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職業性の胆管がん、免疫療法の有効性に期待 印刷会社の若者に多発


 印刷会社の若い従業員に多発した胆管がんの治療で、患者自身の免疫の力を用いてがんを攻撃する「免疫チェックポイント阻害薬」が注目されている。大阪公立大医学部と国立がん研究センター東病院は、共同研究などで少なくとも3人の胆管がん患者に同薬の一つ「オプジーボ」を投与し、効果があったとしている。職業性の胆管がんに有効である可能性があり、患者の経過を観察している。

 肝臓は消化や吸収を助ける胆汁を作ったり、毒物を処理したりする。胆管は、この胆汁や不要物を肝臓の内部から集め、腸へと送っている器官だ。2012年、大阪市中央区の印刷会社「サンヨー・シーワィピー」(以下、サ社)の多数の従業員に、この胆管でがんが見つかっていることが発覚した。

 厚生労働省は原因について、インキ洗浄用の塩素系有機溶剤に含まれる化学物質「1、2―ジクロロプロパン」などである可能性が高いと判断。22年3月末までに、主に印刷業に従事する大阪、愛知、東京、福岡など全国の55人を労災認定した。

 職業性胆管がんの発がんメカニズムは完全には明らかになっていない。ただ、1、2―ジクロロプロパンなどは、胆管の表面を覆う上皮細胞で代謝されて化学的に変化し、この変化した物質が胆管の上皮細胞のDNAを傷つける結果、発がんすると考えられている。職業性胆管がんは遺伝子の変異が多いのも特徴だ。

 また職業性胆管がんでは、免疫細胞によるがん細胞への攻撃にブレーキをかける分子が、がん細胞上に多く発現していることが分かっていた。

 そこで、がん細胞が免疫細胞にかけたブレーキを解除し、がん細胞を攻撃できるようにする「免疫チェックポイント阻害薬」に効果があるのではないかと目された。同薬は遺伝子変異の多いタイプのがんに効きやすいと考えられている。

 免疫チェックポイント阻害薬は、18年にノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑氏が仕組みを発見。代表的な免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の創薬につながった。

 共同研究に当たる久保正二・大阪公立大医学研究科客員教授(元大阪市立大病院教授)によると、サ社の問題発覚後に発症した男性社員は、切除手術後に再発。既存の抗がん剤が効かない状態に陥ったため、40代だった17年にオプジーボを投与した。

 その結果、全身に広がっていたがんが消失した。6年以上経過した今も再発の兆候はないという。別の元従業員2人にも40歳前後でオプジーボを投与し、血液や画像の検査でがんが確認されなくなった。3人とも社会復帰しているという。

 久保客員教授は「遺伝子の変異が多い職業性の胆管がんには、免疫チェックポイント阻害薬の有効性が期待できるのではないか」とみている。

 サ社では最近も新たな胆管がんの発症者が出ている。関係者によると、23年12月にサ社で初めて女性の元従業員が発症し、発症者は22人に達している。うち12人が平均約40歳の若さで死亡した。

 発症した女性をよく知る元同僚の男性は「一緒に働いた仲間が次々と具合が悪くなり大変心配している。新しい薬の投与に注目したい」と期待する。その上で「早く発症に気付くことが大切だと思う。会社(サ社)は最近の発症者の人数の情報などを知らせ、注意喚起すべきだ」と指摘している。

 サ社の代理人は、昨年も発症者が出たことについて「大変遺憾」としながらも、情報提供の要望に対しては「発症者の人数などは、個人の推定などにつながる可能性があり、控えている」と説明している。【大島秀利】

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