〇行き過ぎた引き締め警戒が緩む〇

注目のイエレンFRB議長の議会証言で、市場に安心感が戻り、NYダウは約3週間ぶりに史上最高値を更新した。終値は0.57%、123.07ドル高の21532.14ドル。高値は21580.79ドルで、壁となっていた21500ドル水準を抜ける可能性が高まった。ナスダックは1.10%高の6261.17、S&P500は0.73%高の2443.25。ハイテク株に買い意欲が戻り、金融株が上値の重い展開となった。

発言内容はとくに目新しいものではないが、ユックリとした利上げ姿勢、年内のバランスシート縮小開始(資産縮小は利上げスピードを抑制するとの受け止め方)を主張した。市場は6月下旬から、やや膨らみ過ぎたと見られる債券ロング・ポジションの手仕舞い過程にあり、10年物国債利回りは2.1%台から2.4%手前に跳ね上がった。これが引き締め観測を強める状況をもたらしていたが、債券総投げ・金利急上昇リスクを抑えることで、市場に安心感が戻ったと考えられる。

市場の受け止め方に影響したと見られるのは、11日、米政治情報サイトのポリティコが「イエレン再任の可能性は低く、後任としてNEC(米国家経済会議)のゲイリー・コーン委員長が有力」と伝えたことだ。イエレン氏は「任期を全うしたい。続投について考えをめぐらしたことはない」と議会証言で言及したが、引き締めへのレール(この場合は資産圧縮)は敷いても引き締めを急ぐ訳ではない(混乱をバトンタッチしない)との見方につながったものと考えられる。コーン氏は米GSの社長兼共同COOを務めた人物。経済学者でないが金融市場に精通していると市場の信任は厚そうだ。1990年のGS入社時は商品トレーダーで、地場証券の場立ちから身を起こし、NY証券取引所の社長などを経てFRB議長となったウィリアム・マーチン氏(1951~1970年在籍、FRB近代化の立役者)との比較論が取り沙汰されている。

10日、トランプ政権はFRB副議長に元財務次官のランダル・クオールズ氏の起用を発表した。金融規制緩和派で知られ、トランプ政権の規制緩和推進の旗振り役になると看做されている。「ゼロ金利政策で幅広い資産で投機的な取引を増やした」と主張し、金融引き締め派とも見られている。そのバランスの上で、コーン氏が妥当との評価につながっている可能性がある。

また、11日、EUは16年末時点で域内銀行の不良債権残高が9904億ユーロ(約129兆円)に上るとするリポートを発表した。貸出金に占める不良債権比率は5.1%、15年末時点の日本の1.6%、米国の1.7%に比べ、まだかなり高いと指摘。11日開催のEU財務相理事会で不良債権削減に向け、17年末までに各国で債権買取会社の整備計画策定を要請した。今回のミニ金融引き締め相場は、ECBの出口論から始まったが、EU自体が引き締めを急ぐ環境にないことを改めて確認したことも、影響したと考えられる。


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出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/7/13号)

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情報提供元:FISCO
記事名:「【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(4):◆イエレン信認◆