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高活性の新規抗ウイルス薬「ブリンシドフォビル」に関するグローバルライセンス契約締結のお知らせ


2019年10月1日



シンバイオ製薬株式会社



高活性の新規抗ウイルス薬「ブリンシドフォビル」に関する

グローバルライセンス契約締結のお知らせ

シンバイオは抗マルチウイルス薬として開発しグローバル事業展開へ



シンバイオ製薬株式会社(本社:東京都、以下「シンバイオ」)は2019年9月30日付で、Chimerix Inc.(本社:米国ノースカロライナ州、以下「キメリックス社」)との間で、抗ウイルス薬ブリンシドフォビル(brincidofovir:BCV)に関してのグローバルライセンスの権利取得を目的としてライセンス契約(以下「本契約」)を締結したことをお知らせいたします。本契約の締結により、キメリックス社は天然痘疾患を除いたすべての疾患を対象として、BCVの開発・販売・製造を含めた独占的権利を世界全域を対象としてシンバイオに対して供与しました。これによりシンバイオはBCVの独占的グローバルライセンスを取得することにより、事業のグローバル化を推し進めてまいります。また高品質の医薬品供給のための一貫体制を確立し、スペシャルティファーマとして成長してまいります。



シンバイオは本剤が持つ優れた特徴を生かして医療ニーズが高い造血幹細胞移植後及び腎臓移植後のウイルス性出血性膀胱炎(vHC)*1とHHV-6脳炎*2の治療を最初の疾患ターゲットとして開発を進めてまいります。現在、これらの疾患の治療には従来の抗ウイルス薬が使われていますが、医療ニーズを満たしているとは言えず、まさに「空白の治療領域」となっています。そのために医療現場においては、長年にわたり有効性と安全性を兼ね備えた治療方法が切望されております。



BCVはシドフォビル*3(cidofovir:CDV、欧米では既承認・販売の抗ウイルス薬、本邦は未承認)の脂質結合体として新しい作用機序を持ち、CDVと比べて高活性の抗ウイルス効果の他、優れた安全性を併せ持つことから、広範囲のDNAウイルス感染症(サイトメガロウイルス(CMV)等のヘルペスウイルス、アデノウイルス、BKウイルス、パピローマウイルス、天然痘ウイルス等)に対して有効な治療方法となり得るものと期待します。BCV分子の画期性*4は、CDVに特定の長さの脂肪鎖を結合することにより細胞内への取り込み効率を飛躍的に向上させ、細胞内で直接作用する分子に変換され高い抗ウイルス効果を発揮します。更には、CDVの深刻な副作用である腎毒性を回避できるため使い易く、今までにない新規の高活性の抗マルチウイルス薬です。



今後、シンバイオはBCVの導入により積極的にグローバル事業の展開を図り、日本においての迅速な開発計画の実行と製品化の遂行と同時に、臓器移植の市場規模が大きい欧米市場及び中国市場を含めたアジア地域を睨み事業展開を進めてまいります。本剤を必要とする患者さんに一日も早く提供できるよう、また事業価値の最大化を図るべく、対象疾患の地域特性を生かしたパートナーシップも視野に入れて検討中であり、グローバル事業の展開を着実に推進してまいります。



この度のキメリックス社との戦略的提携に際し、当社代表取締役社長兼CEO吉田文紀は次のようにコメントしております。

「最初の開発ターゲットとなる対象疾患の造血幹細胞移植後のウイルス性出血性膀胱炎は患者さんの予後が悪く致死性は高く、長年にわたり優れた新薬が切望されていました。また、既存事業の血液疾患領域との相乗効果も高く、BCVを今後のグローバル事業の基軸として位置づけ、グローバル展開をするスペシャルティファーマへのトランスフォーメーションを推進してまいります。」



キメリックス社の社長兼CEOのマイケル・シャーマンのコメントは以下のとおりです。

「シンバイオのオンコロジー分野およびウイルス分野における新規パイプラインの開発及びこれまでの商業化の成功は、バイオ医薬品企業としての事業遂行能力の高さを示しています。シンバイオは、天然痘以外の全適応症でブリンシドフォビルのグローバルの開発を展開するに十分な実績と能力を有しており、この度のパートナーシップの将来性に大きな期待をしています。」



シンバイオはキメリックス社に対して契約一時金及びロイヤルティのほか、承認取得時のマイルストーン及び販売額達成に応じたマイルストーンを支払います。なお、今回のライセンス契約締結に伴う2019年12月期の業績予想に与える影響は精査中であり確認次第開示いたします。



以 上



【注記】

(*1)ウイルス性出血性膀胱炎 

造血幹細胞移植後に頻発するウイルス感染症の中でも、出血性膀胱炎をきたすアデノウイルス感染症は、一般に難治性であり、頻尿、腹痛、排尿痛など患者を苛む症状も激しく、重症化すると播種性の感染症を来して致死性となる。また、アデノウイルスが腎臓に移行して腎不全をもたらし致死となる例も報告されている。特に国内での比率が高い非血縁者ドナーおよび臍帯血移植において発症しやすく、免疫システムの再構築に要する時間的問題もあいまって、きわめて難治性となることが多い。シドフォビル(CDV)など現在治療に用いられている薬剤は未承認あるいは適応外である。



