渦中の辺野古埋め立ては撤回されるのか、そして危険なままの普天間は移設が進展するのか。夏は終わろうとも、沖縄では県知事選挙(9月30日投開票)をめぐり熱い戦いが始まろうとしている。
9月5日、知事選挙を前に県内・南風原町で公開討論会が開かれた。「争点は普天間の返還、基地負担の軽減だ」とする佐喜真氏と、「争点は翁長雄志知事の辺野古の埋め立て承認撤回の是非」と語る玉城氏。保守と”オール沖縄”の一騎打ちとなり、全国が注目する同選挙だが、残念なことに県内では、玉城候補の「勇み足」が問題になっている。9月4日、Twitterに沖縄在住のラジオDJ・手登根安則氏がこんな写真を投稿したのだ。
沖縄県知事選挙、告示前ですが
— ボギーてどこん(再起動宣言おきなわ) (@fm21wannuumui) 2018年9月5日
この有様。
なんのお咎めもありません。
まさに公選法特区。
やった者が勝ちの沖縄。 pic.twitter.com/277DIVUtzp
写真には演説をする玉城デニー氏の姿がある。だが、公職選挙法では告示(9月13日)前の選挙運動は「事前運動」として禁じられている。ポスター貼りやチラシ配り、そしてたすき、胸章・腕章、プラカードの使用も一切禁止されているのだ。「選挙活動」と「政治活動」の判断は難しいものの、写真が事実ならばプラカードや名前入りの幟(のぼり)らしきものも写っており、また「知事選」を連呼しているということから公選法違反の疑いがある。
仕事帰りに怪しいおばちゃん2人からこんなのもらった。
— 1613 (@hero1818710) 2018年9月4日
今こんな事やったらまずいんじゃ?と言うと一票入れてと言ってないしただと広報活動だから大丈夫と。
でもね、「"知事選"に出馬する玉城デニーをよろしく」って言っちゃってるやん。明らかな告示前の選挙活動
あかんで、、、#公選法違反 pic.twitter.com/creVHxVvR0
また、同日には別の人物から上のような書き込みもあった。沖縄県那覇市長・城間幹子氏(67)と握手をする玉城氏の画像だ。こちらのポスターも「県知事選」の宣伝とみられる表記や日時があるから、明らかにアウトだと思われる。
■「私だけじゃない」公選法違反が日常的に行われる特区・沖縄
じつは沖縄は「公選法特区」とも呼ばれ、これらの違反は見て見ぬ振りをされるという傾向がある。先の衆議院選挙でも、沖縄1区の共産党・赤嶺政賢氏(69)が衆院選特番『池上彰の総選挙ライブ』(17年10月22日放送/テレビ東京系)で公示前の「事前活動」を指摘されるということがあった。だが、この時、赤嶺氏は「私だけじゃない。沖縄では慣例的に行われていることだ」と驚きの開き直りをみせたのだ。
さらに玉城氏にも前科もある。2014年1月に行われた名護市長選挙で街宣許可の標旗なしに稲嶺進氏の応援演説を行っていたのだ。さらに政党の街宣車にポスターを貼っていた玉城氏。撮影者が指摘すると、あわてて立ち去ったのだという。
県内ではこのような公職選挙法を無視した事前活動や、違法街宣車、戸別訪問などが当たり前のようにまかり通っている。一体、なぜ沖縄ではこうした違反がまかり通っているのだろう。NEW’S VISION編集部では沖縄県選挙管理委員会に取材を行ってみた。
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ーー沖縄だけが”公選法特区”などと言われ、違法選挙がまかり通っているのはなぜですか?
担当者「もちろん、沖縄に(他府県と違う)特別な法律があるわけではありません。私たちも選挙そのものについての信頼性が揺らぐ事態は黙認するわけにはいかないと考えています」
ーーでは、玉城氏の事前活動が公選法違反だとネットで話題になっていますが取り締まりは行われないのですか?
担当者「私たちに取り締まりについての権限はありません。なので、(事実関係が確認できていないが)お話が本当ならば県警に通報するということになります」
ーー それでは、警察が動いていないということですか?
担当者「委員会としましては、選挙中に何件もの報告を警察にしています。しかし、逮捕するのは県警なので、それ以上のことは…(踏み込めない)。警察もたくさんの事件を抱えて対応できないのかもしれません」
ーー 選管としては、対策のしようがないと?
担当者「私ども(県の選挙管理委員会)としては、各市町村の選挙管理委員会と連携して、違反がないように呼びかけています」
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取材した範囲では、県の選挙管理委員会には県内外から多くの「違反報告」が入っているようだ。委員会はそれに応じて事実を確認し、警察には報告をしているという。それでも警察が動かないのか、違反が表立って取り沙汰されるケースは少ない。
辺野古周辺では(選挙前だけは反発を恐れて大人しくなるが)、毎日のように基地反対派が道交法違反まがいの妨害が行われるものの、こちらも県警はあまり手を出さない。出さないのか、出せない理由があるのか。沖縄の”治外法権”は闇が深そうである。新県知事がこの闇にも手を入れてくれることを期待したい。