エレマテック Research Memo(2):17/3期2Qは円高の進行と製品構成の悪化で減収減益の着地
(1)決算の概要
エレマテック<2715>の2017年3月期第2四半期決算は売上高94,966百万円(前年同期比21.7%減)、営業利益2,190百万円(同46.1%減)、経常利益2,160百万円(同48.7%減)、親会社株主に帰属する当期純損失879百万円(前年同期は3,060百万円の利益)と減収減益で着地した。
2016年3月期第2四半期決算には、一部子会社の決算期変更に伴い9ヶ月間の業績を連結したという特殊事情がある。すなわち、2017年3月期第2四半期決算の減収減益幅が実際より誇張されているということだ。もう1つの特徴として大幅な円高進行がある。平均為替レートは2016年3月期第2四半期の121.87円/ドルから2017年3月期第2四半期は105.20円/ドルに大幅に円高に振れた。
報告ベースでの減収幅は26,274百万円だが、そのうちの26,081百万円は特殊要因によるものだ。同様に売上総利益は報告ベースの減益額は2,529百万円に対して特殊要因の影響が1,593百万円で、実体的な減益額は936百万円だった。この減益をもたらしたのは主として製品構成の悪化と弊社ではみている。製品構成の悪化は、同社が部材を供給する日系の液晶デバイスメーカーや電子部品メーカーにおいてスマートフォン向けの出荷量を落としたことの影響が出た半面、利益率の低い調達代行ビジネス(内容は液晶用部品の実装)の売上高が伸びたことが最も典型的な事例だ。
販管費は、調達代行ビジネス関連の荷造運搬費が増加したため、実質的に総額が前年同期比191百万円増加した。その結果、営業利益は前年同期比で実質的に1,126百万円の減益となった。
親会社株主に帰属する当期純損失が計上された理由は、特別損失に貸倒引当金繰入額2,832百万円を計上したことが原因だ。これは上海の子会社を通じて行った現地の建設用資材メーカーとの取引から生じた売上債権を全額貸倒引当金に計上したことがその内容となっている。原因としては現地法人の与信設定・与信管理の不十分さや、建材という同社の知見の浅い業界での取引であったことなどが挙げられる。同社では既に与信設定・与信管理の社内ルールを見直したほか、本社による主要現地法人への関与強化などの対策を実行した。
弊社では上記のような経緯に照らし、今回の事例は当該建材取引に対する固有の原因に起因するものと判断し、今後、他の取引に波及する可能性は低いと考えている。同社の大口取引先は日系メーカーが主体で、現地メーカーとの間でのこうした大口取引は極めて例外的であることも理由の1つだ。
(2)マーケット別動向
主力のDigital Electronicsは前年同期比15,555百万円の減収となった(うち7,283百万円の減収は前期の決算期統合の影響)。液晶・タッチパネル・バックライトはスマートフォン向けの液晶生産が2016年3月期第4四半期に引き続き2017年3月期第1四半期も低迷した影響で、同社の売上高も7,574百万円の大幅減収となった。モバイル端末では、全体的な需要減少に加えて、スマートフォン筐体のデザイン変更によって同社の納入していた部材の商流がストップしたことが影響した。電気・電子部品は、同社が材料を納入していた日系部品メーカーの出荷が、納入先のスマートフォンメーカーの生産調整で減少した影響を受けて減収となった。そうしたなか、テレビ・モニター向けが増収となったのは、同社が取り扱う部材を使用した液晶モニターがテレビ用として出荷を伸ばしたことによる。
Automotiveは前年同期比805百万円の減収となったが、前期の決算期統合の影響が902百万円であったため、円高を克服して約100百万円の実質増収だったことになる。自動車の運転席周りでは液晶ディスプレイや各種ランプ類、樹脂成型品等様々なものが使用されている。同社は得意の液晶デバイス用部材の調達・供給力や、グローバル拠点間連携による供給力などを生かして、着実にビジネスを拡大させている。また顧客についても、日系自動車向けの商流に限らず、欧州等の自動車メーカー向けの商流においても、取引先を拡大させつつある。
Broad Marketは前年同期比9,913百万円の減収となった(うち3,533百万円が前期の決算期統合影響)。Broad Marketはその名のとおり需要先の業界が極めて多岐にわたっているため詳細分析は個々の影響を1つ1つ取り上げるのは難しい。そうしたなかで2017年3月期第2四半期は、ハウスの中では建材が、産業機器等の中ではモータ向け部材が、それぞれ目立った減収要因となった。
(3)四半期ベースでの業績の動き
前述のように2017年3月期第2四半期決算は大幅減収減益となったが、四半期ベースで業績の推移をみると、また異なる状況が見えてくる。
2017年3月期第2四半期決算の低迷の直接的かつ最大の原因はスマートフォンの急激な生産調整にあるのは前述のとおりだ。この生産調整は2016年3月期第4四半期に始まり、2017年3月期第1四半期にも継続していわゆる“なべ底状態”を形成した。しかしながら、第2四半期に入るとスマートフォンの生産が回復してきており、第2四半期単独期間(7月−9月期)は第1四半期とは様変わりの様相だ。
第2四半期の回復の動きは第3四半期に入っても継続しており、結果的には2017年3月期の四半期ベースの業績は第1四半期が底であったことがほぼ確認できたと弊社ではみている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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