米中貿易戦争はますます拡大し、収束はなかなか見えいないようです。中国ナンバーワンのIT企業アリババの馬雲氏(ジャック・マー)は「米中貿易戦争は短期では終わらない、20年間に渡り続く可能性がある」という見解を示しました。
中国語記事
http://www.takungpao.com/finance/236132/2018/0919/219095.html
大公報 2018年9月19日配信
美辞麗句ばかりのオバマ元大統領と異なり、トランプ大統領は米国第一主義を揚げ、実際に実行力のある政治家であると評価できる実績があります。こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。
私の著書「中国のヤバい正体」(大洋図書/2013年)にも記載したとおり、中国共産党の政権運営はその「経済力」に依存してきました。多くの中国国民は一党独裁にもかかわらず、強い経済効果をもたらす中国共産党を歓迎するスタンスであり、金銭と人権の引き換え、人権を捨てても共産党政権を許す人が多かったのです。しかし、米中貿易戦争で中国経済が崩壊し始め、彼らの唯一の切り札と、その立場さえ危ういものとなっています。
さらに、トランプ大統領は米中貿易戦争に新しい政治制裁も追加されています。9月25日には、米国国会衆議院が「チベット相互入国法案」を可決しました。
この法律の概要は「中国政府は、アメリカの外交官がチベット自治区へ進入することを禁止している。それを米中の対等とし、アメリカ政府も、中国の外交官がアメリカの一部の地区に進入禁止を定めた」というもの。つまり、アメリカは”チベットの真実”を調査するために、外交カードとして中国にチベットの開放を要求したのです。
この法案は1872番の議案として、米国国会参議院司法委員会の審議で多数決した場合、トランプ大統領が法案にサインしたら、正式に発効されます。私の予測では、ほぼ問題なく成立すると思います。
■数えきれないチベット弾圧を外交官やメディア、観光客まで規制して隠す中国
中国の対チベット弾圧をあげれば、枚挙に暇がありません。
2009年以降、中国政府の弾圧政策に抗議して焼身自殺(未遂を含む)したチベット人は、ロサルで150人目。その背景には、2017年11月18日のチベット大震災(M6.9)での死傷者数の隠蔽、2018年2月17日のラサにあるチベット仏教で最も神聖とされる7世紀建立の寺院「ジョカン寺(大昭寺)」の「不審火」による焼失。また1万人以上が学ぶ世界最大の仏教学院であるチベット仏教の聖地ラルンガル・ゴンパを破壊し、学生に改宗を強要するなど、数えきれないレベルで宗教・信仰の自由が侵害されています。
住民崇めるチベットの有名寺院で火災、情報統制か ラサ
https://www.cnn.co.jp/world/35115130.html
しかも、中国政府はアメリカの人権組織、マスメディアが取材できないよう、進入禁止の措置をとって警戒。現在、前述のような「外交官」だけではなく、現在アメリカの政治家、マスメディア、観光客でさえチベット自治区の進入を禁止しているのです。
現在、一部の保守系以外の日本のマスメディアは、チベットとウィグルの報道を意図的に報道しないように、あたかも中国共産党に忖度しているような雰囲気を強く感じます。日本国民は海外メディアの日本語版で読めるかもしれませんが「今日のチベット、ウィグルは明日の沖縄、北海道!」という危機意識で、中国共産党の残暴な侵略と民族浄化を”対岸の火事”と考えないようにしなければいけないのです。
■本気のアメリカ! 中国の国ぐるみの「スパイ工作」が次々と摘発中
国際モラル無視はチベット問題にとどまりません。一方で、中国人留学生やビジネスマンがアメリカの国防と商業情報と技術を盗む「スパイ行為」も、相次いで摘発されています。
大まかに、ここ三か月以内で起こった米国でスパイ事件を記載します。
2018年9月25日
27歳の中国人男性がアメリカに留学中、米軍に入隊し、その後は米軍の内部情報を中国共産党に流していると発覚。容疑者は最初からスパイ目的の留学と供述。
https://www.dw.com/zh/疑从事间谍活动-中国公民在美遭逮/a-45640535?&zhongwen=simp
2018年9月14日
アメリカの製薬会社でガン治療の薬作りの技術情報を盗んだ中国人の社員を逮捕。盗んだ製薬技術を南京で会社を設立して中国で生産しようと計画と供述(この南京の会社は中国共産党の出資)。
https://www.voachinese.com/a/news-second-chinese-scientist-pleaded-guilty-to-stealing-commercial-secret-20180916/4573782.html?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter
2018年8月3日
アメリカのGeneral Electric社の中国系帰化人の社員が中国政府に社内の特許技術を転売し続けていることで逮捕。容疑者はアメリカと中国の二重国籍。
https://cn.wsj.com/articles/CN-BIZ-20180803082809
このような事件はアメリカのみならず、世界各国で問題となっています。注目すべきなのは、スパイ案件の多くが「個人の中国人」による犯罪でなく、「中国共産党」が裏で糸を引く絵図が見てとれるということです。今回の法案でアメリカ政府が、一部の重要地区を「中国人立入禁止」という措置を設けられたら、スパイ犯罪は大幅に減少するでしょう。アメリカにとって一石二鳥の対中外交戦略なのです。
そして、米国によるチベット・ウィグルの人権問題への取り組みは、日本政府も大いに参考にすべきアプローチです。トランプ大統領を見習って、日本国内の一部の重要区域に「中国人立入禁止」と設ければ法律を作るのもありかもしれません。しかし左派層から「中国人を差別するな!」と自民党を批判する声が挙がるのが目に見えています。こんな左派層の「言い換え」に干渉されないように、自民党は今こそ、弱腰政党を脱却するときではないでしょうか。
米中貿易戦争はいま政治にまで波及し、第二次世界大戦以来の米ソ冷戦の現代版「米中冷戦」の様相を呈してきています。トランプ大統領は「経済」という中国共産党のラストカードを握りながら、政治の制裁も加えて、中国共産党政権を潰すアメリカ史上最高の大統領となるかもしれません。
孫向文 <漫画家 / 評論家>
1983年生まれ、漫画家、評論家。中華人民共和国浙江省杭州市出身。『本当にあった愉快な話』(竹書房)にて「日本に潜む!!中国の危ない話」、 隔月刊『ジャパニズム』(青林堂)にて「大和撫子が行く」を連載中。近著『日本人に帰化したい!!』(青林堂)が好評発売中。そのほか『週刊文春』にて実録中国猛毒食品「僕らだって怖い!」を掲載し、TBSテレビ『新・情報7daysニュースキャスター』にて「中国超監視社会」に出演。