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スキャンツール(故障診断機)を使った車検は2024年度にスタートする!?


国土交通省は1月30日、飯野ビルディング(東京都千代田区)で「第2回車載式故障診断装置を活用した自動車検査手法のあり方検討会」を開催した。

今回の開催に先立ち、同検討会で議題とされている、センサー等の構成部品の異常を自己診断し記録する車載式故障診断装置(OBD)を活用した継続検査(車検)のあり方について、関連団体からヒアリングを実施。下記の団体が意見書を提出した。

・日本自動車工業会(自工会)…国産自動車メーカーを主要メンバーとする一般社団法人


・日本自動車輸入組合(JAIA)…海外自動車メーカーの日本法人を主要メンバーとする団体


・日本自動車機械器具工業会(自機工)…整備機器メーカーを主要メンバーとする一般社団法人


・日本自動車機械工具協会(機工協)…整備機器の商社を中心メンバーとする一般社団法人


・日本自動車整備振興会連合会(日整連)…ディーラーを含む認証・指定整備工場で構成される一般社団法人


・日本自動車車体整備協同組合連合会(日車協連)…事故車を修理する鈑金塗装工場の団体


・日本自動車連盟(JAF)…ロードサービスやモータースポーツの統括を行う一般社団法人


・自動車技術総合機構(NALTEC)…自動車の基準支援研究から型式指定審査、登録車の車検時審査、リコール技術検証までを一貫して行う独立行政法人。2016年4月1日に自動車検査独立行政法人と交通安全環境研究所を統合する形で発足


・軽自動車検査協会(軽検協)…軽自動車の車検時審査などを行う団体

この中から第2回検討会の場でプレゼンテーションを行う団体の挙手を募った結果、自工会、JAIA、日整連、自機工、自動車技術総合機構が出席している。




トップバッターとなった自工会は、車検での合否判定実施手段として、メーター警告表示の目視確認を行う案Aと、法定スキャンツール(故障診断機)を用いて特定DTC(故障コード)の読み出し確認を行う案Bの二案を提示。検査手順については、案Aはメーター球切れチェック→警告表示の有無目視確認、案Bは球切れチェック→スキャンツール接続→DTC有無確認、とした。




そのうえで、案Aは検査前でも異常を確認できる、不合格でもユーザーが納得しやすい、新たなスキャンツールの導入が不要、といったメリットがあり、デメリットとしては警告表示がモデルごとに異なる場合は検査員の作業が煩雑化するため警告表示の使用検証と仕様変更が必要となることを挙げた。




一方、案Bは実作業が少なく故障内容が判読できることがメリットとしながら、デメリットとしてユーザーはDTCを認知できないため車検不合格となることに対し理解を得られにくくなること、また自動車メーカーにとって特定DTC集約や管理運用の工数は非常に大きく、自動車メーカーの通信プロトコルをカバーする車検DTC読み出し装置の開発が必要となるうえ、同装置との通信成立性を保証する仕組みの構築が必要となること、そして検査場においては検査タクトが増加し、全国約3万の指定工場においては法定スキャンツールの導入が必要となることなどを挙げている。




そのため、検査内容が現実的かつ早期に準備可能な案A「警告表示の目視確認法」が実現容易性の観点で導入しやすい、と主張している。




続いてJAIAも自工会の意見にほぼ同調。ただし、「国際連合のWP29(自動車基準調和世界フォーラム)で自動運転システム警告マークを策定し、表示時に検査を促すようにしてほしい。それまではドライバーには警告表示に基づいた整備を啓蒙しつつ、検査時には点検整備記録簿の確認を要件に加えてはどうか」との要望・意見を付け加えている。




日整連は、「OBD検査導入は不安全な車両排除・環境負荷大きな車両の排除に有用」としながら、

・意義や制度などについてユーザーへの周知徹底


・予防整備制度の構築


・整備工場への情報提供・部品供給・教習体制の構築


・指定整備制度の活用、検査場における持ち込み検査の効率化


(例:事前にDTC確認した車両は審査簡便化・手数料引き下げor現状維持)


