ビューティ花壇 Research Memo(4):単価下落の影響のほか、将来に向けた抜本的な物流改革により業績は踊り場
1. 過去の業績推移
過去6期分(2012年6月期−2017年6月期)の業績を振り返ると、2014年6月期までは、主力の「生花祭壇事業」が伸び悩みを見せるなかで、「生花卸売事業」や「ブライダル装花事業」の伸長、M&Aにより参入した新規事業(土木・建設事業、その他の事業)により、事業規模を拡大してきた。ただ、2016年6月期以降は、「土木・建設事業」からの撤退の影響や単価下落の進展のほか、将来に向けた抜本的な物流改革等により業績は2期連続で踊り場となった。
一方、営業利益率は、「生花祭壇事業」における単価下落や円安による仕入原価の高騰などを受けて低下傾向をたどってきた。特に、2014年6月期は単価下落が想定以上に急速なペースで進んだことから営業利益率は大きく低下した。2016年7月期には、労務費の圧縮や原価低減の取り組みにより一旦は改善に向かったものの、2017年6月期は「生花祭壇事業」が大きく改善した一方、「生花卸売事業」の落ち込みにより、全体では低水準に逆戻りした。
なお、過去6期におけるM&Aの実績は、2012年2月の昇建設(土木・建設事業)、2012年4月のSHF(その他の事業)、2012年6月のビンク(その他の事業)、2013年4月の花時(生花祭壇及び生花卸売事業)、2013年10月のマイ・サクセス(生花卸売事業)、2015年6月のキャリアライフサポート(その他の事業)が挙げられる。
一方、資本効率を示す自己資本利益率(ROE)は、利益率の低下に伴って大きく低下した。2015年6月期及び2017年6月期は特別損失の計上等により最終損失に陥ったことからマイナスとなっている。また、財務基盤の安定性を示す自己資本比率も有利子負債残高の増加とともに低下してきたが、足元では徐々に回復傾向にある。同社が「業界のコストリーダー」として事業拡大を実現するためには、収益力の強化とともに財務基盤の増強が課題となるだろう。
一方、当座比率については、2015年6月期末において3期ぶりに100%以上となると、2017年6月期末も流動負債の減少(主に短期借入金の減少)により170.7%と高い水準を確保している。
上期業績は減収ながら大幅な損益改善(黒字転換)を実現。主力の「生花祭壇事業」が好調に推移
2. 2018年6月期上期決算の概要
2018年6月期上期の業績は、売上高が前年同期比5.8%減の2,768百万円、営業利益が20百万円(前年同期は43百万円の損失)、経常利益が23百万円(同53百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純利益は6百万円(同51百万円の損失)と減収ながら大幅な損益改善(黒字転換)を実現した。
主力の「生花祭壇事業」が受注件数の増加等により好調に推移した(半期ベースでは過去最高の売上高を更新)。環境変化を捉えた営業戦略が軌道に乗ってきたと言える。ただ、売上高全体が減収となったのは、物流体系改革の過渡期にある「生花卸売事業」が取引先の見直し等により落ち込んだほか、「ブライダル装花事業」が前期に発生した主要取引先倒産による影響が続いたこと、「その他の事業」も子会社譲渡により縮小したことが理由である。もっとも、これらのマイナス要因は概ね想定内であり、売上高はほぼ計画線での進捗とみられる。
一方、利益面でも「生花祭壇事業」の大幅な損益改善が利益水準全体を押し上げ、営業損失となった前年同期からの黒字転換を実現した。
財務面では、「現金及び預金」や「売掛金」の増加により総資産が前期末比11.8%増の2,785百万円に拡大した一方、自己資本は内部留保により前期末比1.3%増の519百万円と微増であったことから、自己資本比率は18.7%(前期末は20.6%)に低下した。ただ、ネット借入金は596百万円(前期末比13百万円減)に減少し、流動比率も137.4%と高い水準にあるため、当面の財務の安全性に懸念はない。
事業別の業績は以下のとおりである。
(1) 生花祭壇事業
生花祭壇事業は、売上高が前年同期比3.1%増の1,619百万円、セグメント利益が同103.7%増の262百万円と増収及び大幅な損益改善を実現し、売上高は過去最高(半期ベース)を更新した。葬儀業全体の売上単価がやや下落傾向となるなかで、顧客ニーズに沿った営業戦略(小規模化への機動的な対応等)の確実な実行により、受注件数(施行件数)が9,760件(前年同期比2.7%増)と堅調に推移した。特に、関東エリアの受注件数が4,940件(前年同期比3.2%増)と伸びたのは、2017年10月に開設した海老名営業所による寄与(約1ヶ月間)もあったものとみられる。一方、受注単価については57,453円(前年同期比3.7%減)と下落し、そのうち関東エリアにおいては52,796円(同4.8%減)と下落率が大きくなっているが、ほぼ想定内のようだ。
利益面では、増収効果による稼働率の向上に加えて、徹底した原価管理やパート社員の戦力化が奏功したことにより大幅な増益を実現した。また、海老名営業所の開設も関東エリアにおける顧客先へのリードタイム短縮によりコスト削減に結び付いた※。
※年間のコスト削減効果として約20百万円と見込んでいる。
(2) 生花卸売事業
生花卸売事業は、売上高が前年同期比9.4%減の779百万円、セグメント利益が13百万円(前年同期は9百万円の損失)と減収ながら増益(黒字転換)となった。国内流通部門は比較的堅調に推移したものの、物流体系改革の過渡期※にある「生花卸売事業」が取引先の見直し等により縮小した。ただ、国内流通部門における新規顧客獲得や既存顧客の掘り起こしは奏功しており、業績回復への明るい兆しがみられる。また、利益面でも効率化の推進や為替の影響等により、計画を上回る損益改善を実現した。
※フューネラル主要品目の取扱拡大(フューネラルに特化した効率的な少品種大量物流の実現)や、従来からマイ・サクセスが抱えてきた市場出荷販売依存体質から、同社の特徴(強み)とする顧客への直接販売への移行などを進めている。
(3) ブライダル装花事業
ブライダル装花事業は、売上高が前年同期比28.5%減の177百万円、セグメント利益が0百万円(前年同期は32百万円)と減収減益となった。前期における主要取引先の倒産による売上高の逸失に加えて、それに紐付く固定費負担が利益を圧迫した。同社は、前期同水準の売上確保へ向けた施策として、大都市圏(東京・関西エリア・福岡)での新規顧客獲得や既存顧客との関係強化のほか、商圏拡大等に取り組んでいる。ただ、好材料は出始めているものの、業績回復(マイナス分のカバー)に向けてはある程度時間を要する見通しのようだ。また、取引先倒産による影響を最小限に抑えるため、今後は保証金※のない取引を前提とする方針である。
※取引開始(独占契約等)に当たって、取引先から保証金を要求されるケースがあるが、その場合、取引先の倒産により保証金が返還されないリスクを負うことになる。
(4) その他の事業
その他の事業は、売上高が前年同期比25.8%減の192百万円、セグメント損失が30百万円(前年同期は15百万円の損失)と減収減益となり、損失幅が拡大した。前期における子会社株式の譲渡(ビンクの非連結化)が減収減益を招いた。
以上から、上期業績を総括すると、事業再編への取り組み(生花卸売事業)や主要取引先倒産による影響(ブライダル装花事業)、子会社の非連結化(その他の事業)などにより減収(すべて想定内)になったものの、主力の「生花祭壇事業」が着実に伸びているところはプラスに評価できる。特に、大幅な損益改善を実現したところは、同社戦略がうまく機能していることの証左であり、今後に向けても明るい材料と言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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