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大同工業 Research Memo(3):「動力を伝える」分野の製品を幅広く展開。海外向け製品が売上の約半数を占める


■事業内容

大同工業<6373>は、自転車のチェーンが出発点であり、その技術を生かし「動力を伝える」分野の製品を幅広く展開している。主力のバイクや自動車向けのチェーンのほかに、産業機械用のチェーン、さらには、リム・ホイールやコンベヤなどを手掛け、福祉機器も注力している。地下鉄の駅などでよく見かける、階段に設置されている車椅子の昇降機にも使われている。

現在、総売上高の約半数が、海外向けだが、世界的に「D.I.D」のブランドが確立されており、その卓越した技術に対する評価が高い。こうした強力なブランド力に関しては、ロゴマークにも現われている。

同社はコーポレートシンボルとして、流麗な線にダイナミックに「伝える」、「運ぶ」商品群をイメージさせるようなブルーの「DID」というロゴを使用しているものの、海外では1937年から商標登録されている赤い「D.I.D」の商品ロゴが浸透しているため、主にバイク用部品、産業機械用チェーンでは、現在でもこれを使用している。

1. 製品分野別
製品分野別に見てみると、バイク用チェーン・自動車エンジン用チェーン、産業機械用チェーン、リム・ホイール、コンベヤシステム、福祉機器の5つに分類される。製品別の売上構成比(2017年3月期実績)は、自動車エンジン用チェーンが15.6%、バイク用チェーンが42.5%、産業機械向けが24.2%、鋼材の加工販売・石油製品の販売などその他が17.5%となっている。ただ。同社の決算開示などでのセグメントの公表は、こうした製品別ではなく地域別に括っているのに加え、近年では海外シフトを進めているため、後述する地域別で詳しく見る必要があるだろう。

(1) バイク用チェーン・自動車エンジン用チェーン
バイクによるアメリカ大陸横断を世界で初めて1本のチェーンで実現するなど、バイク用チェーンでは、同社はパイオニアとも言っていい存在だ。特殊形状のリングでグリス抜けを防止し、優れた耐摩耗性能によって長寿命を実現させた「シールチェーン」を始め、この分野における技術力に定評がある。極限ともいえる過酷な条件下でも優れた能力を発揮すると信頼され、MotoGP、世界耐久選手権、モトクロス、パリ・ダカールなど世界の名だたるバイクレースで長年にわたって採用され続けてきた。世界最高峰のバイクレースMotoGPでは、バレンティーノ・ロッシ、マーベリック・ビニャーレスといった有力選手が使用するなど高い評価を獲得。さらに、鈴鹿8耐レースにおいて「D.I.D」は、YAMAHAチームの3連覇に貢献した。供給先は、本田技研工業<7267>、ヤマハ発動機<7272>、スズキ<7269>、川崎重工業<7012>と国内メーカーだけではなく、海外の有名バイクメーカーにも提供している。

自動車向けにはエンジン用チェーンを展開している。世界にチェーンメーカーが数多ある中で、自動車エンジン用チェーンを製造できるのは5社しか存在せず、同社はそのうちの1社として地位を築き上げてきた。主力は本田技研工業<7267>向けとなっているが、トヨタ自動車<7203>、マツダ<7261>、ダイハツ工業、スズキ<7269>、SUBARU<7270>など国内メーカーのほか、中国の第一汽車、韓国の現代自動車などにも展開している。

(2) 産業機械用チェーン
産業機械は「Driven to Solutions」をスローガンに掲げ、量産仕様から特殊仕様まで産業界の「伝動」、「搬送」ニーズに対して様々なソリューションを提供している。

主に建築機械、農業機械、立体駐車場、工場の吊り下げなどの搬送ラインなどに使用されているが、建設機械、農業機械などは、屋外、しかも泥土などにさらされる厳しい環境に耐えうるものでなければならない。また、立体駐車場や工場の搬送ラインなどでは重量に耐えうるかがポイントだ。耐摩耗、耐環境、高強度など、チェーンに求められる高度な技術で、これらのニーズに応えている。また、近年では従来展開してこなかった新たな業態・業種への新規参入を目指す。

(3) リム・ホイール
リム・ホイールも創業者である新家家が手掛けた木製自転車リムからの伝統を受け継ぎ、技術を積み重ねてきた分野だ。この分野は、品質や性能、デザイン性などから、過酷なオフロード用バイクをはじめ、近年ではオンロード用バイクへの採用も見直されつつあるアルミ製の「リム」、「スポーク」、バギー(ATV)や農業機械等の「ホイール」、及びバイク向けの「アルミ加工品」などを提供。強度を高めつつ軽量化を図り、アルミリムでは世界最軽量との評価を得ており、モトクロス等のコンペティションシーンにおいても高い採用率を誇る。また、ハーレーダビッドソンなど海外有力メーカーに供給した経緯もある。