・体制構築のための時間的猶予・財務的支援

が必要との見解を示した。これに対し、「特定DTCが出ていてもメーターに出ていない不具合は理解されないとの意見があったが、なおのことこうしたシステムのユーザーへの周知は重要だ。警告灯だけでの運用は難しいのではないか」との意見が、検討会メンバーから出されている。




また、国交省整備課からの「特定DTC読み取りになった場合、スキャンツール買い換えは必要か、それともソフトウェアアップデートで対応可能か」という問いに対し、自機工は「現状では恐らくソフト追加で対応えきる。今後は情報を円滑に入れ込む方法の検討が必要」と述べた。




その自機工は、同検討会における7つの論点について、下記の通り要望・課題などを抽出している。

1.OBD検査の対象車両・装置をどのように設定すべきか。


→販売台数で決める場合は急激な増減時の処置方針を明確にしてほしい。




2.特定DTCが記録された車両をどう検出すべきか。警告灯を活用できる部分は。


→法定スキャンツールが特定DTCを見逃さない仕組みの構築が必要。特定DTC記録の場合は警告灯を点滅させるなど。




3.法定スキャンツールの仕様と情報アップデートの枠組みは。


→もれなくアップデートさせる仕組みの構築が必要(常時サーバ接続など)。エイミング検出可能にする必要も。




4.法定スキャンツールの機能と基準適合性確認のための枠組みと不正防止策は。


→法定スキャンツール試験機との接続による動作確認に加え、スキャンツールサプライヤー認定制度も必要。




5.通信プロトコルとデータストリーム機能は。


→シリアル通信など古い仕様は搭載せず、UDSやKWP2000以前の規格は使用しないでほしい。




6.特定DTCの提出・管理・更新方法は。


→提出時期の明確なルール化、統一されたデータフォーマット、管理されているデータをそのまま機器に組み込める環境の準備が必要。




7.専業整備工場もOBD検査に対応できる環境の整備が前提。


→指定工場認可条件への追加、点検整備項目への追加、整備士への教育が必要。

最後に登壇したNALTECは、「使用過程車の安全性向上・環境負荷軽減に貢献できるため、OBDを活用した検査の導入には賛成」との立場を明確に表明したうえで、「現状の継続検査は乗用車9分、トラック12分程度を要しており、極端に長くなるのは難しい。だが検査結果の電子記録システムがすでにあり、OBD検査の運用方法も検討を進めている」という現状を報告した。

スキャンツールを用いた検査と警告灯の確認との比較(出典:NALTEC)

そのうえで、自工会とJAIAが提案した、警告灯目視による検査と、スキャンツールによるDTC読み出しについて、「スキャンツールは保安基準に抵触する不具合に加え、異常が発生しても警告灯が点灯しないようにする不正改造の検出も可能だが、警告灯の点灯条件はメーカーに委ねられているため、保安基準に抵触する不具合が検出できないおそれがある」と、警告灯目視による検査の致命的な問題点を指摘。スキャンツールによるDTC読み出しによる検査を支持している。

想定するOBD検査の実施手順(出典:NALTEC)

なお、スキャンツールによるDTC読み出しによる検査を導入した際は、「最初の検査項目である同一性確認・外観検査時にOBD検査を実施することで、速度計および排ガスの検査を省略可能か検討する余地がある」との見解を示している。

OBD検査開始までのスケジュール(出典:NALTEC)

また、OBD検査に必要な車両情報および機器仕様について、「特定DTCをきっちり決めて機器側の情報を準備し、同時に検査に必要な情報は自動車メーカーから事前に提供してもらうほか、OBD検査の結果はスキャンツールから検査場の高度化システムへ自動送信されるようにする必要がある」とした。




そして、OBD検査の導入には前述の通り高度化システムの改良が必要となり、その更新を2021~23年度に控えているため、「OBD検査は2024年度から開始するのが最も効率的」との方針を打ち出している。




次回第3回検討会は2月26日に開催予定。当初は今年度中に全4回開催する計画だったが5回に増やし、警告灯活用可否など主要議題の論議を進め、ゴールデンウィーク前に報告書の取りまとめを行う見込み。

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