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【試乗記】Sクラス、王者たる進化。


常に時代の最先端を走ってきたメルセデスのフラッグシップサルーン、Sクラス。この度のビッグマイナーチェンジにより、Eクラスに採用された先進運転支援システムがさらなる進化を遂げ、新開発V8エンジンを搭載するなど商品力を高めている。モータージャーナリストの高平高輝氏が新型を味わってきた。




REPORT◎高平高輝(Koki TAKAHIRA) PHOTO◎小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

常に最新かつ最高であるために…….。

でかい、凄い、高そう、しかも新型は外からスマホ操作で駐車場に出し入れできるんだって、と世間が驚くのは間違いないが、一般人にはまず縁のなさそうな“ベンツのSクラス”がそれでもスーパーカーと違うのは、何よりも“仕事のクルマ”であることだ。




大企業のトップや大統領や首相など、偉い人をリヤシートに乗せるクルマがメルセデス・ベンツSクラスである。さすがに今では偉い人でもミニバンに乗るご時世だから、そこまで固まった見方はしないが、かつてSクラスに本当のライバルはいなかった。ロールス・ロイス/ベントレーは趣味性の強い工芸品のようなものだったし、BMW7シリーズや、ずっと遅れて登場したアウディA8などはもっとスポーティーなキャラクターを備えた新興勢力であり、実用性を兼ね備えたエグゼクティブサルーンとしてのSクラスは絶対的な存在だった。




それゆえに現行型(W222)がデビューした時には、その艶やかさにびっくりしたものだ。質実剛健なフォーマルサルーンの代名詞とは思えないほど、ラグジュアリーでエレガントなフラッグシップに生まれ変わっていたからだ。それは好評を博し、2013年から昨年末までの3年間で30万台以上も売れたという。




それにもかかわらず、わずか4年ほどでマイナーチェンジを受けた背景には、厳しくなるいっぽうのエミッション規制や将来の自動運転を見据えたADAS(先進安全運転支援システム)の急速な進歩がある。「最善か無か」という有名なスローガンを体現するSクラスは、常に最新かつ最高であることが求められるのだ。したがって今回の主な改良点は新しいパワートレインの採用とインテリジェントドライブのさらなる充実ということになる。昨年発売されたEクラスは、その時点でもっとも洗練された先進安全運転支援システムを搭載していたが、その上下関係を改めて整頓しなければならなかったと言えるだろう。

悠揚迫らぬ4.0ℓ V8ツインターボ。

従来型はディーゼルハイブリッドやガソリンハイブリッド、さらにはPHEVまで多種多様なラインアップ(AMGを除いて8車種)が揃っていたのだが、今回日本仕様として発表されたSクラスはAMGモデルを含めてわずか7車種に絞られてしまった。しかも当面導入されるのはS400とS560 4マティック ロング、そしてAMG S63 4マティック+ロングの3車種に限られ、残る4モデル(S560ロング、S600ロング、S63ロング、S65ロング)は今年末ぐらいの納車になるらしい。




もちろん今後増えるとは思うが、ずいぶんと思い切った車種設定だ。しかもほとんどがロングホイールベース仕様である。スタンダードのS400でもホイールベースは3m越えの3035mm、全長は5125mmで全幅は1900mmという堂々たるサイズである。ロングボディは全長もホイールベースもさらに130mm長く、車重も軒並み2.2tを超える。今や日本ではロングを選ぶ人が大半だというのだが、自らステアリングホイールを握るには正直気が重くなる巨体だ。




主力モデルになるだろうS560のエンジンは、従来型の4.7ℓV8ツインターボから4.0ℓ V8ツインターボにいわばダウンサイジングされたが、モデル名は550から560にわずかに数字が大きくなっている。「560」という数字に懐かしさを感じる人もいるだろうが、今やモデルナンバーと排気量、あるいは出力の数字とは直接的な関係はない。これまでが550だったから、それに比べて560ということなのだろう(上にはV12の600がある)。




