ラクオリア創薬 Research Memo(5):13つの導出済みプログラムを保有。ヒト領域での初の新薬発売が視野に
1. 導出済みプログラムの概況
同社グループでは、ラクオリア創薬<4579>本体がヒト領域で10のプログラム、動物領域で2つのプログラムを導出しているほか、子会社のテムリック(株)でもヒト領域で1つのプログラムを導出しており、グループ全体では13の導出済みプログラムを保有している。
動物薬の2つのプログラムはいずれも、2017年中に米国において上市され、同社にロイヤルティ収入をもたらしている。両プログラムともに今後は、欧州での犬用及び、米国・欧州における猫用の医薬品発売に向けて注力していくことになる。
ヒト領域においても医薬品の発売が近づきつつある。CJヘルスケアが開発中のカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)は2018年中に製造販売の承認を得て上市される見込みとなっている。また、Meiji Seikaファルマ(株)が開発中の5-HT2A/D2拮抗薬(ジプラシドン)は現時点では2019年承認申請、2020年販売開始の見込みとなっている。
EP4拮抗薬(RQ-7/grapiprant、ヒト領域新規医薬品)は丸石製薬(株)に導出されていたが、2017年11月末にライセンス契約終了が発表された。その一方、2017年12月に選択的ナトリウムチャネル遮断薬についてマルホとの間でライセンス契約が締結された。これはイオンチャネル創薬の領域で同社初のライセンスアウトになり、大きな一歩を踏み出したと言える。
米国では2剤とも2017年に上市。目下は欧州での上市に向けた取り組みが順調に進む
2. EP4拮抗薬(RQ-7/grapiprant、動物薬)及びグレリン受容体作動薬(RQ-5/capromorelin、動物薬)
同社はコンパニオン・アニマルにおける変形性関節症に伴う痛みの治療を適応症とするgrapiprantと、コンパニオン・アニマルにおける食欲の刺激を適応症とするCapromorelinについて、米Aratanaに導出済みだ。Aratanaは2つの化合物について順調に開発を続け、grapiprantについては2016年3月に、Capromorelinについては2016年5月に、それぞれ米FDAから製造販売の承認を得た。これを受けて、AratanaはgrapiprantをGalliprant®の商品名で2017年1月に、CapromorelinをEntyce®の商品名で2017年10月に、それぞれ販売を開始した。
Galliprant®については2017年は約11ヶ月間の販売期間だったが、日本イーライリリー(株)の発表によれば初年度の売上高は2,300万米ドルに達した。市場に好評をもって迎えられ、月を追って順調に売り上げを伸ばしたとみられる。
Entyce®は2017年10月の上市であったため、販売動向についてのデータはまだ十分にはそろっていない状況だ。同社業績への貢献も実質的には2018年12月期からとなる。愛玩動物の食欲不振・体重減少に対しては、これまでヒト用医薬品を愛玩動物に転用することが行われてきた。Entyce®は動物専用に開発された独自性の高い医薬品であるため、市場からの期待は高いとみられている。
一方、今後の開発のターゲットは欧州に移る。Galliprant®については欧州においても承認申請が既に成されていたが、2018年1月に欧州当局から製造販売承認を取得した。今後は、2018年中の販売開始に向けて準備が進められることになる。同社の業績に対しては欧州販売開始に伴うマイルストンと、販売開始後はロイヤルティが入ることになる。
Entyce®の欧州市場戦略については、現在承認申請の準備中で、2018年の承認申請が予定されている。予定どおりに進めば、通常の審査機関等を考慮すると2019年中の販売開始が見込まれる。
