TOYO TIREは、従来のタイヤ設計基盤技術を、CAE*1とAIを融合した自動車用タイヤ開発プロセス「T-MODE(ティーモード)」として新たに体系化した。今後、進化させたT-MODEを駆使しながら、新しいステージでタイヤ開発を進めていく。

 TOYO TIREは、スーパーコンピューターを用いたふたつのシミュレーション技術(①走行時のタイヤの挙動を再現し、これを性能予測・構造解析に生かした「タイヤシミュレーション」、②車種別のさまざまな情報や乗員数、荷物量、走行パターンなどを再現し、走行中の車両挙動によるタイヤへの影響を把握する「ドライビングシミュレーション」)を統合し、「T-mode」と命名したタイヤ設計基盤技術を2000年に確立した。以来、当設計技術をフルに活用しながら、常に最適なタイヤ開発に取り組んできた。



 タイヤは路面と接する唯一のパーツとして、自動車に求められるさまざまな性能を満たす上で大きな役割を担っている。EV化や自動運転など、次世代モビリティへの技術革新競争が産業界を席捲し始めているなか、タイヤには、「モビリティの進化」を支える明確な性能や機能をスピーディーに実現していくことが求められており、今後、設計の高精度化・高速化がカギを握る。



 TOYO TIREはSPDM*2を活用し、従来のT-mode(独自の各種シミュレーション基盤技術)に、AI技術を用いた設計支援技術を組み込み、新たに「T-MODE」としてタイヤ開発プロセスをより高度に進化させた。



 タイヤを開発するプロセスでは、さまざまな設計要因および使用条件をインプットし、「設計、シミュレーション、試作、評価」を繰り返すことによって、求める性能や設計の最適化を図っている。



 製品開発をより迅速に実行していくためには、シミュレーション能力を今以上に高め、高精度な設計につなげることが必要だ。今回、構築したSPDMによって、TOYO TIREのタイヤ開発プロセスを革新した。

(1)各種データの一元管理と共有資産化

従来は、設計者がシミュレーションを実行して得られた情報は、設計者個人のデータとして取り扱われていたが、新しいT-MODEのプラットフォームでは、各種データを共通資産として一元管理し、設計者の間で共有できるようにした。それら設計データ、シミュレーションデータ、および実験データを関連づけることで、データとしての付加価値が向上し、学習データとして展開することを可能にした。



設計者が実施したシミュレーションのデータは、共有サーバーに自動蓄積され、データベース資産として、新たな解析・予測に活用されることによって、検証プロセスの短期化や製品開発時のリードタイム短縮につなげることができる。



(2)AIの適用と逆問題解法の確立

今回のSPDMの構築、導入では、設計支援技術をシミュレーション基盤技術と統合したことで、これまでにない飛躍的なプロセスイノベーションが期待できる。



従来の解法では、まず設計仕様をインプットしてシミュレーションを実行し、その結果である性能値を得ることになる。性能値が要求仕様を満たしていなければ、設計仕様を修正し、再度シミュレーションを行うため、この頻度が多くなると全体のプロセスタームは長くなる。



目標性能を得るために必要な構造、形状、パターンの設計データを「逆問題解法」によるアプローチで得ること、つまり、要求性能値をインプットすれば、AI技術を用いて必要な設計仕様が導き出される仕組みを活用していく。

 TOYO TIREは昨年5月、自動車のさらなる低費化やEV化に必要とされる「空力特性*3の高いタイヤ」を実現するうえで有効な、独自の「モビリティ・エアロダイナミクス(空力シミュレーション)技術」を確立したことを発表した。



 実際のタイヤのさまざまなパターンデザインを用い、タイヤへの荷重や車両の走行速度といった自動車運転時の使用諸条件、また、さまざまなホイールや車体形状といった個別条件を組み合わせ、これらの条件下でのタイヤ変形を考慮した上で、タイヤ接地転動状態*4でのタイヤおよび車両の空力特性を解析・予測できるシミュレーションレベルは業界でも例がない。



 昨年以降、さらに新たな領域にアプローチし、タイヤ接地/変形/回転を考慮した車両全体の空力特性の予測技術を実現していく。

 

 また、本年末には新T-MODEを活用し、車型ごとの空力特性を向上できるタイヤ設計案の予測技術に踏み込んで、空力シミュレーションにおけるコントロール領域を拡張していく。



〈参考〉空力特性の重要性

空力は、自動車が走行する際に必ず受ける抵抗であり、これを低減することは燃費性能の向上につながる。自動車メーカーは、環境性能面での社会的な期待に応えるため、空力特性の向上を意識して車両のデザインや開発に取り組んでいる。また、EV車両においても、1回の充電における航続距離を伸長させていくための課題として、空力特性の向上は重要テーマの一つだ。



 TOYO TIREは、来たる7月17日(水)から19日(金)の3日間、ポートメッセなごや(名古屋市国際展示場)で開催される「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展2019名古屋」に出展し、本リリースで発表した新T-MODEなどの技術について披露する予定だ。TOYO TIREは今後も、「次世代モビリティをデザインする独自のテクノロジー」によってタイヤを進化させ続けていく。

*1)CAE:Computer Aided Engineeringの略。コンピューター支援技術。

*2)SPDM:Simulation Process and Data Managementの略。各種データを一元管理し、標準化されたプロセスを共有できる基盤システム。

*3)空力特性:空気中で物体が移動、運動するときに受ける空気の力(抵抗)や流れの特質。

*4)タイヤ接地転動状態:タイヤが実際の路面の上を転がり動いている状態(と同じ状態)。

情報提供元:MotorFan
記事名:「 高効率・高精度な新タイヤ開発プラットフォーム