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~記録的な猛暑が続く、2018年の夏~  女性の8割以上が「夏に電気料金の上昇」を実感


2018年8月17日



トレンド総研



【トレンド総研 レポート】

~記録的な猛暑が続く、2018年の夏~

女性の8割以上が「夏に電気料金の上昇」を実感

「電気料金が家計の負担に感じることがある」の声も4割超

一方で「再エネ賦課金」や「原油価格上昇」による料金上昇には無頓着!?



生活者の意識・実態に関する調査をおこなうトレンド総研(東京都渋谷区)は、このたび、「家庭の電気料金」をテーマにレポートいたします。



2018年夏は、平年より気温が高い傾向にあり、全国的に記録的な猛暑が続いています。こうした中で気になるのが「電気料金」です。例年よりもエアコンの使用量が増えたことで、電気料金の支払額がアップしているご家庭も多いのではないでしょうか。



しかし、この電気料金を左右しているのは、実は「電気使用量」だけではありません。



例えば、最近「原油価格が上昇している」といったニュースを耳にすることが増えていますが、電気料金には「燃料費調整制度」というものがあり、燃料価格が上昇すると、電気料金も自動的に上昇することになります。



また、電力会社は、再生可能エネルギーで発電された電気を、一定期間、発電事業者から買い取ることが義務づけられていますが、その費用は「再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)」として、企業や家庭といった電気の使用者が負担しています。



それでは、一般生活者は、この事実について、どの程度理解できているのでしょうか。今回トレンド総研では、20~40代の女性を対象に、「家庭の電気料金」に関する調査を実施。また、日本のエネルギー分野に詳しい、東京工業大学特命教授の柏木孝夫氏へのインタビューもおこないました。



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レポートサマリー

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【調査結果】 「家庭の電気料金」に関する意識・実態調査

・「夏は、他の季節に比べて、電気料金が高くなりやすいと思う」と答えた女性は84%。

・ここ数年の家庭の電気料金について「上がっていると感じる」と答えた人も、57%と約6割にのぼっている。

・しかし、電気料金にかかわる「燃料費調整制度」や「再エネ賦課金」について知っている人はわずか2割台。



【専門家コメント】 柏木孝夫氏に聞く、「日本のエネルギー供給」の実態と課題

・電気料金は、発電・送電・販売などにかかる、さまざまなコストをもとに決められている。

・原油の調達費用や、再生可能エネルギーの買取コストなどもそのひとつ。

・現在、日本では、エネルギー自給率の低下、電力コストの上昇などの課題に直面している。

・こうした中、2018年7月には、エネルギー政策の基本的な方向性を示す「第5次エネルギー基本計画」が閣議決定された。

・同計画においては、世界的な「脱炭素」化の流れにおいて注目度が高まる「再生可能エネルギー」と「原子力」の立ち位置や、2030年及び2050年に向けた対応が定められている。

・電気が安定的に供給されるのは、決して当たり前のことではない。日本のエネルギー課題克服のためには、国民ひとりひとりが現状を理解し、自分事として考えることが重要。



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【調査結果】「家庭の電気料金」に関する意識・実態調査

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はじめに、20~40代女性500名を対象に、「家庭の電気料金」に関する意識・実態調査をおこないました。



<調査概要>

・調査対象:20~40代女性500名

・調査方法:インターネット調査

・調査期間:2018年7月18日~7月20日



◆家庭の電気代、約6割が「ここ数年で上がっていると感じる」と回答 

まず、調査対象のうち「家庭における毎月の電気代をおおよそ把握している」人(342名)に、夏の電気料金について聞いたところ、84%が「夏は、他の季節に比べて、電気料金が高くなりやすいと思う」と答えました。



さらに、ここ数年の家庭の電気料金について「上がっていると感じる」と答えた人は、57%と約6割。また、「電気料金が家計の負担になっていると感じることはありますか?」の質問では、41%が「負担に感じることがある」、49%が「現在よりも料金があがると負担に感じる」と回答しています。多くの女性たちが、電気料金の上昇を家計の負担と感じている様子がうかがえます。



