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ヨシムラフード Research Memo(3):グループ一体運営で支援・活性化


■ビジネスモデルと競合・強み

1. ビジネスモデル
ヨシムラ・フード・ホールディングス<2884>は、支援・活性化を行う中小企業を原則完全子会社化し、グループ一体運営を行うことを基本としている。M&A後は、中小企業支援プラットフォームで販路拡大・製造効率化・新商品開発・品質管理の強化・経営管理の充実を主にグループ会社を支援することで、新たに参画した会社の弱みを補完しながら強みを従来以上に発揮させ、既存事業の業容拡大による成長を狙う。対象となる中小企業を問題点の洗い出しと、解決策の選定及び実行までの全責任を同社が負う。

同社がグループ化に選択する企業は、課題を抱え支援を欲する企業もあるが、承継問題に起因する案件も多い。2017年2月期にグループ会社化した純和食品とエスケーフーズでは後継者不在、栄川酒造は私的整理により100%減資後、同社が出資を行った。

(1)案件検討からM&Aまで
プレM&Aでは、案件の紹介・初期検討から始まって、初期情報の開示・検討に進み、条件提示を行う。そこで合意がなされるようであるならば、基本合意書を締結、その後デューデリジェンスに入る。デューデリジェンスでは、開示情報が限定的な中、良い会社を見極める目利き力が必要となるほか、中小企業ならではのリスクを見極める力が必要となる。同社は、通常のケースでプレM&Aに6ヶ月程度の時間がかかると説明している。

案件は、投資銀行・地方銀行・信用金庫・証券会社などの金融機関、M&Aアドバイザリー業務を行う企業、再生系案件を取り扱う弁護士等より紹介される。また、そのような中小企業は、買い手もおらず割安に放置されやすく、サブセクターにもよるが買収価格は経営改善後結果的にEV/EBITDA倍率で2~3倍となることも多いようだ。同社は事業の内容や改善策が見えているか、優秀な人材の有無等を見つつ、割高な価格では買わないという姿勢を堅持している。

(2) M&A後
M&A後のPMIでは通常、約6ヶ月かかる。このPMI実行の中で、人心掌握、経営管理体制の構築、中小企業支援プラットフォームにより、グループ企業とのシナジー効果の創出及び業績の向上を狙う。特に人心掌握はPMIを実行する上で要となっており、同じ立場に立ってコミュニケーションを図ることで、信頼関係を構築し、社員のモチベーションを向上させる。

同社の中小企業支援プラットフォームでは、販路の拡大、製造の効率化、新商品の開発、品質管理体制の強化、経営管理の充実、資金調達及び資金力、人材の確保、プラットフォームの拡張性をグループ子会社に横断的に提供する。中小企業では管理部門が脆弱であったり、これらの機能において十分な整備がなされていなかったりするため、これらを整備するだけで経営が上向きやすい。

具体的に見ていくと、販路の拡大では、同社の営業統括責任者は、子会社が持つそれぞれの販路をグループ共通の経営資源として管理・活用、各社の特色に合わせた販売戦略や販路拡大を検討する。グループ各社が保有する日本全国の様々なチャネルや販売先を把握し、グループ内で取引先の共有や紹介、クロスセル(既存販売先へのグループ商品の販売)及び営業管理・支援を行うことで、各社の新規販売先の拡大を実現。実際に個社では取り組むことができなかった大型のプライベートブランド商品の受注等に成功している。中小企業単独では、規模の制約から全国への販路の拡大が十分とは言えない場合が多くあるため、販路の拡大が売上に直結し目に見える効果を得やすい。

2008年12月にグループ入りした、シウマイ・餃子等のチルド・冷凍調理食品の製造・販売を行う楽陽食品の実例を説明したい。2009年から2011年に利益率の改善を目的に、製造現場では工場の生産性の改善、コストダウンを実施するとともに、管理部門では、組織の構築、内部管理体制の構築、不採算取引の解消を進めた。続く2012年から2014年の3か年では、新規顧客開拓を行い、大型顧客獲得に成功したほか、新規工場の取得及び既存工場の設備改善も実施した。これらにより、2009年に同社のチルドシウマイ業界における販売シェアが16.9%で業界第2位だったものが、2013年には、販売シェアが22.4%、業界1位になり、翌年の2014年には販売シェアは23.3%まで拡大した。同社は、その後、新商品の開発に入っており、餃子市場への進出、大口PB顧客を獲得するなどした結果、2015年2月期の餃子の売上高は204百万円であったが、2017年2月期には880百万円にまで達したと見られる。

