温泉てんすい」として営業されています。

馬の模型の上に乗っかるというなかなか珍しいタイプの顔ハメ看板。梯子を数段上ってハマるのですが、高いところが苦手な私には辛い体験でした。みなさまも落馬したりせぬようお気をつけてハマってください。

露天風呂や大浴場の他に、小説になぞらえた「草枕の湯」なんてコーナーもあるので、小説片手にゆっくり過ごしたい温泉です。


◆草枕温泉てんすい
住所:熊本県玉名市天水町小天511-1
電話:0968-82-4500 林芙美子先生と一緒に写ろう、新宿区立西落合図書館<東京>

林芙美子先生と一緒に写ろう、新宿区立西落合図書館<東京>

本人になれたり、作品の一部になれたりといった顔ハメ看板をご紹介してまいりましたが、本来偉人や文豪ものの顔ハメ看板とはこうあるべきなのかもしれません。そんな看板が西落合の図書館にあります。

「放浪記」や「浮雲」などの代表作で知られる作家・林芙美子ですが、晩年を過ごした落合にある家は、現在新宿区の運営で「林芙美子記念館」となっています。図書館でハマった後は、記念館にも是非訪れましょう。建築について勉強して、設計者や大工を連れてわざわざ京都の民家を見学に行ったりして作り上げた家とのことで、建物自体も見どころの一つです。


◆新宿区立西落合図書館
住所:東京都新宿区西落合4-13-17
電話:03-3954-4373
開館時間:火曜日~金曜日:9:00~19:00
土曜日・日曜日・祝日・休日:9:00~18:00
休館日:月曜日(祝日・休日の場合は翌日)、館内整理日(第3木曜日。祝日・休日の場合は翌日)、特別図書整理日(年間7日以内)、年末年始(12月29日~1月4日) 智恵子になるか、「智恵子抄」作者になるか、道の駅「安達」智恵子の里 下り線<福島>

智恵子になるか、「智恵子抄」作者になるか、道の駅「安達」智恵子の里 下り線<福島>

道の駅の名前にもなっている智恵子自体は洋画家ですが、夫である高村光太郎の詩集「智恵子抄」でその名を知った人も多いのではないでしょうか。夫婦の写真を顔ハメ看板化しているこちら、お二人とも開閉式となっていて、どちらでも好きな方にハマれます。

こちらの道の駅がある二本松市は、日本100名城にも選定されている二本松城でも有名。「菊の城下町」と称され、国内最大級の菊人形展「二本松の菊人形」が毎年開催されていて、今年は11月17日まで。顔ハメ看板にハマりつつ、この機会に行くしかないですね。


◆道の駅「安達」智恵子の里 下り線
住所:福島県二本松市米沢字下川原田105-2
電話:0243-24-9200

◆二本松の菊人形
住所:二本松市郭内3丁目地内(福島県立霞ヶ城公園)
開催期間:~11月17日
開館時間:9:00~16:00
入場料:一般大人 900円

おわりに

文学という切り口でも、意外と顔ハメ看板があるのだということがわかっていただけたかなと思います。顔を入れるだけでなんにでもなれるというのは、簡単な行為ですが、その対象に興味を持ってみるというのはいかがでしょうか。好奇心の入り口だと思って、文学モチーフの看板にハマったら、作品に触れてみる。今秋から始めましょう。

◆塩谷朋之(しおや・ともゆき)
仕事の傍らハマれる看板を求めて出掛ける日々。これまでにハマった看板は4,000枚以上。2015年に『顔ハメ看板ハマり道』(自由国民社)を出版。2019年より都道府県を顔ハメ看板で見つめ直す『顔ハメ百景』シリーズ(阿佐ヶ谷書院)の刊行を開始。第一弾は長崎編。顔ハメ看板に関するアプリやイベントのプロデュース、情報発信を続ける。


情報提供元:旅色プラス
記事名:「【全国】顔ハメ看板二スト厳選! 文学に触れる秋! おすすめ顔ハメ看板5<連載第3回>