KaizenPF Research Memo(11):DX市場の営業・マーケティング・カスタマーサービス分野がターゲット
1. DX市場の営業・マーケティング・カスタマーサービス分野がコアターゲット
DX市場は拡大基調であり、大企業を中心に業務のデジタル化・非対面化が進展し、市場拡大が今後加速する見込みである。これまで紙で制作していたチラシやパンフレットなどのコミュニケーションツールも、急速にデジタル化・動画化(SNS広告、メール・チャット、Webサイト、デジタルサイネージ、オンラインイベント等)が進展している。
こうした事業環境を背景に、同社は中期経営計画を具体的に公表していないが中長期的な目標として営業利益率15%以上を掲げている。成長戦略としては、DX市場の中でも特に非対面ニーズが高く成長性も高い営業・マーケティング・カスタマーサービス分野をコアターゲットとして、グループシナジーやクロスセル・アップセル戦略により、大企業向けを中心にリカーリング売上拡大とARPU向上を加速させる方針である。顧客企業にとってDXの最大のボトルネックは人材不足だが、同社にはプラットフォーム上で専門スキルを持った1万人超のグロースハッカーネットワークを構築している強みがある。
さらに今後はChatGPTやGPT-4など生成AIの活用が求められるため、AI人材育成プログラムを開発した。当面は社内向けに活用し、将来的には外販も想定している。成長する市場において、今後もプラットフォーマーとしてのポジションをより強固なものにするため、新領域でのM&A・アライアンスも含めた積極投資を行い、DXソリューションにおけるEMS(製造受託)への進化も目指す方針だ。
2. グループシナジーによりリカーリング売上拡大とARPU向上を推進
同社は、新規顧客獲得によるアカウント数拡大とともに、リカーリング売上拡大やARPU向上のため、顧客のDX進展に合わせて各種サービスを組み合わせて提供するクロスセル・アップセル戦略を基本としている。また、ディーゼロ及びハイウェルを子会社化したことに伴って組織再編を行い、クライアントポートフォリオの転換も推進している。なお2023年12月期はハイウェルの新規連結も寄与して、リカーリング売上高が前期比91.7%増の3,627百万円、リカーリング売上比率が同12.6ポイント上昇して83.5%となった。またクロスセル・アップセル戦略により、年間売上1億円以上の顧客はアカウント数が前期から1件増加して4件、売上高が同2.0億円増加して7.0億円となった。
3. M&A・アライアンスも積極活用
成長戦略として、顧客の課題に合わせて提供サービスを再編・拡充する方針だ。このためM&A・アライアンスも積極活用する方針である。2021年6月にはアドバンテッジアドバイザーズ成長支援投資事業有限責任組合に出資した。同ファンドの投資先企業に対して売上成長をもたらすDX支援を行うとともに、新たなビジネスモデルやサービスの創出にもつなげる方針だ。同年7月には内製型DXを実現する「KAIZEN CONSULTING」の提供を開始した。DXの実行に課題を抱える企業向けに、戦略策定から実行までプロジェクトの上流からサポートする。
同年9月には子会社ディーゼロとのシナジーを生かし、Webサイトの課題分析からリニューアル・新規開発、長期的な効果改善に向けた運用まで一気通貫で支援する「KAIZENサイトリニューアル」の提供を開始した。2022年5月にはKDDI<9433>と自治体向けWebサイト構築ソリューションの提供を開始した。自治体向けでは既に国土交通省「川の防災情報」Webサイトに一部導入した実績がある。同年8月には、NTT西日本が取り組むCX(Customer Experience=商品やサービスの利用における顧客視点での体験)改善の一環として、Web上での顧客体験向上に向けたDXプロジェクトを共同で実施した。
同年10月にはハイウェルを子会社化した。ハイウェルはSES事業、採用支援事業、デジタルプロモーション事業を展開し、特にHR(Human Resources)領域において3,000社を超えるパートナー、累計3,000名以上のエンジニアネットワークを有している。同社のグロースハッカーネットワークとハイウェルの豊富なリソース及びHR領域におけるノウハウを組み合わせることで、全社ベースでのクロスセル・アップセル戦略を加速させる方針だ。
2023年6月には(株)電通と国内電通グループ<4324>12社で構成する電通B2Bイニシアティブと共同で、BtoB企業特化型のフォーム改善施策「B2Bグローススイッチトライアル」の提供を開始した。2023年10月にはオリエントコーポレーション<8585>と提携した。オリエントコーポレーションが提携する地域金融機関に対してUXソリューションを提供する。
当面は内部留保の充実図る
4. 株主還元策
株主還元については、株主に対する利益還元を経営上の重要課題の一つとして位置付けているが、創業して間もないことから、財務体質強化や事業拡大のための内部留保の充実などを図り、事業拡大のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えている。このため創業以来配当は実施しておらず、今後も当面の間は内部留保の充実を図る方針である。また、将来的には株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針だが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期などについては未定としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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