他社についても同様で、オーブンは、2014年2月期から2016年2月期までに年平均成長率は10.0%増、ダイショウは2015年2月期から2016年2月期に同13.2%増を達成した。

子会社のメリットは前述のとおりだが、同社にとってもグループ企業が増加することによって、売上拡大、コスト削減、事業活動領域の拡大が可能となる。売上拡大においては、販路の共有化、クロスセルの推進によって販売会社化による効果的・効率的な営業体制の構築が可能であることのほか、新規チャネル、新規顧客の開拓など営業管理・支援が容易くなる。また、通販やBtoC等の新たな販売チャネルの開拓が可能になり、PB商品等の可能性も広がる。コスト削減では、規模拡大による仕入コストのボリュームディスカウント、製造拠点の集約によるコストダウン、管理業務の集約による効率化が期待される。このことから、同社の中小企業支援プラットフォームはM&A数の増加とともに拡大していく仕組みとなっている。

M&A後の業績貢献については、当然のことながら、案件の件数、案件のタイプ、タイミング、事業のステージによって出方が異なる。初年度にM&A関連費用が計上されるため、民事再生案件やグループ化のタイミングによっては初年度に大きな赤字になりやすい傾向にある。

2. 食品業界におけるM&Aの競合状況
食品業界におけるM&Aと言うと、大手食品会社や投資ファンドが競合になるのではないかと疑問に思うかも知れないが、実際にはどのプレイヤーとも競合しない。まず、投資ファンドとの比較では、同社が事業インフラを保有しているのに対して投資ファンドはなく、また投資ファンドの食品業界に対する取り組み経験は案件次第である。もっと重要なのは、投資ファンドがM&A対象とする企業規模が一定規模以上であることと、売却を前提にしていることである。投資ファンドの場合は、効率を考えて一定規模以上に偏りやすい。同社が長期保有を基本とし売却を考えないのに対して、投資ファンドは資金回収時期や方法が見えないことには投資ができないという、中小の食品企業を買収するには些かハードルが高いと言えよう。

一方、大手食品会社は、事業インフラを保有し、食品業界に対する取り組みも行っている。M&Aや投資をするとしても長期保有となるだろう。しかし、大手食品会社の場合、投資ファンドと同様に一定規模以上の企業規模を求める場合が多く、また買収先が自社の戦略に完全に一致しないと行動に移さない。このため、大手食品会社による買収は進まず、投資ファンドにとっても食品の中小食品企業は投資対象にはならず、同社とはバッティングしない。事実上、競合会社がいないことが最大のアドバンテージと言えよう。

3. 強み
事実上の競合他社がいないということに加え、同社の最も大きな強みは、中小食品企業に特化することで蓄積してきた経験やノウハウであろう。具体的に挙げると、豊富なM&A経験、強みを持つ企業を選ぶ目利き力、中小企業支援プラットフォームを活用した相乗効果、金融機関等の豊富な情報リソースである。金融機関等からのM&A案件の紹介や情報提供なしに円滑にM&Aを進めることは難しいが、それに加えて豊富なM&A経験とそれを生かし得られた目利き力は、優良な案件を選択するのに欠かせないし、M&Aの成功の鍵を握っていると言っても過言ではないだろう。そして、実際に同社の中小企業支援プラットフォームを活用して得られた相乗効果という結果を出せているという点は重要だ。

また、被買収会社のオーナー等から見ると同社が売却を目的としていないことも大きな評価になっていると思われる。売却による投資回収を目的としていないため、中長期的な視点から持続的成長を目指す経営が可能であるとともに、事業の継続や労働環境の維持を望む中小企業のオーナー等にとって、同社の目先の利益に捕らわれず中長期での視点で経営に臨む姿勢に自社を託したいと考えることもあるだろう。

同社は、東証1部上場企業となり、多様な資金調達手段が可能となったほか、信用力・知名度の向上とともに、人材の確保、案件の持込が多くなることで、優良なM&A案件に遭遇する機会が更に拡大すると見られる。なお、M&Aの紹介・持込案件が増加しても、スクリーニング等の案件の検討には現状の人数でも十分に対応可能だそうだ。

(執筆:フィスコアナリスト)



<NB>

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