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中国の危ない現状、(2)偽装GDP【フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議】


世界第2位のGDPを誇る中国。しかし、公表される経済指標について疑問を表明する機関も多く、その経済の実態はなかなかつかめない。
そこで、なぜ中国経済が崩壊の危機を迎えているのか、また経済崩壊のシナリオとはどのようなものかを明らかにすべく、全4回にわたって各トピックを提示、検証する。

本稿では、「GDP」に関する考察をご紹介する(※)。

※一つ目の「経済成長モデル」は、別途「中国の危ない現状、(1)経済成長モデル【フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議】」を参照

■GDPの歪曲化は2012年から一段と進行?

中国GDP成長率の四半期ごとの変化幅は、2012年後半以降から急激に小さくなってきている。以前から中国のGDPに対する信頼性は低いとされてきたが、最近ではこのタイミングから、「歪曲」の度合いが一段と強まったものと推測される。ちなみに、ここ最近のGDPは6~7%成長が継続している。

2012年は習近平政権が発足した年であるが、このときの党大会において、胡錦濤が2020年のGDPと1人当たり国民所得を10年の2倍に増やす目標を掲げたため、新政権はこの目標達成に向け、年7%程度の成長を持続していかなければならなくなった。政権発足直後から目標数値を大きく割り込むことは、なんとしても避ける必要が生じてしまったのだ。

こうした背景があって、形式的な高成長持続が造られる形になっているとみられる。中国GDPは2012年以降、実態との乖離が一段と広がったものと推測したい。なお、習近平指導部による2016年GDP目標は「6.5~7.0%」のレンジとなっている。

■李克強指数との乖離がここ2年大幅に拡大中

では、中国GDPの本当の数値はどれくらいになるのだろうか。いくつかの分析から推測していってみよう。



四半期ごとの成長率を掛け合わせて累積した李克強指数と、中国GDPの推移を見てみる(2011年第4四半期を100とする)。あくまで、四半期ごとに成長率を掛け合わせたものであり、実際の年率成長とは異なるが、2012年以降も、2014年第3四半期まではほぼ連動した推移となっていた。ただ、その後は大きな開きが出てきており、これを見る限り、このタイミングからは明らかに、中国GDPは実態以上にかさ上げされた数値で保たれるようになってきたと考えることができよう。

2016年第3四半期の段階では、李克強指数はGDPに対して80.8%の水準になっている。仮に、乖離が広がった2014年、2015年のGDP成長率が、実際には李克強指数並みの伸びにとどまっていたと仮定すれば、2015年のGDPは発表された59兆2100億元(SNAに基づいたデータ)を下回る57兆5630億元になる。この場合、2014年と2015年のGDP成長率は年率平均で5.5%程度にとどまる計算となる。

■過剰投資の結果 実態以上にGDPを押し上げる状況に

中国GDPと輸出入総額、小売売上高、固定資産投資それぞれの年平均成長率推移を、2010~2012年、2013~2015年で比較した数値が左表となる。輸出入総額の成長率は大きく落ち込んでおり、中国経済の勢いの急低下がみてとれる。また、小売売上高も2ケタ成長を保っているとはいえ明確に低下していて、中国のGDPの大きなウェイトを占める固定資産投資もほぼ半分の成長率にとどまっている。

続いて個人消費についてみてみよう。2013年の数値をベースにすると、各国のGDPに占める個人消費の割合は、米国が約70%、日本が約60%、中国が37~38%となっている。直近の中国における消費の伸びを勘案すると、現在は40%程度の割合を個人消費が占めていると考えられる。中国で個人消費のウェイトが低いのは、公共投資など総資本形成の割合が非常に高いためである。

仮に、中国の個人消費のGDP構成ウェイトが日本並みであった場合(他のGDP構成要素の割合が日本並みに低く抑えられた場合)、2015年の中国GDPは実際の59兆2100億元に対して、40兆元を僅かに下回る水準(約39兆5000億元)となる。これは実際の中国の2010年の水準も下回るものであり、2015年の日本のGDPの1.16倍程度の水準にとどまることになる。仮に、個人消費のウェイトを米国並みにした場合、2015年の中国GDPは526兆円となり、2015年の日本と同水準になる。


この試算は、直接的なGDP偽装とはいえないものの、過剰投資の結果、実態以上にGDPを押し上げる状況となっているということを示すものであり、本質的なGDP水準を試算したものとなる。


■中国の真のGDPは 政府公表値の 半分から3分の2程度か

各国メディアも、こぞって中国政府が発表するGDP値への疑問を表明している。フォーチュン誌は「ロンドンに本拠を置くリサーチハウス『キャピタルエコノミクス』によると、中国の2016年第4四半期のGDP成長率は4.5%程度」と報道。また、フォーブス誌が「スウェーデンのトップエコノミストは中国のGDP成長率を3%であると指摘」と報道するなど、「中国の統計は幻想。実際の成長率は3%」と断じる米英メディアは少なくない。


先にあげたいくつかの検証や、これら各国メディア、専門家の指摘を総合して考えると、中国の足元のGDP成長率は3~4%で、公表値の半分から3分の2程度であるとするのが妥当ではないかとみられる。つまり、2015年の中国のGDPは、発表された59兆2100億元(1064兆円)に対して、実際は36兆4500億元(655兆円)程度だと推測できる。

つづく~「中国の危ない現状、(3)不良債権の増大【フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議】」~

■フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
フィスコ取締役 中村孝也
フィスコIR取締役COO 中川博貴
シークエッジグループ代表 白井一成(※)

※シークエッジグループはフィスコの主要株主であり、白井氏は会議が招聘した外部有識者。

【フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部からの多くの専門家も招聘している。それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、フィスコIRの取締役COOである中川博貴が内容を取りまとめている。2016年6月より開催しており、これまで、今後の中国経済、朝鮮半島危機を4つのシナリオに分けて分析し、日本経済では第4次産業革命にともなうイノベーションが日本経済にもたらす影響なども考察している。今回の朝鮮半島についてのレポートは、フィスコ監修・実業之日本社刊の雑誌「JマネーFISCO株・企業報」の2017年春号の大特集「朝鮮半島有事の投資法」に掲載されているものを一部抜粋した。




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