日経平均は大幅反発、米株高で27500円回復も危うさ伴う
2日の米株式市場でNYダウは435.05ドル高と3日ぶり反発。マイクロソフトがドル高の影響を加味して4-6月業績予想を引き下げたことが一時重石に。連邦準備制度理事会
(FRB)のブレイナード副議長のタカ派発言が伝わると一時売りが強まったが、その後上昇に転じて終日堅調に推移。石油輸出国機構(OPEC)プラスが増産幅の拡大で合意したことや、長期金利の上昇が一服したこともあり、ハイテク株に買いが入り、ナスダック総合指数は+2.68%と3日ぶりの大幅反発。こうした流れを引き継いで、日経平均は246.74円高でスタート。朝方に27776.33円(362.45円高)まで上昇したが、今晩に米5月雇用統計を控えていることもあり、その後は伸び悩んだ。ただ、前引けにかけては再び強含み、朝方の高値に迫っていく動きとなった。
個別では、良好な月次動向が確認されたファーストリテ<9983>や良品計画<7453>が大幅に上昇。前日急伸したダブル・スコープ<6619>のほか、大阪チタ<5726>や東邦チタニウム<5727>は上値追いの展開。米ナスダックの大幅高を受けてソフトバンクG<9984>、リクルートHD<6098>、ZHD<4689>も大きく上昇。原油先物価格の高止まりでINPEX
<1605>には押し目買いが向かい、住友鉱<5713>や大平洋金属<5541>などのニッケル関連株も買われている。東証プライム市場値上がり率上位には前日に急落したラクス<3923>やSREHD<2980>などの中小型グロース(成長)株が多くランクイン。
一方、期待されていたタイトルの発売時期の発表が失望感を誘ったスクエニHD<9684>、新作ゲームの発売時期の発表が材料出尽くし感につながったカプコン<9697>などゲーム関連の一角が大きく下落。レーティング格下げのあった東ソー<4042>も大幅安。
ほか、東証スタンダード市場では、決算が嫌気されたアルチザ<6778>が急落し、同市場での値下がり率トップとなっている。
セクターでは鉱業、精密機器、非鉄金属が上昇率上位となった一方、保険、空運、輸送用機器が下落率上位に並んだ。東証プライムの値上がり銘柄は全体の56%、対して値下がり銘柄は40%となっている。
前日に発表された米5月ADP雇用者数の伸びは12万8千人増と、市場予想の30万人程を大きく下回った。求人需要は依然として極めて高い水準で推移しているものの、労働需要の減速が示唆された。OPECプラスの原油増産幅の拡大も相まって、インフレ懸念の緩和につながり、FRBの積極的な引き締めへの思惑が後退。こうした背景から、前日の米株市場ではハイテク株を中心に大幅に上昇し、これが本日の日経平均の27500円突破に貢献した。
ただ、前日の米株市場での出来高は少なく、商いが薄いなかで上昇率が嵩上げされた印象を拭えない。
ブレイナード副議長は9月の利上げ停止について「(現時点では)その可能性は非常に低い」とし、「インフレを当局目標の2%に戻すためにやるべき仕事がまだ多く残っている」と述べた。5月下旬に市場で一時高まっていたFRBのハト派転換への期待をけん制するかのような発言で、相場にとってはネガティブな材料と思われる。
しかし、前日の米株市場は上述したように大幅高。ブレイナード氏が9月の利上げ停止を否定しても、これ以上6、7月時点でのタカ派サプライズはないと見込み、押し目ではプット(売る権利)の売り・カバードコール(原資産を保有しながら、その原資産のコール(買う権利)売りポジションをとる戦略)の買い戻しなど、デリバティブ市場では手仕舞いの動きが見られるとの指摘が聞かれる。薄商いのなか、こうしたオプション絡みの動きが実体の強さ以上に株価指数の上昇率を大きく見せている可能性は否定できないだろう。
今晩発表される米5月雇用統計で予想通り、平均賃金の伸びや雇用者数の伸びが前月から鈍化すれば、こうした売り方の買い戻しの動きがもう一段進む可能性はあり、短期的には株式市場が上方向にオーバーシュートする可能性はあろう。
ただ、今週に入ってから、ハト派転換を期待する市場を慌ててけん制するかのような発言がFRB高官から相次いでいる。また、前日のOPECプラスでは原油増産幅の拡大で合意したにもかかわらず、原油先物価格はほとんど下落していない。各国の供給体制に制限がつきまとうなか、実際にどこまで増産できるのか市場は疑念を抱いている様子。
こうした懸念要素を無視して足元でリバウンドを続けている相場にはやや危うい印象を抱く。需給要因主導で上昇しているに過ぎないともいえ、今晩の米雇用統計で仮に想定以上に強い結果が出ると、その後の調整(下落)がより深いものになりかねず、警戒が必要だろう。
また、米雇用統計を無難に通過しても、来週10日には米5月消費者物価指数(CPI)
が控えている。今週発表されたヨーロッパ圏のCPIの上振れ度合いなどを見ると、エネルギーの生産・輸入状況が異なるとはいえ、米国でのインフレピークアウトにも疑問符が付き、指標発表を前にした神経質な展開が想定される。
今週に入って日経平均は大きく上昇し、上値抵抗線だった25日、75日移動平均線を上放れ、週間でも26週移動平均線を上回って終えそうだ。こうしたチャート形状の改善や、心理的な節目の27500円を回復したことなど自体はポジティブだが、逆に捉えると、28000円を手前にそろそろ売り方の買い戻しが終わる頃とも考えられる。足元の動きをもってして過度に楽観的になるのは危ういと思われ、まだまだ警戒感を持って臨むべき局面と考える。
午後の日経平均はもみ合いか。今晩の米5月雇用統計を前にこれ以上に積極的に買い上がるのには材料不足で、後場はむしろ持ち高調整の売りなどで失速気味になることに留意したい。
(仲村幸浩)
<AK>
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