城南進研 Research Memo(6):中期経営計画2年目の2019年3月期は、収益構造改革を一気に加速へ
1. 新中期経営計画の概要と進捗状況
城南進学研究社<4720>は現在、2018年3月期−2020年3月期の3ヶ年中期経営計画に取り組んでいる。“総合教育ソリューション企業として激変する社会環境に対応し、一生を通じた一人ひとりの主体的な学びを支援する”ことと、“ステークホルダーとともに企業価値の最大化を追求し、民間教育をけん引する存在となる”ことをビジョンとして掲げ、1)大学入試制度改革への対応とソリューション事業の強化、2)少子高齢化の進行を見越した収益構造改革、3)顧客ロイヤルティの向上によるLTVの最大化、の3点を基本戦略・計画骨子としている(中期経営計画の詳細説明は2018年1月22日付レポートを参照)。
中期経営計画初年度の2018年3月期の業績は、期初予想、すなわち中期経営計画の業績計画を下回っての着地となった。同社は2018年3月期において、中期経営得計画の計画骨子に沿って、各種施策を着実に実行した。これら一連の施策で費用増が発生した一方、売上高が計画に届かなかったため、利益が圧迫されたというのが2018年3月期の基本的な構図だ。
2018年3月期の各種施策に目を移すと、計画骨子2の、“少子高齢化の進行を見越した収益構造改革”の内容が注目される。特に事業ポートフォリオの改善と、シナジー効果追求の部分だ。これらの施策は、2018年3月期においても一部は実行されたが、本格的な実施は2019年3月期以降となる。後述するように、同社は2019年3月期の業績について、営業利益以下の各利益項目を赤字予想としているが、その主因はここにある。
予備校の統合・閉鎖、新業態「城南予備校DUO」の拡大、マナビスの拡大、の3施策を一体で推進し収益構造を一気に転換へ
2. 予備校事業モデルの構造改革
事業ポートフォリオの改善というテーマにあっては、かつての同社の基幹事業であった予備校をどうするかが最大の課題となっていた。言うまでもなく、少子化と大学入試の変化背景にある。同社はこの点について手をこまねいていたわけではなく、校舎の整理統合を進めて2017年3月期末には9校舎まで体制をスリム化した。しかしながら、2018年3月期はトップライングロースがない状況では経営効率化だけでは限界があることを改めて思い知る1年となった。
こうした状況を受けて、同社は予備校事業の抜本的かつ大胆な改革に踏み切ることを決断した。単に予備校を閉鎖するのではなく、大学受験生を対象とする他の教育サービスも交えて、総合的に事業モデルを組み替えることが特徴だ。総合教育ソリューション企業として、大学入試市場に多様なサービスを提供している同社ならではの施策と言える。
具体的には、1)予備校の統合・閉鎖の推進、2)個別指導と予備校の2つを合わせた新業態「城南予備校DUO」の拡大、3)河合塾マナビス事業の拡大、の3つが施策の柱となっている。これら3施策は、城南予備校DUOやマナビスが予備校の生徒の受け皿となるという意味で、密接につながっている。
(1) 予備校の統合・閉鎖
予備校は現在の9校舎体制から大きく数を減少させることになるとみられる。閉鎖する校舎数やスケジュールなどの具体的なところは明らかにされていない。既存の入学者への影響などを考慮してのことと考えられる。
予備校の統合閉鎖と表裏一体の関係にある城南予備校DUOやマナビスの拡大が先に来るのではないかと弊社では推測している。後述するように、これらの拡大領域の作業は予想以上に早いタイミングで行われる可能性がある。そうだとすれば、予備校の統合・閉鎖もまた迅速に(例えば2019年3月期中に)行われる可能性がある。
予備校の統合・閉鎖に伴う固定資産の減損処理、あるいは資産売却に伴う特別利益の計上などは、2018年3月期までに前倒しで実施されており、2019年3月期以降の決算では大きなものは発生しないもようだ(この点も、同社が予備校の統合・閉鎖を従前より周到に準備検討を進めてきたことを示唆していると言える)。2018年3月期のキャッシュ・フロー計算書を見ると、同社は有形固定資産の売却収入706百万円を計上しており、こうした結果として期末の現金及び同等物の残高は1,874百万円にまで積み上がっている。事業再編のための資金的裏付けは充分とみられる。
(2) 城南予備校DUOの拡大
同社が個別指導については強化していく方針であることは前述のとおりだ。これに加えて、個別指導と(一定水準のカリキュラムを能動的に生徒に提供する)予備校の長所を組み合わせた新業態である城南予備校DUOを拡大していく方針だ。
DUOの成り立ちからもわかるように、DUOは既存の個別指導の教室(直営)においてDUOの特徴である予備校型メニューを追加するという形が取られる。これによって、開校にかかる設備投資額や費用を抑制できる見通しだ。同社は個別指導・直営部門において、2019年3月期に7教室の移転拡大を計画しているが、これらはDUO併設を前提としたものと弊社ではみている。
同社は2018年2月に、新百合ヶ丘校と三軒茶屋校の2校を開校した。これまでに受講者からポジティブな評価を獲得しており、今後の事業拡大に十分な手応えを感じているもようだ。ここに前述の7教室が加わることで、2019年3月期は9校~10校の体制で走るものと弊社では推測している。
予備校からDUOへの移行は、予備校というハコビジネスのダウンサイジングの流れであり、コンピュータの世界におけるメインフレームからPCへの移行と重なる。また、消費者の視点からは、ターミナル駅に立地する予備校まで通うニーズは減退し、学校もしくは自宅の近隣、あるいは通学路線上に立地する塾に通うニーズが高まっている。こうした点から弊社では、DUOは予備校からの“正常進化”業態と言え、成功を収める可能性は十分あるとみている。
最終的にDUOの校舎数をどこまで拡大する計画かは明らかにされていない。DUOの特長は、予備校と同じように一定水準のカリキュラムの提供と個別指導の融合にある。このカリキュラムの提供が予備校からの人材が行う形であるならば校舎数は限定される可能性がある。一方、それをICTの活用で対応できるのであれば大きく校舎数を拡大することが可能だと弊社ではみている。今後の展開に注目したいと考えている。
(3) 河合塾マナビス事業の拡大
同社は、2020年までに河合塾マナビスの校舎数を倍増させる計画だ。計画策定時点の校舎数が16校だったことからすると、2018年~2020年の3年間で16校舎を新規開校するということになり、かなり意欲的、挑戦的な目標だと言える。
前述のように、マナビスは生徒や保護者の支持を集めて順調に拡大している。同社はFCオーナーとして第2位グループにあるが、倍増計画が達成されれば、明確に第2位のメガフランチャイジーとしてのポジションを確立することになる。
同社の資金力やこれまでの運営実績から、同社の校舎倍増計画自体には懸念していない。ポイントは、現在と同様の高効率経営が可能となる立地を確保できるかどうかだと考えている。前述のように同社がマナビスで成功を収めている要因は首都圏での地域ドミナント出店だ。この延長上で店舗拡大を実現できれば、同社の収益構造改善に大きな寄与が期待できると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<SF>
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