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あいりん地区”最高値”の宿「HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX」【はんつ遠藤の大阪・西成C級ホテル探検(1)】


はんつ遠藤

僕はフードジャーナリストという仕事をしている。日本や世界の料理を紹介するのが仕事だ。とはいえ、たまに行きがかり上、A級グルメも紹介するが、多くはいわゆるB級グルメ。そのためか全国を回っても、宿泊先もB級なところが多い(というか好き)。東京在住だが特に大阪に取材に伺う頻度が高く、ならばいっそのこと、激安ホテルはどうなのだろうと気になり、泊まることにした。


ドヤ街・西成には多数の激安ホテルが存在する


その場所は西成・あいりん地区。Wikipediaによると


あいりん地区(あいりんちく)は、大阪府大阪市西成区の北部、西日本旅客鉄道(JR西日本)・新今宮駅の南側に位置する簡易宿所・寄せ場が集中する地区の愛称である。愛隣地区とも表記され、旧来からの地名である釜ヶ崎とも呼ばれる

いわゆるドヤ街とも言われ、日雇い労働者が数多く在住する地。1961年を皮切りに、2008年までに24回の暴動が起こっているそう。近年は沈静化しているようだが、


あいりん地区には路上生活者が多く居住している(大阪市内の路上生活者は1,456人)。この地域は住所不定の日雇労働者が多いため、人口統計は国勢調査でも明確に把握できていない可能性がある(Wikipediaより)。

という。





簡易宿泊所や激安ホテルが密集する地に着いたのは午後5時すぎだった。最寄り駅はJRだと新今宮駅、大阪市営地下鉄だと動物園前駅。大阪に住む友人からは「近づかないほうがいいよ」とまで言われた地だが、確かに日雇い労働者風の方々は多かったものの、特にさほど治安が悪いという感じはなかった。以前とは比較にならないほど安全になったという声もあるし。とはいえ、路上に落ちているタバコの吸い殻を一生懸命に拾い続ける人もいたりと、他の地域とは少し違うことは感じた。



今回のホテル選定にあたっては、ひとつだけ基準を設けた。それは「3畳一間、バストイレ共同」ということ。大阪に限らず全国にはカプセルホテルや、ドミトリーといって大部屋にベッドが並ぶスタイルの宿泊所もあるが、「激安の個室」という点を基準にした。楽天トラベルで調べたところ、キャンペーンを除くと1000円~3000円のホテルが数多く見受けられた。


スタイリッシュな外観にびっくり


HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

そこでまずは”西成で最高価格の激安ホテル”「HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX(ホテルサンプラザ2アネックス)」、3000円に決めた。ホテルは新今宮駅および動物園前駅から徒歩約2分と至近で、JRの線路と平行に、東西に走る大通りのあびこ筋沿い。利便性も高く、立地的にも申し分ない。



HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

ホテルを見て、驚いた。ドヤ街の印象は全くない、ブラック&レッドを基調としたスタイリッシュな外観。



HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

しかも玄関先のブラックボードには「Welcome FREE Wifi FREE AMENITY FREE DRINK1」などと英語表記が。



HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

エントランスを入れば、これまたモノトーンでシックな素敵なロビー。なんとペッパー君までもがお出迎えである。フロントのスタッフもフレンドリーで親切だ。


清潔な3畳一間は快適そのもの


HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

部屋は406号室だ。エレベーターで4階へ向かえば、これまたシックな雰囲気の廊下が。





と共にキチンとした鍵を用いたドアノブ。オートロックではないものの、想像ではセキュリティ面が不安になるような簡易型の鍵だと思っていたので、ちょっと意外というか安心。



HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

ドアを開ければ、そこには想像どおりの広さの「3畳一間」が広がっていた。実は僕、高校を卒業した後、いわゆる浪人生の時に、3畳一間に住んでいたことがある。早稲田大学の大熊講堂の裏で、まさに「かぐや姫」の「神田川」という歌に出てくるとおりの下宿だった。でも今回の部屋はそこよりもずっと綺麗で清潔感が漂っている。壁も畳も問題なく清潔だ。



