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岡本硝子---ポストコロナで活きる「ガラス職人」の技


「21世紀はガラスの時代」と語るのは岡本硝子<7746>の岡本 毅(おかもと つよし)会長だ。「光源が白熱灯から蛍光灯、さらにはLEDと熱が出ないものに変るのに従い、カバーや配光レンズの材質はガラスから樹脂へと移りました。しかし、LED光源も今以上に輝度を増すのであれば熱が上がってきますし、ポスト・LEDのレーザーでは、そのエネルギーで分子構造が変わってしまう樹脂に代わって、耐熱性があり寿命が長いガラス素材への回帰が進みます」

特殊ガラスと薄膜で「光の時代」をリードする、を経営理念に掲げる同社の創業は1928年。変化する時代のニーズに応え92年間生き残ってきた。身近なところでは歯医者で使われるデンタルライトの反射鏡で、同社の世界シェアは約72%(同社推計)でNo.1である。プロジェクター向けの反射鏡やマルチレンズのシェアも世界シェアNo.1(それぞれ86.4%と61.2%)である。

転機は5年前、ドイツの高級自動車メーカーのLED光源ヘッドアップディスプレイ(以下「HUD」)に同社のガラス製レンズの採用が決まったことだ。HUDとは、車のフロントウインドウにナビゲーションや速度情報などが表示されるもの。このHUDに同社のレンズが使われるようになったのだ。コネクテッドカーや自動運転の進展とともに、HUDのAR化が進み、それに伴い部品のガラス回帰の傾向はますます強まると岡本会長は予想する。「今後、少なくとも四半世紀はこの流れが続くと思います」

同社は、現在、製品の100%を国内で生産しており、本社のある千葉県柏市と新潟県柏崎市の3拠点で全体の9割以上を生産している。岡本会長によれば、同社の強みは「職人技」だ。ガラスの主な原材料は砂だが、特殊ガラスにはこれに10種類以上の副原料が加わる。その組み合わせは無限であり、最適な調合を見つけるには多大な労力がかかる。また、それらが1200度という高温化でどのようなメカニズムで透明になるのか、耐熱性が増すのか、科学的にはまだ解明されていない。大手企業がスーパーコンピュータを使っても新しい組成を生み出すのは非常に難しいという。様々な特性を生み出す調合表を数多く持っているのが同社の強みだ。
また、ガラスを精密に成型する技術でも同社は世界をリードする。金型とガラスの温度制御や、成型後の製品の変形を予測することが重要だ。ガラスは金型から取り出した後、冷ましていく過程で萎んでいくが、冷めたときに設計図通りの大きさにする必要がある。この補正には過去の経験がものをいう。加えて、最近の主力事業である、製品にナノメートル単位で数十層の薄膜を均一に(あるいはわざと不均一に)制御して膜をつける技術は、職人技の部分もあり他社が簡単にまねできるものではない。

同社は4月に「With コロナの事業戦略」としてUV-Cを利用した新型コロナウイルス菌の不活性化システム向けUV膜(深紫外線高反射膜)を開発した。本製品は250~450nmの深紫外線を効率よく拡散反射させる厚膜である。新型コロナウイルス菌などの不活性化に効果的とされる250~280nm付近の反射率が高く、物質の表面、水、空気等の殺菌・減菌システムに用いられる。インクとしての販売や基板などの支給品への塗布で展開していく予定だ。今後のポストコロナ、ニューノーマルと呼ばれる環境下でも、世界屈指の「職人の技」で新製品を開発していこうとする同社の動きから目が離せない。




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