ドル・円の年初からの下落ペースは緩やかになっている反面、戻りの鈍さも顕著です。足元では回復基調に差し掛かると米トランプ政権の「けん制」がみられ、日本企業の想定為替レートはさらに下方修正を迫られそうです。


ドル・円は2月12日に節目の108円を割り込んでから、現在もその水準を回復できていません。最近では、アメリカの鉄鋼・アルミ製品の輸入制限に対し中国が報復措置に言及するなど制裁と報復の応酬になっています。対話により解決に向かうとのムードが広がると、その都度トランプ大統領のツイッターによる「口(指)先介入」で、ドルの持ち直しの芽が摘まれてしまうケースが目立ちます。


ドルは3月下旬に104円半ばまで下げた後いったん底を打ち、4月に入って107円台を回復しています。しかし、108円台を目指す展開となると、トランプ政策がドルの上昇を阻止しているような印象を受けます。最近ではシリアへの軍事介入への言及がそれに当たります。金融当局者によるドル高けん制発言とは異なるものの、よく似た効果をもたらしており、目先もドルを押し下げそうです。


アメリカのファンダメンタルズや金融政策からみて、ドルはもう少し回復しても不思議ではありません。6日に発表された3月雇用統計は、非農業部門雇用者数の大きな下振れが嫌気されたものの、これは急増した2月の反動減と考えられます。また、失業率は予想を下回ったものの、前月と同水準でした。さらに、平均時給は2月を上回り、事前の想定と一致しています。


広義の失業を考慮したU6失業率も昨年11月以来、4カ月ぶりに改善を示しており、総体としてそれほど悪い内容ではありません。特に、10日に発表されたアメリカの3月生産者物価指数(PPI)と11日の同消費者物価指数(CPI)が底堅い内容となったことからも、景気の持続的な拡大が示され、インフレの上昇が連邦準備制度理事会(FRB)による金融正常化の正当性を後押ししています。


もちろん、不安定な株価や長期金利の動向に振らされる時もあり、「介入」だけでドルが押し下げられているわけではありません。ただ、最近のドル108円以下に抑えられる値動から、その水準が目下のトランプ政策のレンジ上限「シーリング」とみても不思議ではありません。108円台は2017年以降、何度もサポートされた重要なレベルですが、レジスタンスに変わった可能性もあります。



今月2日に発表された日銀短観で、大企業製造業の2018年度の想定為替レートは1ドル=109円66銭となっています。しかし、チャート上で年初からの下落トレンドが続いていることを考えてみても、現時点で110円付近に戻す材料は見当たりません。日米首脳会談は対日貿易赤字の是正と北朝鮮問題です。何よりも支持率の回復を望む現在の安倍晋三首相にとって、円安政策は後回しになるでしょう。


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情報提供元:FISCO
記事名:「トランプ・シーリング【フィスコ・コラム】