【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201808146919-O1-IPSfu15U



◆電気料金にかかわる「燃料費調整制度」や「再エネ賦課金」について知っている人はわずか2割台 

一方で、家庭の電気代は「使用量」以外に、さまざまな要素によって料金が左右されます。



そのひとつが、火力発電に使用される石油・LNG・石炭など化石燃料の価格上昇です。電気料金には「燃料費調整制度」というものがあり、燃料価格や為替レートの影響が電気料金に反映される仕組みになっています。すなわち、燃料価格が上昇すると、電気料金も自動的に上昇することになるのですが、今回の調査対象のうち、この「燃料費調整制度」を知っていた人は、わずか全体の4人に1人(25%)にとどまりました。



また、電力会社は、再生可能エネルギーで発電された電気を、一定期間、決められた価格で発電事業者から買い取ることが義務づけられています。そして、その費用は「再エネ賦課金」として、企業や家庭といった電気の使用者が負担しています。しかし、この「再エネ賦課金」が徴収されている事実を知っていた人も、「燃料費調整制度」よりも少数で、全体の5人に1人(20%)となりました。



さらに、2018年7月には、生活者の電気料金にも大きくかかわる、新しい「エネルギー基本計画(第5次エネルギー基本計画)」が閣議決定されましたが、この事実を知っていた人はさらに少なく、わずか7%。電気料金自体は気になるものの、その料金を左右する仕組みや考え方については、理解できていない人が多いと言えそうです。



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【専門家コメント】 柏木孝夫氏に聞く、「日本のエネルギー供給」の実態と課題

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上記の調査結果をふまえて、今回は「日本のエネルギー供給」の実態と課題について、日本のエネルギー分野に詳しい、東京工業大学「先進エネルギー国際研究センター」センター長・特命教授の柏木孝夫氏にお話を伺いました。



◆さまざまな要素によって決定されている電気料金 

電気料金は、発電・送電・販売にかかる、さまざまなコストをもとに決められています。



例えば、燃料の調達費用もそのひとつです。燃料価格は、世界経済の景気動向や石油製品の需要動向などによって決まってくるため、電気事業者の効率化努力がおよばない部分となります。そのため、電気料金には「燃料費調整制度」というものがあり、燃料価格や為替レートの影響が、料金に反映される仕組みになっています。つまり、燃料価格が下落すれば電気料金は下がり、上昇すれば電気料金も上がるというわけです。そして現在は、燃料価格が上昇しつつあるので、必然的に電気料金も上がっています。



また、その他にも電気料金にかかわる制度として、「固定価格買取制度(FIT)」というものがあります。これは、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入拡大を図ることを目的に定められた仕組みのこと。電力会社はこの制度により、再生可能エネルギーで発電された電気を、決められた価格で一定期間買い取ることを義務づけられています。この利用者の負担金が「再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)」です。



「再エネ賦課金」は、増加の一途をたどっており、一般家庭の負担額は初年度(2012年度)で年間約800円だったものが、今年度では約9,000円近くにまで増えています。国全体でみると「再エネ賦課金」の額は約2.4兆円(2018年度想定)であり、今後この額はますます増加していく見込みです。



◆日本のエネルギー問題解決に向けては、特定の電源に依存しない「エネルギーミックス」が重要

現在、日本はエネルギー自給率の低下や電力コストの上昇といったさまざまな課題に直面しています。特に、2011年の東日本大震災以降はその深刻さも増している状況です。



こうした中で、2018年7月に閣議決定されたのが「第5次エネルギー基本計画」。この「エネルギー基本計画」とは、エネルギー政策の基本的な方向性を示すため、エネルギー政策基本法に基づき政府により策定されたもの。エネルギーを巡る国内外の情勢変化をふまえ、2030年、さらに2050年を見据えた新たなエネルギー政策の方向性が示されています。



そして、この「第5次エネルギー基本計画」は、2015年に定めた「エネルギーミックス(電源構成)」を前提として、その実現に向けた課題を整理した内容になっています。2015年に定めた「エネルギーミックス」とは、再生可能エネルギー、火力、原子力など、特定の電源に過度に依存することなく、さまざまな発電方法をミックスした比率となっています。



