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踏み違え4秒暴走で学生2人死傷 72歳被告、体震わせ涙 有罪判決


 福島県鏡石町のJR鏡石駅前で2月に男女2人を車ではねて死傷させたとして、自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)の罪に問われた面川秀子被告(72)=鏡石町=に対し、福島地裁郡山支部は13日、禁錮3年、執行猶予5年(求刑・禁錮3年6月)の有罪判決を言い渡した。【根本太一】

 下山洋司裁判官は判決で「運転者として極めて基本的な注意義務に違反した過失の程度は相当に大きい」と指摘した。執行猶予にした理由については「(事故原因が)わき見運転などでなく特段に悪質とは言いがたい。前科も交通違反歴もない」などとした。

 判決などによると、面川被告は軽乗用車を運転中の2月15日午後3時50分ごろ、駅前の一時停止義務がある丁字路交差点入り口で、ブレーキとアクセルを踏み間違えて暴走。歩道にいた埼玉県宮代町の大学生、星野友哉さん(当時19歳)を死亡させ、神奈川県の大学生の女性(19)にも重傷を負わせた。被害者の2人は交際中で、共に鏡石町内の自動車教習所の合宿に通い、卒業検定試験に合格して帰宅する途中だった。

記者、高齢で運転の母思い葛藤

 小さな体が、震えていた。過呼吸なのか、息が荒い。裁判官は「休憩しますか」と幾度も勧めた。しかし、面川秀子被告は「大丈夫です」と声を振り絞って断った。4月30日の初公判。罪と向き合う姿が痛々しかった。

 「時速46~49キロで暴走させ……」。そう話す検察官の言葉を、教会で祈るように両手の指を胸元で組み合わせて聞いていた。目線は宙にあった。事故の瞬間がよみがえったか、ほおを涙が伝った。

 私は傍聴しながら、茨城県に住む母に思いをめぐらせていた。この秋に90歳になるというのにハンドルを放さない。「運転をやめたらボケちまう」の一点張り。叔母たちは、運転免許証を返納してから認知症を発症した。

 運転は、見て判断して操作する一連の脳の働きだという。運転をやめ自由に移動する手段を失った高齢者は、運転を続けている人と比べ要介護状態になるリスクが2倍以上だとする市川政雄・筑波大教授の研究報告も出されている。

 「介護予防のために運転を続けられては困る」という意見はあるが、公共交通機関に乏しい地方では車なしでの生活が立ちゆかないのは周知の事実。そもそもバスやタクシー運転手不足も問題になっている。ただ、それは、加害者にならない前提に立っての「理屈」だ。

 面川被告は72歳。法廷で検察官から「ブレーキとアクセルの踏み間違えによる事故を新聞などで知っていたか」と問われ、「自分に降りかかるとは考えもしなかった」と答えた。車を暴走させ、2人を死傷させるまでに4秒。「ブレーキを踏んでいるのに、なぜスピードが落ちないか不思議に思っていた」間だった。

 被害者の2人は、面川被告からすれば孫のような年代だ。検察官から「2人は交際中で近く旅行する約束をしていた。(重傷の)女性は『彼を返して』と言っている」と聞かされ、けいれんしたように全身を波打たせた。

 母を加害者にさせたくない。免許返納を改めて説得すべきか。しかし、今のように、ハッキリした頭のままでもいてほしい。答えを導き出せていない。

 いや、自分だったら素直に返納するだろうか。3月の記者会見で次期衆院選には立候補しないと表明した自民党の二階俊博・元幹事長(85)は、年齢の問題を問われ「お前もその歳来るんだよ」と発言した。そう、私だって2年後は前期高齢者の仲間入り。人ごとではない事故なのだ。【根本太一・63歳】

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