アジア投資 Research Memo(1):2022年3月期上期は計画下回るも、通期は期初見込値を据え置き増益を見込む
1. 会社概要
日本アジア投資<8518>は、日本とアジアにまたがる独立系の総合投資会社として、プライベートエクイティ投資(以下、PE投資)や再生可能エネルギー等のプロジェクト投資を手掛けている。1981年に(公社)経済同友会を母体として設立され、豊富な投資経験とブランド、ネットワーク、人材、事業パートナーなどの事業基盤に強みがある。革新的な技術やビジネスモデルを持ち、高い成長力を有するベンチャー企業及び中堅・中小企業等への投資や成長支援を通じて、日本とアジアの両地域における産業活性化や経済連携の拡大などに貢献をしてきた。同社グループが管理運用等を行っているファンド運用残高は15,884百万円(10ファンド)、同社グループの自己資金及び運用ファンドによる投融資残高は14,741百万円となっている(2021年9月末現在)。PE投資については、VC業界を取り巻く環境が変化するなかで、新たなファンド設立に苦戦しており、投資残高も減少傾向にある。ただ、ここ数年はプロジェクト投資に積極的に取り組み、パートナー企業への戦略投資(PE投資)でも成果をあげている。
2. 2022年3月期上期の業績
2022年3月期上期の業績(ファンド連結基準※)は、営業収益が前年同期比19.0%減の1,018百万円、営業損失が413百万円となった。
※同社は2007年3月期より、「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」を適用し、同社グループが管理運用する投資事業組合等を連結範囲に加えるファンド連結基準に移行している。ただ、ファンド連結基準は同社以外の外部出資者の持分が含まれていることやファンドごとの財務方針が反映されるところに注意する必要がある。同社では、投資家からの要望に応じて従来連結基準も同時に開示しているが、弊社でも、より実態を示しているとの判断から従来連結基準による分析を行っている。
従来連結基準では、営業収益が前年同期比29.6%減の381百万円、営業損失が496百万円(前年同期は316百万円)と減収となり、損失幅が拡大した。また、期初見込値に対しても、営業収益、利益ともに下回る進捗となっている。営業収益は、上場株式の売却が減少したことや、前期におけるメガソーラープロジェクト売却に伴う売電収入の減少により減収となったが、その点は想定内。期初見込値を下回ったのは、予定していた未上場株式の売却が来期以降にずれ込んだことが理由である。また、損益面についても、株式売却益の減少に加え、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)等に伴い業況が悪化した投資先企業への評価損・引当金の計上により減益となり、他社が運営するPE投資で損失が発生したことなどから見込値を下回った。一方、活動面については、「プロジェクト投資」の積み上げや投資後の事業としての進捗、プロジェクトを通じた戦略投資先の成長支援(ハンズオン)などにおいて、一定の成果をあげることができた。
3. 2022年3月期の業績見通し
同社は、業績予想(ファンド連結基準)について、株式市場等の変動要因による影響が極めて大きく、合理的な業績予想が困難である事業特性であることから公表を行っていない。ただ、2022年3月期については、ある一定の前提をもとに策定した「従来連結基準による見込値」を参考情報として開示している。
同社の「従来連結基準による見込値」によれば、2022年3月期については期初見込値を据え置き、営業収益を前期比4.5%減の2,950百万円、営業利益を同137.8%増の510百万円と減収ながら大幅な営業増益を見込んでいる。なお、上期実績が見込値を下回ったにもかかわらず、通期の見込値を据え置いたのは、下期において予定していなかった国内投資先の新規上場により、株式売却益が増加する見込みとなったことが理由である。一方、「プロジェクト投資」については、期初の計画どおり、下期でのプロジェクトの売却を見込んでいる。
4. 今後の方向性(新中期経営計画の概要)
同社は、今期より新たな中期経営計画(3ヶ年)をスタートした。投資活動のコアバリューを「ベンチャー投資と特色有るアジアのネットワークを活用した日本とアジアの未来に貢献するSDGs投資」と位置付け、今後、少子高齢化とポストコロナの日本の未来社会で生み出されるイノベーションから創出される事業を見出し、投資活動を通じて成長を支援する方針である。もっとも、基本的な投資方針に大きな変更はなく、戦略投資とプロジェクト投資によりバランスシートの早期改善と安定した収益の造成を図るとともに、ベンチャー投資により高い収益性の確保を目指す内容となっている。最終年度となる2024年3月期にはフィー収益(約2.5億円)とプロジェクトの収益(約9億円)で管理コストを賄うとともに、変動の大きな「PE投資」の収益により超過利益(アップサイド)を狙うシナリオであり、営業総利益で22億円、最終利益で8.5億円を計画している。
■Key Points
・2022年3月期上期の業績(従来連結基準)は株式売却の期ずれ等により期初見込値を下回る進捗
・一方、「プロジェクト投資」の進捗では一定の成果
・2022年3月期の通期業績(従来連結基準)については期初見込値を据え置き、下期での投資先企業の株式上場に伴う株式売却益の増加等により大幅な増益を見込む
・新たに中期経営計画(3ヶ年)をスタート。前中計の投資方針をさらに推し進めるとともに、SDGsを強く意識した投資活動に取り組む方向性
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<NB>
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