(4) コンベヤシステム
チェーンからスタートした同社が、コンベヤに進出したのは戦後だが、1950年代には早くもコンベヤメーカーとしての地位を確立した。それ以来、国内はもとより世界各国の製鉄プラントやセメントプラント、自動車製造工場など幅広い産業分野において搬送システムを担っている。近年では、環境関連設備として火力発電所などから発生する環境負荷物質を除去する活性炭搬送システムなども積極的に展開している。

近年のこの分野は、ごみ搬送、リサイクル、産業廃棄物処理など環境関連分野に積極的に取り組む一方、地域的には、中国、東南アジアなどの自動車分野に積極的に進出している。

(5) 福祉機器
チェーンやコンベヤなどで培った長年の「伝える」、「運ぶ」技術を応用したのが福祉機器の分野だ。同社は、1980年代から福祉社会へアプローチしてユニバーサルデザインの研究を進めている。

この分野で代表的な製品が地下鉄の駅などで見かける「車いす用階段昇降機」だ。また、高齢化社会の進展に合わせて、「いす式階段昇降機:楽ちん号、エスコートスリム」などの製品を世に送り出している。

2. 地域別
以下、セグメント(地域)別に見てみる。日本、アジア、北米、南米、欧州の5つに分類される。国内と海外の売上構成比は、徐々に海外の比重が高くなり、2009年3月期には40%だったのが、2017年3月期までの直近3期は50%超に。2017年3月期は51.9%となっている。

(1) 日本
構成比では50%近くとなっているが、今後、大きな成長が見込みにくいのも事実だ。実際、バイクの国内生産高を見ると、直近10年間で年間300万台から30万台へ、10分の1に激減。その分、海外生産にシフトした。今後も、こうした産業界の海外シフトに加え、国内では人口減少によって需要減退が想定されるため、同社は他のセグメント、つまり海外をより強化させる意向を示している。日本国内での製品別売上構成比は、二輪と産業用が3割ずつ、四輪が1割、残りがその他となっている。

(2) アジア
現地拠点として、タイではDAIDO SITTIPOL CO.,LTD.、D.I.D ASIA CO.,LTD.を設立しているほか、INTERFACE SOLUTIONS CO.,LTD.を子会社化。さらに、インドネシアに P.T.DAIDO INDONESIA MANUFACTURING、ベトナムにD.I.D VIETNAM CO.,LTD.、インドにDAIDO INDIA PVT.LTD.、中国に大同鏈条(常熟)有限公司、などがある。最近では、2017年5月のマレーシア子会社DID MALAYSIA SDN.BHD.の設立を皮切りに、ベトナム子会社の生産拠点化やフィリピンに子会社D.I.D PHILIPPINES INC.の設立を発表するなど、アジア地域におけるネットワークの強化等による成長戦略を推し進めている。

アジアでは、二輪向けが67%を占め、主力製品になっている。ASEANでは、日系メーカー向けにバイクチェーンなどを供給。一方、中国では高炉、電炉用のコンベヤに力を注いでいる。

(3) 北米
米国でDAIDO CORPORATION OF AMERICAを設立。ここでは、自動車エンジン用チェーンの一貫生産を行っている。それを映して、北米で売上構成比が最も高いのは43%を占める四輪。次いで、40%の産業機器 、17%の二輪となっている。最も売上構成比の高い四輪事業における主な供給先は、ホンダだ。

(4) 欧州
欧州向けは、売上構成比の94%が二輪向けで、イタリアのDID EUROPE S.R.L.を拠点として展開中だ。アジアにおいては、幅広い価格帯で製品を提供しているが、欧州で多いのは収益性が高いビッグバイク向けのチェーンだ。自動車エンジン用チェーンは、完成車のエンジンに組み入れたら、それきりとなるものの、バイクの場合はアフターの需要もある。ビッグバイクは趣味性が高いことでアフター需要が大きいため、この点が欧州における重要なビジネスとなる。

(5) 南米
南米では、ブラジルに DAIDO INDUSTRIAL E COMERCIAL LTDA.と DAIDO INDUSTRIA DE CORRENTES DA AMAZONIA LTDA.の2つの拠点で展開。前者は産業機械用がメイン、後者はバイク用チェーンを中心に展開している。ブラジルは徐々に収益が改善し、今期か来期には黒字に転換する見通しだ。売上構成比は、二輪が67%、産業機械が33%となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野 文也)



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