ベルシス24 Research Memo(6):従来ビジネスの拡大、新領域での拡大、人材マネジメントの高度化が3本柱
2. 成長戦略~3つの取り組み~
ベルシステム24ホールディングス<6183>は具体的戦略として、従来ビジネスの拡大、新領域での拡大、人材マネジメントの高度化の3つを掲げている。
(1)従来ビジネスの拡大:顧客との関係性強化、伊藤忠シナジー拡大、品質優位性の更なる追求
従来ビジネスにおける拡大では、顧客との関係性強化、伊藤忠シナジー拡大、品質優位性の更なる追求を軸に深堀していく方針だ。
顧客との関係性強化においては、既存顧客との良好な関係を活かした顧客内シェアの拡大、満足度の向上と、新しい付加価値の提供に取り組むとしている。年間5億円超の顧客の売上収益合計及び顧客数は、2014年2月期に201億円、22社だったが、2017年2月期に382億円、36社にまで拡大している。同社の営業力もあろうが、現場品質の優位性により同社を支持する顧客が多いことの証左であろう。今後も顧客満足度の向上を追及しながら、顧客内シェアの拡大及び新しい価値が提供できるように自らを磨いていく姿勢を堅持している。顧客との関係性の強化は、後述するAdvanced CRM Platformの推進のためにも必要不可欠であろう。
また、伊藤忠シナジーも追求する。伊藤忠シナジーの収益貢献は先に述べたとおりである。グループ企業との取り組みの拡大にとどまらず、高効率BPOを実現するためのキーテクノロジー企業への積極的投資やグループ企業とのBPOモデルの共同構築拡大についても取り組む方針だ。
同社の現場力の高さには定評があるが、現状維持に甘えず、品質優位性も更に追求することが必要と考えている。具体的には、個別プロジェクト毎の品質・収益の管理体制及び退職抑止・採用強化等の人事施策の強化に取り組む。これは、後述する人材マネジメントの高度化にも密接に関係する。
(2)新領域での拡大:Advanced CRM Platform、Advanced BPO、海外事業展開
新領域の拡大においては、Advanced CRM Platform、Advanced BPO (Business Process Outsourcing)、海外事業展開を掲げている。
消費者対応は、近年のテクノロジーの進歩で、AI活用による消費者との対話の自動化・ハイブリッド化へ移行しつつあり、これまでのような電話応対だけでなく、メールやチャットも導入が進んでいる。同社は、このような時代の要求に応えるべく、インタラクティブ・インテリジェンス・アナリティクスといった機能を備えたAdvanced CRM Platformを推進している。Advanced CRM Platformとは、前述したAdvanced CRM構想のプラットフォームのことで、クライアント企業と消費者との最適な接点を創出するにとどまらず、消費者や業務に関する知見の提供、さらには消費者の価値観の分析による最適モデルの提案までを行うというものだ。実現すれば、これまでのコスト削減中心の視点を超えた先進的なプラットフォームとなる。Advanced CRM Platformという新たな収益モデルの展開を進めることにより、同社は課金型ビジネスやレベニューシェアといった利益率の高いビジネスモデルを実現するとしている。Advanced CRM Platformにより、パートナー企業とのビジネスを創造し、新たな事業領域に踏み込む。
Advanced BPOについても同様に深堀を進めていく。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入した高度なBPO業務を同社が提供することにより、メリットを得ることができるクライアント業界や企業は多い。特に、流通業等においては未だ経理伝票等の処理をFAXで行っている会社など多くある。同社はこれらの受注業務を、経理・人事・IT等の型を整備し生産性が向上するような業務に修正していく。また、CTCとの協業や高効率型モデルの構築(技術活用)も含めて展開していく。国内では、アウトソーシング市場規模は年5%程度での成長を継続するとみられるが、対GDPにおけるBPO比率は、米国に比べると、日本は低く、今後より一層の拡大が見込まれ、成長を取り込んでいく方針だ。
さらに、海外展開についても視野に入れている。既にベトナムのHoa Saoと2016年12月に基本合意を締結したように、今後も同様に有望な地域において案件を開拓していく方針である。伊藤忠グループのネットワークを活用し、より大きな効果が望める案件に絞って検討することに加え、新拠点の展開も視野に入れている。国内向けサービスと同等の高度化したCRM事業をASEAN等の海外に展開することで収益拡大を狙う。
(3)人材マネジメントの高度化:退職抑止、採用力強化、現場人材管理の精微化
人材マネジメントの高度化の戦略として、退職抑止、採用力強化、現場人材管理の精微化を挙げている。
同社は、30,000人超のコミュニケーターを擁している。その数の多さによるハンドリングの難しさに加え、少子高齢化に伴う労働市場の変化による採用難という環境下で、高度な人材マネジメントが必須というのが同社がたどり着いた結論だ。同社は、介護・育児・ワークライフバランス等を背景に働き手の時間と場所の制約が増加し、働きたい人と働く機会との間にアンマッチがあるとみており、同社は一人ひとりに最適な働きやすい職場を提供、人材を確保することで、サービスの品質及び利益の向上を追求し、成長を持続拡大していく方針である。加えて、採用力のもう一段の強化も課題として挙げている。どういう人材をターゲットに何をアピールするか、あるいは採用した人材をどのように配置にするのか等に対しても、テクノロジーを活用していくようだ。
同社は、働き方改革を進めており、長時間労働の撲滅、管理者層の意識改革に加え、多様な人材が活躍できる職場づくり、障がい者の雇用促進、管理職における女性比率の向上等のダイバーシティの拡大とともに、正社員登用制度、テレワークの推進、新たな評価制度の導入といった社内制度の整備にも取り組むとしている。また、戦略投資も積極的に行い、新しい報酬施策、ショッピングモール等においてスモールオフィスを展開するなど小型分散の新しいセンターの設置、新技術の活用等も計画している。
3. 投資計画
同社は、今後5年間で100億円以上の追加投資を新しい領域に対して積極的に行っていく予定としている。投資先は、高効率なオペレーションモデルを提供するためのAIやオートメーションを中心としたテクノロジー領域と、人材戦略および海外事業などの領域である。従来の投資額は年間30億円程度であったが、これが大幅に拡大する見込みである。
(執筆:フィスコアナリスト 清水 さくら)
<MW>
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