ユニリタ Research Memo(4):コロナ禍の長期化等に伴い、「クラウドサービス」の一部に進捗の遅れ
1. 2022年3月期決算の概要
ユニリタ<3800>の2022年3月期の業績は、売上高が前期比3.8%増の10,441百万円、営業利益が同8.4%減の693百万円、経常利益が同6.6%減の828百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同37.9%減の522百万円と増収ながら減益となった。期初予想に対しても、売上高はほぼ計画線ながら、利益面では下回る着地となっている。
売上高は3つの事業がすべて伸長した。特に「プロダクトサービス」は、クラウド化へと移行する需要の取り込みなどにより、計画を上回る伸びを実現した。一方、「クラウドサービス」は、主力サービスが順調に伸びたものの、コロナ禍の影響を受けたソーシャルクラウド事業の伸び悩み等により計画には届かなかった。また、「プロフェッショナルサービス」は、DX推進を背景とするコンサルティング案件の増加などにより堅調に推移した。
損益面では、増収や研究開発費の一巡(及び効率化)が収益の押し上げ要因となったものの、人件費の増加(注力分野への積極採用等)、「クラウドサービス」(事業推進クラウド事業)への先行投資(外注費や広告宣伝費等)の拡大等により、計画を下回る営業減益となった。
財政状態については大きな変動はなく、総資産は前期末比3.4%減の14,364百万円に減少した一方、自己資本も積極的な株主還元(配当及び自己株式の取得)により同2.7%減の10,969百万円に減少したことから、自己資本比率は76.4%(前期末は75.9%)とほぼ横ばいで推移した。
事業別の業績は以下のとおりである。
(1) プロダクトサービス
売上高は前期比4.5%増の4,420百万円、セグメント利益は同5.8%増の1,254百万円と順調に拡大した。メインフレーム事業はキャッシュレス決済の増加に伴う金融業界からの受注増により堅調に推移した。自動化事業ではオンプレミス製品をクラウド化へと移行する需要の取り込みが奏功したほか、帳票事業では帳票の電子化ニーズを背景として大型案件の受注を獲得した。特に、帳票業務の法改正による電子化ニーズを捉えた「まるっと帳票サービス」については、「ユニリタクラウドサービス」との連携により新たな市場を開拓し、受注獲得につなげることができた。損益面でも、増収による収益の押し上げにより増益を確保し、セグメント利益率も28.4%(前期は28.0%)と高水準を維持している。
(2) クラウドサービス
売上高は前期比2.5%増の2,958百万円、セグメント損失は365百万円(前期は229百万円の損失)と増収ながら先行投資により損失幅が拡大した。IT活用クラウド事業では、DX化の流れやリモートワークの普及が進むなかで、「LMIS」「Digital Workforce」「Waha! Transformer」などの主力サービスが順調に拡大傾向にある※。また、事業推進クラウド事業では、「DigiSheet」や「Staff-V」などの人材派遣や人事管理向けのサービスが堅調に推移した一方、新たな市場を開拓中の「Growwwing」や「Smart×Portal」などのサービス群は見込み案件が増えてきたものの、未だ先行投資の段階にあるようだ。ソーシャルクラウド事業では、バス事業者向け位置情報サービスがコロナ禍の影響を受けて伸び悩んだ。損益面では、主に事業推進クラウド事業へのプロモーションやセールス、サービス開発に係る外注費など、先行投資を積極投入したことから減益となり、損失幅は拡大した。
※過去3年間の年平均成長率(CAGR)で見ると、「LMIS」が11.4%、「Digital Workforce」が20.1%、「Waha! Transformer」が4.1%と右肩上がりに伸びている。
(3) プロフェッショナルサービス
売上高は前期比4.0%増の3,062百万円、セグメント利益は同22.9%減の84百万円と増収ながら減益となった。コンサルティング事業は、DX推進の拡がりを背景として、データマネジメント領域とサービスマネジメント領域の案件が増加し堅調に推移した。また、システムインテグレーション事業では一括請負型の新規案件を受注したほか、DXニーズに対応するため、グループ力を結集したワンストップ型サービスの提供により新規案件も増加した。損益面では、連結子会社における退職金制度変更の影響などにより減益となった。
2. 2022年3月期の総括
以上から、2022年3月期を総括すると、「プロダクトサービス」や「クラウドサービス」における主力サービスが順調に伸びたところはポジティブに評価できる一方、コロナ禍の長期化などに伴い、注力する事業推進クラウド事業やソーシャルクラウド事業に進捗の遅れが見られるところや、先行投資の拡大等により利益面では計画を下回る減益となったところはネガティブな材料と言え、プラス・マイナス両面からの評価が必要である。一方、活動面に目を向けると、パートナー企業との協業やグループ機能の再編など、今後の事業拡大に向けた体制構築に注力した点においては、進捗の遅れを取り戻す意味でも注目すべき取り組みと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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