これら動物薬のピーク時の年間売上高について、弊社では総額200億円規模の売上高に達する可能性があるという見方を示してきたが、この見方に変更はない。Aratana社内では日本円で25億円~80億円(1つの薬剤についての米国市場での売上高)と幅を持って見られているが、Galliprant®、Entyce®それぞれ年商50億円というのが現実的な目標値とみられているもようだ。日本イーライリリーのリリースによれば、Galliprant®の2017年12月期の売上高は2,300万ドルに達した。初年度はゼロから月を追って売上高を拡大したが2年目は年初から一定の売上高でスタートとなるため、前期比倍増の4,000万ドル~5,000ドルが十分視野に入ると弊社ではみている。欧州市場については、犬種が中型犬から大型犬が中心で、大型犬中心の米国市場に比較すると平均サイズが若干小さいという調査結果もある。しかし、小型犬が多い日本などに比べれば、欧州市場はより米国市場に近いと考えられ、市場規模は米国に匹敵するとみられる。欧州が軌道に乗った場合には、2剤2地域で、それぞれ50億円の年商が期待されるというのが冒頭の総額200億円の内訳となる。
ヒト領域の初の新薬としてP-CABが2018年に上市される見込み。中国でも開発が進む
3. カリウムイオン競合型アシッドブロッカー/P-CAB(RQ-4/tegoprazan)
カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(Potassium-Competitive Acid Blocker、P-CABと略)/(RQ-4/tegoprazan)は胃食道逆流症を主たる適応症とするもので、同社のP-CABは一般名をtegoprazanと言う。同社はP-CABを韓国CJヘルスケアに導出済みだ。対象地域は、従来は韓国・台湾・中国及び東南アジア地域だったが、2017年12月に中南米、東欧及び中東にも拡大した(日・米・欧についての導出はまだ済んでおらず、その点では導出候補プログラムでもある)。
P-CABは既存の主流であるプロトンポンプ阻害薬(Proton Pump Inhibitor、PPIと略。代表的なものに、第一三共<4568>の『ネキシウム®』、武田薬品工業<4502>(以下、武田)の『タケプロン®』など)の置き換えを狙う次世代新薬として期待されている。P-CABの開発においては、武田がトップランナーで、『タケキャブ®』を2015年2月に発売済みだ。同社はそれに続くポジションにある。
CJヘルスケアは韓国において2015年5月に開始したP-III臨床試験を順調に完了し、2017年8月に承認申請を行った。今後は、2018年中に製造販売承認を取得し、上市を目指すことになる。同社の業績に対しては、販売承認及び販売開始に伴うマイルストンと、販売開始後はロイヤルティが入ることになる。タイミングが早くて今年後半であるため、ロイヤルティについては実質的には2019年12月期からの貢献となるだろう。なお、P-CABが置き換えを狙う韓国におけるPPIの市場規模は約500億円とみられており、当初の収益貢献は限定的と弊社ではみている。(CJヘルスケア自身は韓国紙のインタビュー記事の中で、年間売上高1,000億ウォン=100億円を期待するとしている)。
CJヘルスケアによるP-CAB新薬の発売からの直接的な収益貢献に加えて、弊社が期待するのは、1)中国市場での新薬販売の時期前倒しと、2)日・米・欧についての導出契約のサポート、の2つだ。
中国におけるPPI市場は約2,600億円(約26億ドル)と推定されており、韓国の5倍以上の規模だ。この中国市場について、CJヘルスケアは中国企業Luoxin Pharmaとの間で中国市場における独占的コラボレーション契約を締結し、発売に向けて準備を進めている。発売に至るまでには中国国内での臨床試験が不可欠だが、P-II臨床試験をスキップできるかどうかで発売開始のタイミングが年単位で変わってくる。韓国におけるP-III臨床試験の結果と2018年の上市見込という事実によって、中国においてはP-II臨床試験をスキップできる可能性が高いと弊社ではみているが、仮にそうなれば市場規模が大きいだけに、同社へのロイヤルティなどの収益インパクトもそれだけ早期に具体化すると期待される。
日本及び欧米への導出契約への影響に関しては、導出候補プログラムの進捗の項で詳述する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<MW>
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