アジア投資 Research Memo(5):上期業績は大型プロジェクト売却の反動で減収減益も、おおむね想定どおり
3. 2019年3月期上期決算の概要
日本アジア投資<8518>の2019年3月期上期の業績(ファンド連結基準)は、営業収益が前年同期比76.5%減の1,189百万円、営業損失が390百万円(前年同期は582百万円の利益)、経常損失が481百万円(同446百万円の利益)、親会社株主に帰属する四半期純損失が535百万円(同560百万円の利益)と、前年同期における大型プロジェクト売却の反動により減収減益となり、営業損失を計上した。
従来連結基準でも、営業収益が前年同期比71.9%減の716百万円、営業損失が465百万円(前年同期は714百万円の利益)、経常損失が460百万円(同640百万円の利益)、親会社株主に帰属する四半期純損失が534百万円(同493百万円の利益)と大きく落ち込んだ。ただ、第4四半期に株式売却益が集中する計画となっていることから、当初想定どおりの進捗となっていることに注意が必要である。
従来連結基準による業績の概要は以下のとおりである。
営業収益が大幅な減収となったのは、前年同期における大型プロジェクト(メガソーラープロジェクト)の売却や補助金収入の反動※1によるものである。一方、PE投資事業については投資先企業の新規上場や大型案件の売却はなかったものの、他社運営ファンドの持分利益の発生により増収※2を確保。また、営業収益のうち安定収益※3は、建設中のプロジェクト案件の費用を売電収益で補いながら前期並みを維持しており、販管費に占める割合も42.0%(前年同期は37.5%)に高まったところは財務的な改善の1つとして評価できる。
※1 前年同期は大型案件を含む4件(36.0MW)のプロジェクトを売却。一方、2019年3月期上期は小型案件1件(1.2MW)の売却にとどまった。その結果、プロジェクト投資事業による営業収益は前年同期比93.7%減の133百万円と大きく減少した。
※2 PE投資事業による営業収益は前年同期比37.3%増の582百万円と増加した。
※3 管理報酬、プロジェクト投資による持分損益のうち売却益や補助金収入以外の収益(売電収益など)、プライベートエクイティ投資の利息・配当収入の合計額。
また、営業総利益が前年同期比94.1%減の78百万円と大きく落ち込んだのも、前述したプロジェクト売却益のはく落による影響が大きかった。また、PE投資事業についても、海外投資先に対する評価損・引当金※が利益を圧迫する要因となった。
※海外投資先の回収見込み額低下に伴い、「営業投資有価証券評価損・投資損失引当金繰入額」(営業原価に含まれる)として420百万円(前年同期は317百万円)を計上した。
一方、販管費については前年同期比10.2%減の543百万円に削減。ただ、前述のとおり、営業総利益の落ち込みが大きかったことから営業損失を計上するに至った。
財務面(従来連結基準)では、自己資本が親会社株主に帰属する四半期純損失の計上により前期末比8.5%減の5,986百万円に縮小。一方、総資産についても、プロジェクト投資の拡大に伴って「営業投資有価証券」が増加したものの、それ以上に「現金及び預金」の減少が大きかったことから同11.9%減の16,941百万円に縮小し、その結果、自己資本比率は35.3%(前期末は34.1%)とわずかに改善した。また、有利子負債(借入金)残高も同13.9%減の10,288百万円に減少しており、プロジェクト投資を拡大しながら有利子負債の削減を図っているところは財務的な改善の2つ目として評価すべきポイントと言える。
業務別の業績は以下のとおりである。
(1) 投資事業組合等管理業務
同社グループが管理運用等を行っているファンドの運用残高は前期末比9.5%減の17,329百万円に縮小した。2017年6月26日に設立した事業承継型バイアウトファンド※への追加出資(600百万円)を受け入れたものの、海外で運用を他社に引き継いだファンドや減額したファンドによる減少分をカバーしきれなかった。ファンド数も新設がなかった一方、他社への引き継ぎ1件により前期末比1件減の11ファンドとなっている。また、当該業務にかかる損益(運用報酬)についても、運用残高の縮小に伴い前年同期比4.0%減の129百万円に減少した。
※サクセッション1号投資事業有限責任組合。同社とあおぞら銀行が50%ずつ出資する合弁会社にて運用。
(2) 投資業務
同社グループの自己勘定及び同社グループが管理運営等を行っているファンドからの投資実行額は、前年同期比32.6%減の1,459百万円(7件)と減少した。そのうち、再生可能エネルギープロジェクトへの投資実行額は1,353百万円(5件)と大部分を占めている。また、投資残高も「プロジェクト投資」が増加した一方、「PE投資」の減少分をカバーしきれずに前期末比3.5%減の13,485百万円に縮小した。
投資業務における損益(営業総利益ベース)については、PE投資事業及びプロジェクト投資事業の両方が減少した。特に、プロジェクト投資事業については、前述のとおり、前年同期における大型プロジェクト売却の反動により、営業総利益が前年同期比91.0%減の117百万円に大きく減少。また、PE投資事業についても、他社運用ファンドの持分利益(261百万円)の発生が上振れ要因となったものの、海外投資先に対する評価損(420百万円)の計上により、上記(1)の管理運営報酬等(128百万円)を足し合わせても営業総損失39百万円(前年同期は15百万円の利益)を計上するに至った。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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