多くの方は「3畳一間」を狭いと思うかもしれない。いやいや、実は1畳あれば、大抵の人間は問題なく寝られる。極端に言えば、3畳あれば3人が普通に寝られる空間なのだ。よっぽど、カプセルホテルのほうが狭い。



HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

とはいえ、シングルで予約したのに、布団が2人分あるのにはちょっと驚いた。試しに1人分を敷いてみれば、もちろんひとりならば充分のサイズ。独特のブルーを基調とした布団も、却って和風のそれよりも爽やかな感じで個人的にはGood。強いて挙げれば、まくらが小さい。でもひとりで2個使用できるので、まぁOKか。敷布団は全室ともブレスエアーを採用している。



HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

他には簡易型の折り畳みテーブルと冷蔵庫、テレビも設置されている。



HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

アメニティは旅館にあるような薄手のタオルとハブラシ、紙ナプキン、ポケットティッシュ。なるほど、一般的なホテルに備え付けられているティッシュケースは置いてないわけ。それと、シェーバーが無い(フロントで30円で販売)。



HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

あと、この手の部屋だとコンセントがひとつしかない気がしていたが、実際には2か所が使用可能。FREE Wifiも問題なく繋がり、瞬く間に、自分の部屋にいるような居心地の良さを感じるのだった。


インバウンド需要を見事に取り込む


HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

部屋にいたらあまりに快適すぎるので、せっかくなので館内探検に出てみた。これまたキチンとしたエレベーターで1階に戻る。エレベーター内には「静かにしてください。」という日本語をはじめとし、計4か国語で注意書きが貼られていたのが印象的だった。一般的なホテルではあまり見かけないエレベーター内の注意書き。



HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

しかも耳栓も用意しているというので見に行ったら、1階フロント横に、これまた珍しい形で耳栓があった。と共に、僕は気づいた。宿泊者が日本人ではなく、やたらと外国人な事に。ましてや日雇い労働者的な方など皆無。後から調べてみると、今や西成の激安ホテルは外国人観光客に大評判なのだそう。確かに、駅からホテルまで来る時も数多くの外国人観光客らしき人々がいた。中国、韓国、台湾、東南アジア的な方だけではなく、欧米人らしき方々も。西成、特に駅周辺に至っては、かつてのドヤ街のイメージではなく、いわばタイのカオサンのようなバックパッカーの聖地のような雰囲気すら醸し出していた。



HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

ロビーで楽しそうに会話をする外国人の言葉を聞きつつ、何を言ってるのか全然分からない高揚感で海外に旅行に来たような気分を味わう。すると、ふと見れば、セルフのコーヒーマシンがあった。思わずホットコーヒーを入れ、ロビーでまったりとしたひとときを過ごす。



HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

さらに夏場だからか、かき氷製造機まで。また思わずかき氷を作り、せっかくなのでカラフルに仕上げてみた。異国の言語が飛び交う空間も相まって、もはや心はハワイ、ワイキキのマツモトシェイブアイスにいる気分だ。



HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

ちなみに電子レンジもあったので、コンビニやスーパーなどで購入したものを温めたりもできる。ウォーターサーバーも製氷機も。お湯もあるのでカップラーメンなども食べられる。なお、コーヒーやかき氷、電子レンジは午前7時30分から午後10時30分まで、お湯やウォーターサーバー、製氷機は24時間OK。3階と6階にはガスコンロのあるミニキッチンまであるそう。


トイレもバスも清潔感漂う


そうそう、肝心なことを忘れていた。今まで快適とはいえ重要な場所のチェックをせねば。それはトイレとバスルーム。どんなに部屋&ロビーが清潔で、コーヒー飲み放題、かき氷食べ放題とはいえ、これらが汚ければ台無し。そこでまず男子トイレへと向かう。



HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

トイレは各階にあり男女分かれている(2階は女性専用フロアで、男性立入禁止)。真っ当なホテルと遜色ないトイレだ。



HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

ちゃんとウォシュレットタイプで、便器クリーナーまで常備されていた。



HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

シャワールームも1階に4室、2階2室、8階1室もある。もちろん鍵もかけられ、セキュリティ面も安心。





リンスインシャンプーとボディソープあり。シャワーの温度もキチンとかえられ、問題なし。





そして別室のパウダールームにドライヤーが備え付けられていた。



これだけでも充分だと思っていたら、なんと男女別の大浴場もあるとのこと。それは奥の通路で繋がった隣のHOTEL ZIPANGの1階に存在した。これまた後から調べたらこのホテルはJUNON GROUPといって、HOTEL ZIPANG、HOTEL SUNPLAZA、HOTEL SUNPLAZAⅡ、HOTEL SUNPLAZAⅡANNEXと4ホテルを運営しているらしい。



HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX

これまたシックでスタイリッシュな雰囲気の真っ当なバスルームだ。入浴可能時間は午後3時〜午後10時まで。僕が見に行ったのは翌日の午前中だったので浴槽にお湯は無かった(午前7時30分~正午まではシャワールームとして使用可能)が、思ったよりも広々としていていた。


帰館したら玄関のシャッターが閉まっていたが…




そんな安心感もあり、夜は大阪の街へと繰り出し、ひとり繁華街で大阪グルメを堪能した。ホテルのある西成(新今宮・動物園前駅)は、JRの線路の北側には「新世界」という串カツをはじめとした大阪のご当地グルメ店や低価格の居酒屋、寿司店などが軒を連ねる一大繁華街が広がっている。また、西成自体にも24時間営業の居酒屋を筆頭に、様々な飲食店、立ち吞み店が存在する。大阪の人々は1軒で腰をすえて料理を楽しむというよりも、30分~1時間程度で数軒はしごするという飲み方が好きだ。なので、僕もそれを真似して数軒を回った。



そして気が付けば深夜1時。道路では泥酔してその場で就寝なさっている日雇い労働者風の方がちらほら。僕もかなりの泥酔状態であったが、ホテルの場所は分かりやすく、すぐに戻ってこれた。その時、僕は気づいた。玄関にシャッターが下りていることを。





「やっちゃった」という気分と共に一気に酔いが覚める。しかし「おかしいな?門限が無かったはず」という気持ちも。西成は安心にはなってきたとはいえ、まだまだ油断できないという事もあり、24時門限というホテルも多いゆえにあらかじめチェックしていたはず。そこで急いでスマホでホテルの基本情報を検索すると、門限の記載がないどころか、チェックイン後は24時間出入り可能とある。じっと玄関のシャッターを見つめる。すると、左側に扉があることに気づいた。





そしておそるおそるドアノブを回すとドアが開き、入館することができた。「危なかった。僕も彼らのように道路で寝て朝を迎えるところだった」安堵と共に部屋に戻り、就寝。そして朝10時までにチェックアウトした。



西成3畳一間バストイレ共同のホテルは想像よりもかなりの快適度だった。部屋にバストイレがなくてもOKな方であれば、何の問題もないであろう。しかし、これをもって西成のホテルは問題がないとは全く言い切れない。なにせ地域最高価格の1泊3000円である。そこで、次回から徐々にランクを下げていこうと思っている。なにせ最低価格は1000円程度だ。どこまで快適なホテルなのか、期待していて欲しい。実際、僕もまだ分からない。



■プロフィール

はんつ遠藤


1966年東京生まれ。早稲田大学卒。不動産会社勤務を退職後、海外旅行雑誌のライターを経て、フードジャーナリスト&C級ホテル評論家に。飲食店取材軒数は9500軒を超える。主な連載は「週刊大衆」「Ontrip JAL」「東洋経済オンライン」など。著書は「取材拒否の激うまラーメン店」(廣済堂出版)など27冊

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