アドクリ Research Memo(8):ASP事業の急成長を見込み、BPO事業もスタートし、成長ステージに入る可能性
2. 事業セグメント別見通し
(1) 保険代理店事業
保険代理店事業は1ケタ台の増収増益となる見通し。2019年10月の申込みANPが対面販売を中心に前年同月比13%減と2ヶ月連続でマイナスとなるなど低調なものの、期後半以降の回復を見込んでいる。販売チャネル別申込みANPでは、対面販売が10%増、通信販売が横ばい、協業店が2ケタ増となる見通しだ。引き続きSNSやチャットボット等の活用、「保険市場」のユーザビリティ向上に取り組み、資料請求・アポイント件数を増やすことで販売件数を増やしていく戦略だ。また、直営店の増床についても1店舗(横浜)予定している。プロモーションコストやIT開発費等は継続して投下していくため、利益率は前期比で低下する見込みとなっている。なお、かんぽ生命保険<7181>による保険商品の不適切販売が2019年9月に発覚して以降、どのような影響が出るか注目されたが、「保険市場」へのアクセス件数や資料請求件数は増加したようで、マイナスの影響はないようだ。
(2) ASP事業・BPO事業
前期は実質販売期間が4ヶ月間だったが、今期はフルで寄与するため契約件数の更なる拡大が見込まれる。サービスは「御用聞き」「丁稚」に加えて、2020年1月より契約照会システム「番頭」をリリースする予定となっている。
「番頭」は共通プラットフォーム「ACP」上で、保険会社ごとの顧客の契約申込みの進捗状況を見やすく表示するシステムとなる。確認できる顧客情報の範囲については連携する保険会社の判断で決まるため、現在は同社が数社の保険会社とその内容について協議を行っている段階にある。既に「丁稚」を利用している代理店にとっては「番頭」も同時に使うことで、業務効率が一段と向上するため契約率も高くなり、1ID当たり平均売上単価の上昇が見込まれる。追加料金としては月額数百円程度となる。
同社では顧客の保全システムの外販についても予定しており、これら新機能を追加していくことで「ACP」の価値を高め、顧客件数の拡大と平均売上単価をアップしていく戦略だ。同システムを利用する保険募集人の数は、同社の提携代理店だけで約5.6万人、乗合代理店全体で数十万人規模になるだけに、成長ポテンシャルは大きいと言えるだろう。
そのほか、同社が直営店の顧客向けに提供している無料サービスである保険証券管理アプリ「folder」のOEM販売も開始する予定となっている。「folder」保険証券をスマートフォンで撮影してクラウド上に保存・管理できるアプリで、契約データを紐付けることで、契約先保険会社との連絡先が連携されるほか、家族同士の共有も可能となっている。旅行先でトラブルがあった際や、災害などで保険証券が紛失した際に、「folder」で管理していれば保険金の請求手続きなどもスムーズに行うことができる。顧客サービスの向上と囲い込みにつながるツールとして、他の保険代理店でもニーズがあると見ており、2019年末までにβ版をリリースし、引き合い状況を見ながら本サービスに移行していく予定となっている。なお、2019年10月時点で同社顧客のダウンロード数は13,594件、保険証券登録数は9,879件となっており、毎月千件強のペースで増加している。
また、同社は新たにBPO事業も開始する。具体的には、DCコンタクトセンター業務で蓄積してきたノウハウを生かして、保険会社や保険代理店から保全業務の受注を獲得していく。保全業務の1つである保険料の未払い契約者に対する督促業務については通常、電話やDMなどで契約者に通知するが、反応率が極めて低く業界共通の課題となっている。こうした分野において、同社はプロモーション施策で培ってきたSNSやSMSを使ったアプローチ手法を取り入れながら、費用対効果を向上するサービスを提供する。また、契約者への満足度調査等のアンケートや住所変更手続き等も行っていく。受注形態は請負または派遣となり、管理証券数に応じて受注額も変動する格好となる。人手不足が深刻化するなかで、保全業務に関するアウトソーシングの潜在需要は大きいと見られる。同社では今後、状況を見ながら受注先を開拓していく予定にしており、早ければ2020年9月期、遅くとも2021年9月期にはBPO事業も独立した事業セグメントとして開示していく方向で考えている。なお、「folder」やBPO事業については2020年9月期の業績計画には織り込んでいない。
(2) メディア事業
メディア事業については、2020年9月期も好調に推移する見通しで、2ケタ増収増益を見込んでいる。保険選びサイト「保険市場」の広告収入は、広告枠の単価上昇や広告枠のバリュエーションを増やすなどしており、引き続き増収が見込めるほか、保険会社からの広告運用の引き合いも引き続き旺盛で高成長が続く見通しだ。
(3) 再保険事業
再保険事業についても1ケタ台の増収増益が見込まれる。既存顧客からの再保険契約の積み上げに加えて、新たに生命保険会社1社と契約できる可能性がある。既に、同社が販売する生命保険商品の再保険カバー率は9割近くに達しており、今後は販売保険額と連動した売上成長が見込まれる。営業利益については保険金支払い損害率の動向次第となるため流動的ではあるものの、基本的には増益基調が続く見通しだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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