11月に入り、日本各地で赤カブが収穫期を迎えています。カブは日本で古くから食べられていた野菜で、今では全国各地で80種類もの品種が栽培されています。一口にカブといっても白いカブや赤いカブ、丸や扁平、細長いものなど、実にさまざまです。
今が旬の赤カブは赤い色が鮮やかすぎるため、煮物にすると他の具材に色がついてしまいます。ゆえに、サラダや漬け物として食べるのが一般的です。漬け物にすると赤が鮮やかに映え、コリコリした食感がおいしい赤カブの漬け物は、冬の漬け物の代表格とも言えるでしょう。その漬け込み作業が今、全国各地で最盛期を迎えています。


北海道南部の「大野紅かぶ」。扁平な大玉で実も葉も赤い

「大野紅かぶ」は直径10cm以上にもなる大玉で、肉質は緻密、やや平たい扁球型の赤カブです。皮は濃い紅色。果肉はほんのり赤い色をしていてきめ細やか。北海道南部の北斗市(旧大野町)を中心に江戸時代から栽培されています。
皮が濃いめの赤色なので、皮ごと漬け物にするときれいな赤い色に仕上がります。地元では主に、果実を皮ごと薄いイチョウ切りにして甘酢漬けとして利用されますが、ぬか漬けやみそ漬けも美味です。11月が収穫シーズンで、スーパーなどでは10kg入りの大袋で売られており、この時期は各家庭で甘酢漬けを漬け込むのが、道南の冬の風物詩です。


岐阜の「飛騨紅かぶ」は鮮やかな赤い色。葉の緑とのコントラストが美しい

江戸時代、旧丹生川村(現・岐阜県高山市)は八賀郷と呼ばれており、ここで八賀かぶというカブが作られていました。このカブは濃い赤紫色で、形は丸。ところが、大正7年(1918)に八賀かぶの中から鮮やかな赤い色の突然変異株が発見されました。これが「飛騨紅かぶ」で、平成14年度には「飛騨・美濃伝統野菜」に認定されました。
果皮のツヤツヤした鮮やかな赤と、葉の緑のコントラストが美しい飛騨紅かぶは、果肉が緻密できめが細かく、歯ごたえがやわらかいカブです。ほんのり甘味があり、主に漬け物用とし利用されていますが、果肉がやわらかいので、家庭では一夜漬けやサラダとしても食べられています。
〈参考:JAひだ「飛騨紅カブ」〉


滋賀の「万木(ゆるぎ)かぶ」。赤い果皮と白い果肉の伝統野菜

「万木かぶ」は、高島市安曇川町万木(ゆるぎ)地区在来の赤カブで、滋賀県の伝統野菜です。10cmほどの球形で、果実はやわらかすぎず堅すぎず。主に漬け物に用いられます。一番の特徴は、ツヤのある鮮やかな赤紫色の果皮と白い果肉のコントラストですが、漬け物にすると白い果肉も赤く染まり、色鮮やかな漬け物に仕上がります。
地元では主にぬか漬けや甘酢漬けなどにされますが、「あちゃら漬け」もよく食べられています。これは、万木かぶを薄いイチョウ切りにして、昆布と柚子の皮とともに一夜漬けにしたもので、カブのシャキシャキとした食感が美味しい漬け物です。
〈参考:滋賀のおいしいコレクション「万木かぶ」〉


焼畑農法で栽培されている山形の「温海(あつみ)かぶ」。歴史が古い

「温海(あつみ)かぶ」は、山形県の旧温海町で栽培されている伝統野菜で、江戸時代から栽培されている、長い歴史を持つ品種です。皮は赤紫色で中は白く扁平形。10cmほどの中型の赤カブで、果肉はややかためで歯ごたえがあり、漬け物にするとコリコリとした食感が残ります。
温海かぶは主に漬け物用として利用されていますが、特に甘酢漬けはこの地方の特産としても知られていて、江戸時代には幕府に献上されていたという歴史が古い漬け物です。
旧温海町の一霞地区の山間部では、昔ながらの焼畑農法で温海かぶが栽培されています。焼畑農法は土地の休閑期が必要で、同じ場所で温海かぶが栽培されるのは数年に一度だけです。さらに、ほかの種と交じらないように、温海かぶ以外のアブラナ科の作物は栽培しないという努力が、長年受け継がれています。
甘酢漬けは皮をむかずに丸ごと漬けて、厚めに切って食べるのが一般的です。甘みの中にほんのりとした苦味が残り、それがまたおいしい漬け物です。
〈参考:おいしい山形〉
※写真はすべてイメージです。
スーパーや直売店で漬け物用の赤カブが並んでいるのを見ると、秋の終わりが近づいてきたことを感じます。今年もうまく漬かりますように…という思いを込めて、各家庭では冬用の漬け物の仕込みが、まさに最盛期を迎えています。