これまで数多くのクルマが世に送り出されてきたが、その1台1台に様々な苦労や葛藤があったはず。今回は「ニューモデル速報 第87弾 エスティマのすべて」から、開発時の苦労を振り返ってみよう。
1990年代、クルマに対する高性能化へのシフトが進む中、これまでレジャーを中心に“使う楽しさ”を特徴としていたワンボックスワゴンには変革が迫られていたという。
ただ、エンジンを床下に収めるとなると、エンジンの高さを圧縮しなければならない。そのため、エンジンと補機類(オルタネーターや冷却ファン、エアコンのコンプレッサー、パワステのポンプなど)を分離させて、補機類はボディ前方に配置。補機類を駆動させる専用シャフトを設けた。さらにエンジンは、シリンダーの角度を垂直状態から75度も寝かせることで上下寸法で440mmという低さを実現させた。
こうして実現させた画期的なレイアウトをもとにキャルティがデザインを手掛け、生産を担当するトヨタ車体にはオリジナルのデザインを出来るだけ崩さないことを要求されたが、担当した星野昭平は以下のように振り返った。
そのほかにも、エスティマではスライドドアのレールを中段の黒いストライプの中に収めたり、ローラーの構造と材質を工夫してドア開閉時の音にもこだわった。また、ドアの合わせ目の隙間を4.5mmと当時の高級車(マークⅡ以上)の規格に設定するなど、細部まで質感を追求した。
当時の乗用車のフルモデルチェンジが4〜5年だったのに対して、ワゴン車は台数がそれほど出ないこともあって、そのスパンは長かった。それだけ新しいものを開発するには、先を見なくてはならないという苦心もあると植田は語った。