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GRヤリスとの差額をチューニングやクローズドコースでの走行費用に充て、ドラテク磨き&セッティングとメカニズムの勉強に


2020年9月頃発売予定のトヨタGRヤリスを純粋に市販Bセグメントホットハッチの一台として見た場合に想定される、ライバルの実力を検証する当企画、二台目はスズキの「スイフトスポーツ」。5月15日にマイナーチェンジを受けた同車の6速MT車に、ワインディングと市街地を中心として総計約300km試乗した。




なおテスト車両は、全方位モニター用カメラパッケージ(5万2800円)、パナソニック製スタンダードプラス8インチナビ(16万5605円)など計30万6350円分のオプションを装着し、車両本体価格201万7400円と合わせて232万3750円の仕様となっていた。




REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、スズキ

 2016年12月デビューの現行四代目スイフトをベースとして2017年9月に発売された現行スイフトスポーツは、ホットハッチとして見た場合はワインディングでのコントール性、逆に実用車として見た場合は後席の居住性や荷室の使い勝手に細かな課題はあるものの、長距離長時間高速道路を走行した際のGT性能は望外に秀逸。発売間もない頃の試乗インプレッションで「BMW Mを思わせる」と絶賛した。




 だが、それも今は昔。そのBMW Mが昨今は、スロットルレスポンスも路面の凹凸に対しても敏感で演出過剰に過ぎ、サーキット以外は不向きな傾向にあるのは寂しい限りだが。

 ともあれ、現行スイフトスポーツが持つ最大の魅力は、メーカーオプションの「セーフティパッケージ」と「全方位モニター用カメラパッケージ」を装着しても6速MT車で198万720円、6速AT車で205万920円(いずれも発売当時、消費税8%込みの価格)という、圧倒的なコストパフォーマンスの高さにあると言っても過言ではない。

ブラインドスポットモニターの作動イメージ

 そんなスイフトスポーツだが、ベース車とともに実施された2020年5月のマイナーチェンジは、

・後退時衝突被害軽減ブレーキ(*)、後方誤発進抑制機能(*)、リヤパーキングセンサー、全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロール(*)、標識認識機能、ブラインドスポットモニター、リヤクロストラフィックサポート、オートライトシステムを標準装備


(*)はAT車のみ




・メーカーオプションの全方位モニター用カメラに、周囲を立体的に360°確認できる3Dビューを追加




・フレイムオレンジパールメタリック、バーニングレッドパールメタリック、スピーディーブルーメタリックのボディカラーにブラック2トーンルーフを新設定




・フロント2ツイーター&リヤ2スピーカーを標準装備し計6スピーカーを搭載




・マルチインフォメーションディスプレイにデジタル車速表示を追加

と、従来は「セーフティパッケージ」としてメーカーオプションだった予防安全装備が、さらに充実のうえ標準装備化されたのが大きなトピック。なお、プレスリリースには記載されていないものの、パワートレインがWLTCモードに対応したほか、エアコンの冷媒がHFC134aからHFO1234yfに変更されている。

マイナーチェンジ後のスイフトスポーツは新設定のブラック2トーンルーフ仕様3種類を含め全9色のボディカラーを設定

 つまり、外観で見分けのつく変更点は、「リヤパーキングセンサー」用ソナーが装着されたリヤバンパーと、新色の2トーンボディカラーに集約されるのだが、今回のテスト車両はスイフトスポーツのイメージカラーであるチャンピオンイエロー4。実車に対面しても、マイナーチェンジ前か後かを判別するのは、間違い探しのクイズよりも難しかった。

【スズキ・スイフトスポーツ】全長×全幅×全高:3890×1735×1500mm ホイールベース:2450mm トレッド前/後:1510/1515mm 最低地上高:120mm 最小回転半径:5.1m

 さて、そんなスイフトスポーツのエクステリアを改めて振り返ると、二代目以降はベース車共々キープコンセプトを貫きつつ、徐々に押し出しを強めているが、それでも競合他車のように露骨な劣化をしていないのは、さすがスズキのデザイナー陣と言うべきか。

赤のアクセントが随所に入ったスイフトスポーツの運転席まわり

 一方でインパネは、スイフトを含めて欧州向けのスズキ車で殺風景かつ質感の低いものになりがちだが、現行スイフトスポーツのそれは要素が多いながらもチープで子供臭いものには辛うじてなっていない。

スポーツ専用のセミバケットシート
後席のシート形状はベース車と共通
6:4分割可倒式リヤシートの左側を倒した状態のラゲッジルーム。奥行き×幅×高さは60~135×101×86.5cmで、倒した後席背もたれとフロアとの間には15.5cmの段差が生じる(いずれも筆者実測)

 それよりも安っぽさを感じるのはシートだろう。セミバケット形状の専用フロントシートはサイズこそ充分だが、スポーツ走行のことを考えるとサイドサポートが弱く、クッションは弾力に乏しく、表皮は滑りやすい。二代目スイフトスポーツや現行アルトワークスのレカロシートもサイドサポートは充分と言えないが、それでも背もたれや座面のフィット感は申し分ないだけに、なぜそのまま使わないのか理解に苦しむ。

 後席の形状はベース車と変わらないが、クッションと表皮の傾向は変わらず、さらにサイズが小さく形状も平板なため、サポート性は皆無に等しい。またニークリアランスは身長176cm・座高90cmの筆者が座っても10cm以上あるものの、ヘッドクリアランスはゼロ。後頭部がルーフクロスメンバーに当たってしまう。にも関わらず、背もたれを倒してもその裏には大きな傾斜が付き、かつ荷室フロアとの間に15.5cmもの段差が生じるため、荷室の使い勝手はお世辞にも良いとは言えない。