ちなみに本国では従来型はS500というモデル名であり、今回のマイナーチェンジで新開発の3.0ℓ直列6気筒ターボを積む高性能版がS500になった(S560とは別)。ガソリンとディーゼルの各ターボ版が存在する新型6気筒ユニットは48V化されてISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を備え、補器類を駆動するベルトを持たない(すべて電動)注目の新世代ユニットである。しかしながら日本に導入されるのか、されるとしたらいつごろか、についてもまったく分からないという。最先端であることがSクラスの真髄なのに、まことに残念なことだ。




4.0ℓ V8ツインターボはもともと2シータースポーツカー「AMG GT」用(こちらはM178という)に開発されたもの、2基のターボチャージャーをVバンクの谷間に収めた軽量コンパクトなユニットで、さらにメルセデスが「NANOSLIDE」と称する特殊なシリンダーコーティングを施すなど、非常に高度で手の込んだエンジンだ。低負荷時にはV8のうちの4気筒を休止させる機構も備わる。M176型V8ツインターボは469ps/5250〜5500rpmと700Nm/2000〜4000rpmを発生、トランスミッションも9段ATとなり、他のモデルに追いついた。




Sクラスともなれば静かでパワフルなのは当然で、そのパワーをいかに上品にエレガントに生み出すかが肝要だが、S560のV8ツインターボは滔々と流れ出る豊かな河の流れのように、いつでも滑らかに静かに、必要なだけの力があふれ出てくる感覚だ。いっぽうでフル加速すれば0→100km/h 加速のメーカー値は4.6秒というから恐れ入る。S560 4マティック ロングは2.2t余りの巨大サルーンである。それが現行型のポルシェ911カレラと同タイムの速さで飛び出すというのだ。

足取りの軽快さではS400が一番。

1枚型デザインの2枚の12.3インチワイドディスプレイを採用した新型Sクラス。夜のインテリアを美しく彩ってくれる。

S63に積まれる、いわばオリジナル版のV8ツインターボのM177型はさらに強烈だ。ボア×ストロークも排気量も同一のV8ツインターボは、従来の5.5ℓ V8ツインターボに代わるもので、すでにE63に積まれている。612ps/5500〜6000rpmと900Nm/2750〜4500rpmの怒涛のパワーを生み出し、0→100km/h加速はなんと3.5秒という(こちらも欧州仕様メーカー値)。駆動力を電子制御する4マティック+のトラクション性能のおかげもあるとはいえ、繰り返すが車重2.2t余りの巨大サルーンとしては驚愕もの。何しろAMG GT Rでさえ3.6秒なのだ。




従来型の柔らかでラグジュアリーな乗り心地がどうなったか、と走り出したものの、新しいSクラスは正直言って期待したほどではなかった。まず、今のところ用意されているモデルには、新たにSクラス・クーペ同様のダイナミックカーブ機構(コーナーで内側にリーンする)が加わったMBC(マジックボディコントロール)が用意されない。すべて「エアマチック」エアサスペンションだが、もっともすっきり軽やかで確かな足取りと思われたのはやはり標準ホイールベースのS400だった。エンジンは3.0ℓ V6ツインターボ(367ps/5500〜6000rpm、500Nm/1600〜4000rpm)でV8に比べればさすがにちょっと線は細いが、実用上は十分だ。何より乗り心地がいい。




無論S560 4マティック ロングでも一級レベルではあるが、S400がタタンと軽快に超える段差や舗装の剥がれた部分で、ドシンと明確なショックを伝えてくるのはちょっと残念だ。S560 4マティック ロングと比べると車重が250kg近くも軽い1970kgに留まっていることとタイヤサイズ(560の試乗車はAMGラインの19インチ付き)の違いだろう。




MBCが装着できれば話はまた別だろうが、現状ではちょっと物足りない。また20インチが標準となるS63のほうはサスペンションもAMG専用となり、段差などでの突き上げはさらに硬質で明確。低速域ではそれなりに覚悟が要る。さらにS63の場合はトランスミッションが9速ではあるが、トルクコンバーターではなく、より変速がダイレクトでクイックな湿式多板クラッチ式のAMGスピードシフトMCTが搭載されているせいで、ガンというシフトショックを感じる時もあった。

