日経平均は大幅に7日続落、「世界の景気敏感株」に逆戻り
週明け4日の米株式市場でNYダウは反落し、323ドル安となった。香港市場で中国恒大集団株が売買停止になったとの報道が嫌気された。また、産油国の「OPECプラス」会合で大幅増産が回避され、NY原油先物が7年ぶり高値を付けたほか、セントルイス連銀のブラード総裁も高インフレが2022年まで続く可能性を示唆。インフレへの警戒感が強まったうえ、バイデン大統領が連邦政府の債務上限突破のリスクを警告したことも投資家心理を悪化させた。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで394円安からスタートすると、その後も下げ幅を大きく拡大。国内では岸田文雄首相が金融所得課税の見直しを検討すると明言したことなども売りを誘い、日経平均は前場中ごろを過ぎると27460.29円(984.60円安)まで下落する場面があった。
個別では、ファーストリテ<9983>が7%近い下落。9月の国内「ユニクロ」既存店売上が前年同月比19%減となり、嫌気した売りが出ている。その他売買代金上位も郵船<
9101>、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、商船三井<9104>、川崎船<9107>など軒並み軟調。好決算のキユーピー<2809>やネクステージ<3186>、不二越<6474>
も売りに押され、国際紙パルプ商事<9274>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、原油高に伴いINPEX<1605>が4%超の上昇。リソー教育<4714>は決算を好感した買いが優勢で、アジュバンHD<4929>などとともに東証1部上昇率上位に顔を出している。
セクターでは、精密機器、機械、電気機器などが下落率上位で、その他も全般軟調。一方、鉱業、石油・石炭製品、電気・ガス業の3業種が上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の88%、対して値上がり銘柄は10%となっている。
本日の日経平均は大幅に7日続落し、800円近い下落で前場を折り返した。下落が始まる前の9月24日終値(30248.81円)比でここまでの下げ幅は2600円近くに達し、取引時間中としては政局相場が始まる前の8月23日以来の安値を付ける場面もあった。国内
「ユニクロ」の苦戦が続くファーストリテが1銘柄で日経平均を約192円押し下げているが、中国の電力不足等でコンテナ船市況が急落していると伝わった海運株も引き続き軟調。グロース(成長)株は米ハイテク株の大幅下落が響き、逃避資金の向かう先はINPEXなどの原油関連株に限られている。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円あまりで、前日までと大きな変化はない。
新興市場でもマザーズ指数が-2.53%と大幅続落。前場中ごろにかけて4%超下落する場面があった。下値での押し目買い意欲は根強そうだが、米国でインフレ懸念と長期金利の上昇圧力が強まっているとなれば、先高期待も持ちづらいところだろう。先週後半に米長期金利の上昇が一服した場面では主力IT株の底堅さを感じたものの、一転して足元軟調となっている。
動向が注目される香港市場では、不動産株の売買停止が相次いでいるほか、インターネット関連株が軒並み軟調になっているという。もっとも、本稿執筆時点で香港ハンセン指数は0.4%程度の下落。前日のNYダウは-0.94%であり、日経平均の軟調ぶりは海外の主要株価指数と比べ際立っている。当欄では自民党新総裁が決定した翌9月30日、海外投資家による株価指数先物の売り転換を捉えて日本株の投資スタンスを「強気」から「当面様子見」に修正した。日本の「変化」に期待して買いを入れていた海外投資家だが、もはやこうした期待が後退しているのは明らかだろう。日経平均は菅義偉前首相が退陣表明して以降の上昇分を全て吐き出し、「世界の景気敏感系バリュー(割安)株」に逆戻りした感がある。
中国では不動産会社の資金繰り問題や電力不足、米国では連邦政府の債務上限問題やスタグフレーション(不況と物価高の同時進行)懸念がくすぶるなか、「世界の景気敏感株」である日本株のアウトパフォームは期待しづらいだろう。米国では5日にサプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況指数、6日にADP雇用統計、8日に雇用統計と9月分の経済指標の発表が相次ぎ、これらの内容を見極めたいとの思惑も買いの手を鈍らせそうだ。
4日発足した岸田新政権はさっそく、19日公示・31日投開票の衆院選に向けて経済対策の編成に動き出した。債務上限問題に揺れる米国との比較で、積極的な財政支出が期待されることは日本株の下支えになるかもしれない。しかし、経済対策で国内総生産(GDP)を一時的に数%押し上げるのと、(人口動態や産業構造等をあえて度外視するが)構造改革を経て欧米株並みにバリュエーションが向上するのとでは期待値が全く違うとも言える。やはり日本経済の浮上に向けた「変化」が見られると海外投資家に受け止められることが日本株の再上昇に不可欠だろう。
(小林大純)
<AK>
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