さまざまな発電方法をミックスすることで、例えば前述のように燃料価格が上昇しても別のエネルギーにシフトしたり、逆に下落すればそちらを買っておくなどの調整がしやすくなります。また、「再エネ賦課金」の問題についても、コストの安いエネルギーと組み合わせることが、負担をおさえるうえで重要な要素になります。



◆世界的な「脱炭素」化の流れにおいて注目度が高まる「再生可能エネルギー」と「原子力」

そして、「第5次エネルギー基本計画」において重要となるのが、「脱炭素」という考え方です。2015年12月に採択された、気候変動抑制に関する国際的協定である「パリ協定」の発効以降、地球温暖化の原因となるCO2などの排出を防ぐために、石油や石炭などの化石燃料から脱却する「脱炭素」化の流れが世界的に進んでいます。それまでは「低炭素」などの言葉が多く使われていましたが、現在では「脱炭素」に向けた戦略を打たなくては、文化国家としての責務が果たせないという論調が強まっています。



このような国際的な流れもふまえて、「第5次エネルギー基本計画」では、「脱炭素」に向けた取り組みとして、「再生可能エネルギー」と「原子力」の位置付けを明確にしています。



まず、「再生可能エネルギー」は、資源の少ない日本においてエネルギー供給の一翼を担う、長期安定的な主力電源になるよう、経済的な自立や、安定供給面におけるさまざまな課題の克服に向け取り組んでいく、とされており、2030年時点での電源構成比率が22~24%となっています。この中でもポイントになるのは「経済的な自立」というキーワード。国民負担である「再エネ賦課金」に頼ることなく、発電効率の向上に加え、蓄電池の低コスト化などを進めつつ、経済的に自立した主力電源に押し上げることが重要です。



加えて、「再生可能エネルギー」には、コストの問題だけでなく、安定供給が難しいなどの課題もあります。電気が安定的に供給されるのは、決して当たり前のことではありません。人間の体が、血圧が高すぎても低すぎても倒れてしまうのと同様、電気も、電圧が上がりすぎたり、下がりすぎたりすると停電します。自然のエネルギーはコントロールできないため、例えば「再生可能エネルギー」だけに過度な依存をしてしまうと、簡単に停電が起きてしまうことになります。安定的な電気供給のためにも、発電方法のメリット・デメリットを踏まえた、適切な「エネルギーミックス」が重要なのです。



そして、「原子力」は、「第5次エネルギー基本計画」においても、将来にわたる重要なベースロード電源として、2030年時点での電源構成比率が20~22%となっています。また、2050年に向けての対応の中でも、「実用段階にある脱炭素化の選択肢」と位置づけられています。一方で、「原子力」の電源構成比率を実現するには、規制の枠にとどまらない高い次元の安全性確保に向けた取り組みも重要です。現在は、地震や津波等の対策や廃棄物処分の問題解決に向けた、新しい取り組みも進められています。



社会経済の基盤となる電力を、安定的かつ持続的に生み出し続けるにはどのようなことが必要か、国民ひとりひとりが現状を理解し、自分事として考えることが重要であると言えます。



<専門家プロフィール>

柏木孝夫(かしわぎ・たかお)

東京工業大学 特命教授・名誉教授 先進エネルギー国際研究センター長

1946年東京生まれ。1970年東京工業大学工学部卒業。1980~1981年、米国商務省NBS(現NIST)招聘研究員などを経て、1988年東京農工大学工学部教授に就任。2007年東京工業大学大学院理工学研究科教授。2012年から現職。経済産業省の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長、日本エネルギー学会会長などを歴任。2009年からは経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム協議会」のメンバーを務めるなど、国のエネルギー政策づくりに深くかかわる。また、エネルギー・環境システム分野において数多くの受賞歴がある。『超スマートエネルギー社会5.0』(エネルギーフォーラム)、『スマート革命』(日経BP社)、『コージェネ革命』(日経BPコンサルティング)、『スマートコミュニティ―新たなビジネスモデルを世界へ』(時評社)など、著書も多数。



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