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ヨシムラフード Research Memo(6):M&Aの拡大を通じて中長期成長につながる飛躍を期待


■中期経営計画

1. 中期成長イメージ
特に中期経営計画はないが、ヨシムラ・フード・ホールディングス<2884>は企業価値を高めるための目標として、経常利益率5%、自己資本当期純利益率(ROE)15%を掲げている。

中小企業のM&Aなどを仲介する、公的相談窓口の事業引継ぎ支援センターの成約実績が、2012年度から2017年度上期までの累計で1,000件を突破、特に2017年度上半期は前年同期比で1.5倍を超えるペースに加速したとの報道もある(日本経済新聞2017年10月30日朝刊)。このような好環境下で、同社は資金調達力など上場会社としてのメリットを生かし、中小食品企業のM&Aをさらに推進する意向である。また、グループ企業の増加に伴ってシナジーを拡大するには、「中小企業支援プラットフォーム」の更なる強化も考えている。中期的にも同社は、販路の共有化や営業の管理・支援、新たな販売チャネルの開拓などによって売上げを拡大し、仕入れのスケールメリットや製造拠点や管理業務の集約によって利益率を上げていく方針である。

なかでも中期成長のために同社が足元ですべきことは、人材を強化することである。ただし、M&Aについては、現在の体制でも年間6社程度のM&Aは可能という考えである。一方、プラットフォーム関連のマンパワーについては、物流や品質管理についてはまだ猶予はあるものの、商品開発面ではすぐにでも支援したいところだろう。というのも、子会社各社は中小食品企業であるがゆえに、製造技術はあっても新しい商品を開発する力が足りないからである。また、事業領域の拡大策の1つとして海外への進出を果たしており、高付加価値商品など海外向けの商品開発力のある人材は必要ということになるだろう。

同社は自らの成長ステージを、拡大ステージにあると考えている。案件が日々増えているからである。しかも、従来は再生案件が多かったが、黒字企業が多いとされる事業承継案件が急速に増えている。今後は、中小企業経営者の平均引退年齢と言われる70歳を超えつつある団塊世代の引退や、銀行の私的整理ニーズに伴う案件も増えることが予想される。海外のように、純粋な企業売買も増えるだろう。課題はマンパワーとしながらも、同社のM&Aポテンシャルは年に6社である。それでも、現在の同社にとっては大きな成長要因となりうる。2019年2月期は、M&Aの拡大を通じて、中長期成長につながる飛躍を期待したい。

リスクも仕組みで解消可能
2. リスクと課題
同社に特徴的なリスクは、食品の安全性、競合、季節変動、M&Aに関するものである。食品の安全性については、基本事項と位置付け、「中小企業支援プラットフォーム」の仕組みの中で品質管理の事業統括担当を置き、グループのベストプラクティスを横展開、子会社各社の品質管理能力を高めている。競合について、同社ビジネスモデルに対する競合はほとんどないと言えるが、子会社各社は大手~中小食品企業と常に競合している。大手食品企業のスケールメリット、中小食品企業の独自性に対し、同社は独自性と子会社各社の相互補完によって対抗している。季節変動については、同社グループでは冬季(10月〜12月)に販売のピークを迎える製商品が多く、売上高で3割前後、営業利益で4割前後と冬季の構成比が高くなっている。このため、ほかの季節にピークが来る商品の開発なども進めている。

2018年2月期で明らかになったリスクは、原価や人件費、物流費などの急激なコストアップと、M&A一時費用の額と時期のボラティリティである。前者は、子会社の中でも生き残り組は値上げで対応可能だが、競合激化組は個社による生産性改善に加え「中小企業支援プラットフォーム」を利用できる優位性がある。後者については、額は投資基準を厳格に適用すればよい。時期は、コンスタントに発生するようになれば予測可能になるし、母体としての同社の規模が拡大すれば吸収できるようになる。いずれにしろ、2018年2月期のリスクはコントロール可能と考えられる。なお、デューデリジェンス時に把握できなかったり、顕在化していなかったりするリスクについては、事業統括担当自身がM&A前後のデューデリジェンスと事業支援に直接関わることで大きく減じることができると考えられる。


■株主還元策
同社は、株主に対する利益還元を重要な経営課題の1つと位置付けているが、一方で、現在は成長過程にあるという認識から、資金をM&Aや積極的な事業展開、プラットフォーム拡充による経営基盤の強化のための投資に充当することが、株主に対する最大の利益還元につながると考えている。このため、設立以来配当は実施しておらず、今後も当面の間、資金は事業拡大のための投資や既存事業の必要運転資金とする方針である。しかしながら、将来的には、各事業年度の経営成績及び財政状態を勘案しながら、株主への利益還元も検討していく考えである。


■情報セキュリティ
同社はM&Aに関する情報を扱っている。M&Aに関する情報は多くの場合インサイダー情報であり、制度的に極めて厳格に取り扱われることが求められる。M&Aを主力事業とする同社がそうした情報を、故意、無意識に関わらず、漏洩または悪用した場合、法令違反となる可能性があるほか、上場企業としての信用も失墜、自ら成長の種を潰してしまいかねないことになる。これに対し同社は、法令にのっとりM&A情報を厳密に取り扱うとともに、M&A情報に接する人員を最低人数に限ることで、リスクを極力排除するように努めている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)



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