日経平均は3日ぶりに反落、FOMCは「波乱なし」で決め込みか、新高値銘柄多数
15日の米株式市場でのNYダウは続落、94.42ドル安(−0.27%)となった。5月小売売上高が予想以上に鈍化したほか、生産者物価指数が予想を上回る伸びを示したことが警戒材料となり、持ち高調整の売りが優勢となった。また、連邦公開市場委員会(FOMC)が開催中で、明日の結果公表を控えた警戒感から様子見ムードが強まった。米長期金利は安定しているものの、ハイテク株も売りに押され、ナスダック総合指数は0.71%安となった。米株安を受けた本日の日経平均は135.16円安の29306.14円でスタート。即座に下げ渋って下げ幅を縮小すると、一時は29434.10円(前日比7.20円安)まで戻したが、再度失速すると、その後は29300円台後半でのもみ合いが続いた。
個別では、北米の建築向けガラス事業を売却すると発表したと同時に、証券会社による目標株価の引き上げがあったAGC<5201>が大幅に上昇。また、合成ゴムを手がける中国の製造販売子会社を売却すると発表したブリヂストン<5108>が買われたほか、構造改革の一環として燃料電池車(FCV)「クラリティフューエルセル」の生産を年内で中止すると明らかにしたホンダ<7267>も一時大きく値を上げ、年初来高値を更新した。そのほか、子会社がタイ企業との業務提携を発表したスターティアH<3393>が急伸、証券会社のレーティング引き上げがあったTHK<6481>や、原油先物価格の上昇を追い風にINPEX<1605>も大幅高となった。
一方、国際的なゲーム見本市「E3」で人気シリーズ「ゼルダの伝説」の最新作を2022年中に発売予定であることを明らかにした任天堂<7974>が、材料出尽くし感から一時4%超下げた。そのほか、今期減益見通しが失望されたザッパラス<3770>が急落し、東証1部の値下がり率上位に顔を出している。
売買代金上位では、任天堂、エーザイ<4523>、レーザーテック<6920>、ソフトバンクグループ<9984>、ソニーG<6758>、東京エレクトロン<8035>、ファーストリテ<9983>、JAL<9201>、エムスリー<2413>、リクルートHD<6098>、など半導体関連株や値がさのグロース(成長)株を中心に軟調。一方、トヨタ<7203>、日本郵船<9101>、日立製作所<6501>、三菱UFJ<8306>、サイバーエージェント<4751>、ダイキン<6367>、NEC<6701>、アイフル<8515>、ファナック<6954>、INPEX、などが堅調に推移している。
セクター別では鉱業、海運業、ゴム製品、石油・石炭製品、ガラス・土石製品などが上昇率上位に並んでいる。一方、空運業、その他製品、サービス業、陸運業、情報・通信業などが下落率上位となっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の53%、値下がり銘柄は40%となっている。
明日17日には、FOMCの公表結果やパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見を消化することになる。日経平均は今週に入ってから、前日までの2日間だけで500円近く上昇しており、さすがにイベント前に持ち高調整の売りで押されると想定していたが、下げ幅は100円未満と、かなり底堅い。
前日に大台の1万台乗せに成功したトヨタは、買い疲れ感もみられず本日も大幅高で強さが際立つ。また、本日は新高値を更新した銘柄が多く、輸送用機器セクターでトヨタ、ホンダ、ゴム製品ではブリヂストン、TOYO TIRE<5105>、浜ゴム<5101>、住友ゴム<5110>、海運で日本郵船、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>、そのほか、DMG森精機
<6141>、サイバーエージェント、イビデン<4062>、日立製作所、マルマエ<6264>、栗田工業<6370>、日本電子<6951>、資生堂<4911>、ポーラオルビスHD<4927>、など多数。純粋シクリカル(景気循環)から、グロース、ハイテク、アフターコロナ関連まで幅広い銘柄が並んでいる。イベント前にも関わらず、こうした強い動きが見られることは先高観を強めてくれる。FOMCを無事に通過すれば、あく抜け感から、一段高も期待されるところだ。
一方、やや楽観ムードに傾き過ぎている感も否めず、警戒感も併せ持っておいた方がいいだろう。今年2月以降の米国での物価・雇用関連の指標結果から、FRB高官らの発言、それらを受けた米長期金利や期待インフレ率の動向など、今までの経緯を踏まえれば、市場はテーパリング(量的緩和の縮小)へのリスクを相当に織り込んできたと思われる。耐性も大分ついてきていると思われることに加え、テーパリング開始の正式発表はジャクソンホール会合がある8月がメインシナリオで、今回のFOMCは波乱なしがコンセンサス。市場の先行き警戒感を示す米VIX指数や日経平均VIも、警戒水準の目安とされる20pt割れが足元で続いている。
ただし、今回は、政策金利見通し(ドットチャート)の公表などもある。前回の3月からの変化がどのようなものになるのか注目だ。こちらについても、相当程度は織り込み済みとは思われるが、金利引き上げの見通しを前倒しするメンバーがどの程度増えるかなど細かいところは予測ができず、警戒は必要だ。足元の米長期金利が3月につけた1.78%から1.4%台へと、やや実態と乖離した低下ぶりを見せていることと併せて気になる。
米国でナスダックやS&P500種株価指数が最高値を更新し、東京市場でも、新高値を更新する銘柄が増え、日経平均も再度3万円をトライしようとする強気なムードが出てきている。筆者自身も、どちらかといえば8月にかけては強気な見方を持っている。しかし、上述したように、楽観に傾きすぎることには危険が孕む。常に一定程度は警戒感をもって臨み、結果的に何もなければそれでよかったと思えるくらいがいいのだろう。さて、明日の結果はどうなることか・・・。
<AK>
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