MBC付きモデルを試してからでも購入は遅くない。

「インテリジェントドライブ」は昨年発売された現行Eクラスのシステムのほうが一部先行しており、最新バージョンに改められた。たとえば「アクティブディスタントアシスト・ディストロニック」には再発進機能が付き、高速道路の渋滞の中で一旦停止しても、30秒以内であれば自動的に再発進するようになった。実際に首都高の合流地点などの渋滞の中でこまめに停止、アイドリングストップ、再始動、再発進を律儀に繰り返して見せた。車間と速度コントロールはなかなかに巧妙で、普通の人間並みと言っていい。




車外からスマートフォンで操作できるリモートパーキングアシストも新機能である。Sクラスではオーナーではなくショファーが操作することになるだろうから、実際に使う機会があるかどうかは別にして、車外からの操作で並列駐車も縦列駐車が可能なのは現状メルセデスだけである。スマホやタブレットでエンジンが始動し、ギヤをセレクトして動き出すのは、見ていて確かに007気分である。




ただし、駐車スペースから出る時は前後方向に真っ直ぐしか動かすことはできない。つまり縦列駐車はできるが、そこから出すことはドライバーの担当となる。また車からある程度離れると動作が停止するので(3mぐらいが限界)車の傍にいる必要がある。社長さんや会長さんが、自分でスマホ画面をクルクルするとは考えられないが、隣にピッタリ寄せて駐車されてドアを開けるスペースがない時には役に立ちそうだ。




ちなみにSクラス・ロングのさらにロング版たる(ホイールベースが+20cm)マイバッハS560も同様、目地段差では意外に大きな突き上げを感じ、後席でくつろいでいる人にも路面の凸凹がはっきり分かる。かつてのマイバッハが外界とは遮断されたように、圧倒的なフラットさで突進する感覚とはやはり違う。日本ではMBC付きとなるRWDモデルを優先するべきではなかったかと思う。




やはりSクラスはV8じゃないと、という向きはMBC付きを確認してからでも遅くないのではないだろうか。

2基のターボチャージャーをV型シリンダーバンク内側に配置する「ホットインサイドV」レイアウトを採用したS560の4L V8ツインターボエンジンを搭載する。
試乗車にはAMGライン専用の19インチアルミホイールを装備。タイヤサイズはフロント245/45R19m、リヤ275/40R19の大径サイズを履きこなしていた。


ヘッドライトとリヤコンビネーションランプがLED化された。被視認性を確保しつつ走行状況によって発光量を自動調整する。
530Lのトランクスペース(VDA方式)を誇るS560 4マティックロング。ちなみにS400は510Lとやや少ない容量となる。


試乗車には_desinoスタイルパッケージが装着されていた。シルクベージュの上質なセミニアンレザーがふんだんに採用されたプレミアムなシートだ。
ショーファーパッケージ装着車にはフットレスト付きエグゼクティブリヤシート(助手席側後席)が設定される。


「Comfort」「Eco」「Sport」「Individual」の4つの走行モードを選べるダイナミックセレクトを装備(AMGモデルは「Sport+」モードも設定)。
他のモデル同様、センターコンソールにはCOMANDコントローラーやタッチパッドを組み合わせる使い勝手の良いインフォテインメントシステムの操作系が集約される。


SPECIFICATIONS


メルセデスS560 4マティック ロング<S400>


■ボディサイズ:全長5255<5125>×全幅1900×全高1495㎜ ホイールベース:3165<3035>㎜ ■車両重量:2220<1970>㎏ ■エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ<V型6気筒DOHCツインターボ> 総排気量:3982<2996>cc 最高出力:345kW(469ps)/5250〜5500rpm<270kW(367ps)/5500〜6000rpm> 最大トルク:700Nm(71.4㎏m)/2000〜4000rpm<500Nm(51.0kgm)/1600〜4000rpm> ■トランスミッション:9速AT ■駆動方式:AWD<RWD> ■サスペンション形式:F 4リンク式 R マルチリンク式 ■ブレーキ:F&R ベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ:245/50R18 ■環境性能(JC08モード)燃料消費率:9.0km<10.5>/ℓ ■車両本体価格:1681<1128>万円 
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