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前橋藩御用達の陶器店、270年の歴史に幕 陶器愛した先代見送り


 「前橋藩の御用達陶器店」として知られ、長年親しまれてきた小松屋陶器店(前橋市千代田町2)が5月に幕を下ろす。10代目店主の父親と母親が数年前に相次いで亡くなり、次女の関川佳寿子さん(66)が介護と閉店準備のために前橋に戻ったが、大勢の顧客から「もう少し続けて」と頼まれ、11代目として店を継いだ。しかし、帰郷から間もなく4年になり、関川さんは「陶器の需要が減り、店は老朽化。開店中は店にいなければならず、自由な時間も持てない」と閉店を決断した。

 市中心商店街や県庁にほど近い同店は江戸中期の1756(宝暦6)年創業で、前橋藩の御用商人だったという。関川さんは「当時は舟運が主。県内に送る陶器は近くで荷降ろしされ、店は小売りと卸問屋を兼ね、前橋城にも献上していた」と話す。姉の斎藤久世さん(67)=神奈川県在住=も「前橋でうちが一番古い陶器店と聞いている」と誇る。

 一方、創業から約270年の間には苦難の時もあった。1945年8月の前橋空襲では、明治時代に築かれた土蔵だけは残ったが店は全焼した。関川さんの父荒井達郎さん(2021年死去)は戦後、10代目店主となり、結婚した母朝子さん(20年死去)と店の再建に奮闘したという。昭和30、40年代の高度経済成長期には、陶器を買い求める人が殺到し、目の回るような忙しさで倒れたこともある。それでも夫婦で九谷焼(石川県)、備前焼(岡山県)や有田焼(佐賀県)などの産地に行って商品を買い付け、日用品ばかりではない「陶器の名店」として広く知られていった。

 客足が減り始めたのは東日本大震災が起きた2011年ごろ。物があっても壊れてしまう虚無感。さらに安い外国製の陶器が100円ショップで買え、一般住宅から和室や床の間が消え、壺(つぼ)や置物の需要も減った。

 関川さんは「父は趣味で陶器を集めていた。『陶器に囲まれて死にたい』と言っていた」と話す。姉久世さんも「父の晩年、いずれは閉店するので商品を多少値引きしようとしたが父は認めなかった。陶器への執着がすごかった」と述懐する。達郎さんは体調を崩した16年に一度は閉店を決意したが、回復すると最期まで閉店しなかったという。関川さんは「父は幸せだったと思う」と話す。

 5月15日の閉店に向けてセール中で、商品は全て7割引き。数百円の商品も多数ある。午前10時~午後5時。水曜日定休。【福沢光一】

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