195/45R17 81Wのコンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5を装着。ブレーキはローター・キャリパーとも先代よりサイズが拡大されている
140ps&230Nmを発するK14C型エンジンと6速MTを搭載するエンジンルーム
6速MTのギヤ比は1速:3.615、2速:2.047、3速:1.518、4速:1.156、5速:0.918、6速:0.794、後退:3.481、最終減速比:3.944

 では、肝心の走りはどうか。細かな凹凸は綺麗にいなすものの大きな凹凸ではリヤが跳ね気味で、ロードノイズも粗粒路では明確に大きくなる傾向にある。




 だが、専用チューニングを受けたK14C型1.4L直列4気筒直噴ターボエンジンは低回転域からトルクが厚く、2000rpm付近で6速MTをシフトアップさせれば充分に加速できる。しかもその際はエンジンからメカニカルノイズも排気音もわずかに聞こえる程度のため、街乗りでも高速道路でもいたって快適だ。




 これには、シフトストロークが50mmとやや長めだがその分操作力が少ない6速MTも、少なからず貢献しているだろう。




 なお、市街地と高速道路を合わせて約150km走行した時点での燃費は15.3km/L。140ps/5500rpmの最高出力、230Nm/2500-3500rpmの最大トルクは、今や決してハイチューンとは言えないものだが、低燃費指向ではないターボエンジンとしてはまずまずの結果だった。

モンロー製ダンパーを採用したフロントのストラット式サスペンションはロアアームを拡大し、ハブベアリングユニットの剛性をアップ
リヤのトーションビーム式サスペンションはトレーリングアームが専用形状となっている。ダンパーはフロントと同じくモンロー製

 そしてワインディングに持ち込むと、特に低速かつ上り勾配のコーナーでは、K14型エンジンの低回転高トルク型の特性がより一層活きてくる。




 前回試乗した際、高回転域を維持するため低いギヤを選んでも、LSDがないこともありホイールスピンを誘発しやすい傾向が見られた。そのため今回は、エンジン回転が落ちても3速から2速へシフトダウンせず、アクセルペダルを深めに踏み込んで立ち上がってみると、それでも立ち上がりでモタつかず、かつロスなく加速することができた。シフトアップの際に不可避なトルク抜けによるタイムロスを含めれば、サーキットでもこの走り方の方が速いのではないだろうか。




 しかも970kgという、最新のBセグハッチとしては軽い車重のおかげもあり、旋回性能は極めて高い。だからコーナー進入前のブレーキングも短時間で済み、結果としてフェードしにくいのも好印象だ。




 しかしながら、速度域の高い下りのワインディングを走ると、リヤの安定性が覚束なくなり、オーバーステアの傾向が顔を覗かせる。そのうえフロント周りの剛性が不足しているのか、大きな凹凸でフルバンプするとフロントサスペンションが綺麗にストロークせず、挙動を乱す兆候を見せていた。こうした状況でオーバーステアが出た場合、的確にカウンターステアを当ててスピンを回避するのは、相応の腕の持ち主でなければ決して容易ではないだろう。




 なお、ワインディングを約50km走行し、かつ写真撮影も行った後の燃費は10.6km/Lと、高負荷な状況が続いたにしては良好だった。




 率直に言って、今回のマイナーチェンジで内外装や走りのメカニズムは全く変わっておらず、デビュー当時に抱いた不満も全く解消されていない。それどころか、再度試乗したことで、以前は見えなかった弱点も見えてきた。




 このように、一度作ったら次のフルモデルチェンジまで走りのメカニズムを何も改良せず、作りっぱなしにするのは昨今のスズキの悪癖だが、とはいえ車両本体価格201万7400円のクルマである。同クラスでもハイブリッド車ならこの価格を優に超える車種は珍しくない。そして今回の主題であるGRヤリス、また前回取り上げたポロGTIは、2倍前後ものプライスタグを提げている。




 スズキとしては「これだけ安いながら上質に作ったのですから、走りに不満があるなら自己責任で好きにチューニングして下さい」というスタンスなのだろうが、もし本当にそう言われたとしても何も言い返せないほどの説得力が、このクルマの走りと価格にはある。そして、出来ないチューニングはないのではないかと思えるほど、今のアフターマーケットには現行スイフトスポーツのチューニングショップとパーツが数多く存在する。




 だから、GRヤリスを敢えて選ばずにスイフトスポーツを買い、その差額をチューニングやクローズドコースでの走行費用(消耗品代含む)に充てるのは大いにアリだ。その方がドライビングテクニックが向上し、セッティングやクルマのメカニズムに対する知見も深まるのは間違いないだろう。

■スズキ・スイフトスポーツ(FF)


全長×全幅×全高:3890×1735×1500mm


ホイールベース:2450mm


車両重量:970kg


エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ


総排気量:1371cc


最高出力:103kW(140ps)/5500rpm


最大トルク:230Nm/2500-3500rpm


トランスミッション:6速MT


サスペンション形式 前/後:ストラット/トーションビーム


ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク


タイヤサイズ:195/45R17 81W


乗車定員:5名


WLTCモード燃費:17.6km/L


市街地モード燃費:13.8km/L


郊外モード燃費:18.8km/L


高速道路モード燃費:19.2km/L


車両価格:201万7400円
スズキ・スイフトスポーツ

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