ダイコク電 Research Memo(1):2022年3月期は増収及び大幅な増益を実現
1. 事業概要
ダイコク電機<6430>は、パチンコホール向けコンピュータシステムの開発・製造・販売のほか、パチンコ遊技機の表示ユニット及び制御ユニットの開発・製造・販売等を2本柱としている。主力のホールコンピュータ分野では、デファクトスタンダードとなっている管理手法の提供等により、業界No.1の市場シェア37.1%を占める。また、パチンコホールの経営を支援する業界随一の会員制情報提供サービス「DK-SIS」では、会員数3,303店とのネットワークを形成し、同社の事業基盤を支えている。
同社は、年々縮小傾向にあるパチンコ市場のなかで、大型店舗におけるシェアを伸ばすとともに、継続的に収益が得られるストック型ビジネスモデルへの転換など、中長期を見据えた事業改革を推進している。ただ、一連の規則改正等(出玉制限や依存症対策、「新規則」機への入れ替えなど)を通じて、パチンコホール業界が大きな転換点を迎えるなかで、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響も重なり、先行き不透明感から業績はしばらく厳しい状況が続いてきた。一方、2022年1月末を設置期限とする「旧規則」機の入替が段階的に実施されると、遊技機市場はパチンコ「新規則」機による活性化の兆しもあり、それに伴って足元業績は回復傾向にある。加えて、2023年3月期後半には「スマート遊技機」の導入も予定されており、いよいよ新たなフェーズを迎えようとしている。
2. 2022年3月期決算の概要
2022年3月期決算の業績は、売上高は前期比4.5%増の24,390百万円、営業利益は同96.2%増の1,191百万円と増収及び大幅な増益を実現した※。パチンコホールにおける設備投資は、新店や大規模改装工事を控える厳しい状況が続いたものの、パチンコ「新規則」機の好調な稼動とともに、「情報システム事業」の主力製品であるAIホールコンピュータ「Χ(カイ)」をはじめ、CRユニット「VEGASIA」、情報公開端末「REVOLA」「BiGMO PREMIUM」の販売が前期を上回ったことや、サービス売上の着実な伸びが増収に寄与した。また「制御システム事業」についても、パチンコ機向けの販売が好調であったことや、パチスロ機の受託製造を開始したことにより、主力の「表示・制御ユニット」が好調に推移した。利益面では、利益率の高い主力製品の伸びに加え、ストック型ビジネスであるMIRAIGATEサービス(以下、MGサービス)の回復、全社的なコスト削減への取り組みにより大幅な営業増益を実現した。
※2022年3月期より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しており、22/3期の各数値については当該会計基準等を適用した後の数値となっている。また、21/3期の各数値については、当該表示方法を反映した組替え後の数値及び前期比を記載している。
3. 新たな中期経営計画の公表
同社は2021年11月に、2023年3月期からの新中期経営計画(3ヶ年)を公表した。先行き不透明な状況が続いたことから、しばらく中期経営計画の公表を見送ってきたが、このタイミングで公表に踏み切ったのは、2022年2月からの「新規則」機への完全移行、さらには「スマート遊技機」※による新たな時代を迎えるにあたり、遊技機市場やパチンコホールの設備投資の活性化に向けた道筋が見えてきたことが背景にある。すなわち、スマート遊技機の普及に伴う需要を取り込むとともに、引き続きAIホールコンピュータ「Χ(カイ)」の普及を促進するほか、クラウドサーバーを活用したビジネスへの展開(新MGサービスの拡充)により、業界唯一のプラットフォームを構築する戦略を掲げている。最終年度である2025年3月期の数値目標として、売上高34,000百万円(3年間の年平均成長率は11.7%)、営業利益2,200百万円(営業利益率6.5%)を目指している。なお、営業利益率が段階的に改善していくのは、MGサービスによるストック型ビジネスが成長の軸となり、収益構造の変化(収益の底上げ)に大きく貢献するためである。
※「管理遊技機」(スマートパチンコ)及び「メダルレス遊技機」(スマートパチスロ)のこと。これまでのように玉やメダルに触れることなく遊技することができる。パチンコホールにおける玉やメダルに係わる設備が不要になること、遊技性能が既存の遊技機よりも向上するところなどに特長があり、遊技機メーカー団体(日工組・日電協)が推進していることから、今後の進展が注目されている。
4. 2023年3月期の業績予想
新中期経営計画の初年度となる2023年3月期については、売上高を前期比6.6%増の26,000百万円、営業利益を同28.6%減の850百万円と見込んでいる。売上高は、パチンコホールにおける設備投資意欲が回復傾向にあることを背景として、「情報システム事業」及び「制御システム事業」がともに伸びる見通しである。ただ、「情報システム事業」については、1) 上期は半導体不足による電子部品等の調達難が継続すること、2) 下期はスマート遊技機が登場し市場が活性化することを前提としており、下期偏重の業績予想となっていることに注意が必要である。利益面では、クラウドやパチスロへの積極的な投資に加え、半導体不足の影響や原材料価格の高騰を保守的に見積もり、営業減益を見込んでいる。
■Key Points
・2022年3月期は増収及び大幅な増益を実現。厳しい環境が続くなか、主力製品の伸びやMGサービスの回復、収益体質の改善が計画を上回る増益に寄与
・2023年3月期からの新中期経営計画を公表。スマート遊技機による新たな時代を迎えるにあたり、クラウドサーバーを活用したビジネス展開(新MGサービスの拡充)により、業界唯一のプラットフォームの構築を目指す
・2023年3月期は市場の活性化とともに増収を確保するものの、半導体不足の影響や原材料価格の高騰などを慎重に見積もり、減益予想
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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