(*2)HHV-6脳炎

HHV-6(Human herpesvirus 6)は6番目に発見されたヒトヘルペスウイルスである。同種造血幹細胞移植においてHHV-6の再活性化が30-70%の患者に生じ、HHV-6脳炎の原因となる。ほとんどのHHV-6脳炎は2-6週目に発症し、最も頻度が高いのは移植後3週目である。記憶障害、意識障害、痙攣が三大症状であり、典型例では記憶障害から意識障害、痙攣と段階的に症状が進行するが、痙攣の発症頻度は30-70%と報告されている。進行が早い例では神経症状は時間単位で悪化し繰り返す痙攣や呼吸抑制のため人工呼吸器管理を必要となる症例も少なくない。HHV-6脳炎発症例に対しては早期の治療開始は極めて重要で、短時間で急速に患者の状態が悪化することが多い。診療ガイドライン※では、第1選択薬はホスカルネット(FOS)またはガンシクロビル(GCV)、第2選択薬はシドフォビル(CDV)である。CDVが第2選択薬とされているのは強い腎毒性と薬剤の脳脊髄液(CSF)中への移行不良のためとされる。しかしこれらin vitroで効果が確認された薬剤の、HHV-6脳炎発症例に対する臨床効果を確認する試験は現在まで実施されていない。

※造血細胞移植ガイドライン:ウイルス感染症の予防と治療 HHV-6(日本造血細胞移植学会:2018年2月版)



(*3)シドフォビル(cidofovir:CDV)

AIDS患者におけるサイトメガロウイルス網膜炎治療薬として、1996年にFDA承認済みである。シドフォビル(CDV)は、シトシンヌクレオチド類似物質で,ヘルペスウイルス科のみならず、アデノウイルス、パピローマウイルス、ポリオーマウイルスなどのDNAウイルスの複製を阻害する。CDVは、ガンシクロビル(GCV)耐性(UL97遺伝子変異)に対しても有効であり、GCV耐性出現に際してホスカルネット(FOS)が使用できない場合に有用と考えられている。日本においては、開発されておらず未承認の薬剤である。



(*4)ブリンシドフォビル(brincidofovir:BCV)分子の画期性

ブリンシドフォビル(BCV)は、シドフォビル(CDV)に脂肪鎖(ヘキサデシルオキシプロピル:HDP)が結合した構造となっており、速やかに脂質二重膜へ取り込まれ効率よく細胞内へ移行した後、ホスフォリパーゼCによる代謝によって脂肪鎖が切り離され、生成された活性化体(CDV-PP:CDV diphosphate)が細胞内で長時間保持される結果、抗ウイルス活性が飛躍的に向上した化合物である。また、HDP結合により、OAT-1トランスポーターによる腎尿細管上皮細胞への蓄積が生じないことに加え、CDVが血中に遊離するレベルは低いため、CDVの根本的問題であった腎毒性を回避できる。

【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201909301564-O1-U8G9F4qo



【Chimerix Inc. (キメリックス社)概要】

米国ノースカロライナ州に拠点を置き、NASDAQ上場(CMRX)。がんや他の重篤な疾患の患者さんの生活向上に貢献する革新的な医薬品の開発を行うバイオ医薬品企業。経口抗ウイルス薬を発見、開発、商品化する。同社は独自の脂質技術を利用し、2種類のヌクレオチド化合物を開発した。現在有効な治療法がないウイルス性疾患(AdV, BKV, EBV, HHV-6等)に対して強くかつ幅広い活性を有する世界で初めての薬剤としてbrincidofovir(CMX001)を開発中であったが、がん領域を中心とする事業に集中するため、天然痘を除くグローバルライセンスを2019年9月にシンバイオ製薬株式会社へ導出した。2019年7月に「CX-01」をCantex Pharmaceuticals, Inc.より導入、急性骨髄性白血病(AML)を適応症としてPhase3を準備中である。キメリックス社の詳細については同社ウェブサイト(https://www.chimerix.com/ )をご覧下さい。



【当社会社概要】

シンバイオ製薬株式会社は、米国アムジェン社元副社長で、アムジェン株式会社(現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受)の実質的な創業者である吉田文紀が2005年3月に設立した医薬品企業です。経営理念は「共創・共生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、満たされない医療ニーズに応えてゆくことにより、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としている。2016年5月に米国完全子会社 SymBio Pharma USA, Inc.(本社:米国カリフォルニア州 メンローパーク、社長:吉田文紀)を設立した。

2010年にトレアキシン®の製造販売承認を最初の適応症である再発難治性非ホジキンリンパ腫において取得しており、その後、慢性リンパ性白血病、未治療非ホジキンリンパ腫で承認を取得し、現在はエーザイ株式会社を通じて日本、韓国、シンガポールにて販売をしている。台湾はイノファーマックス(InnoPharmax Inc.)に販売を委託している。日本における昨年の薬価ベースの売上高は85億円であった。2018年7月日本血液学会が発行した造血器腫瘍ガイドラインにより、トレアキシンは既承認の3適応症において標準療法となった。



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