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「でかい、ヤバい」 クマに襲われ頭の骨が 被害者語る実態と教訓


 昨年、東北地方をはじめ各地で住民を襲ったクマ。暖冬となったこの冬も目撃が相次いでいるが、春になれば冬眠から覚めて再び本格的に活動し始める。日常生活においてクマの存在感がかつてなく高まる今、備えは十分だろうか。人身被害が全国で最も深刻な秋田県で、実際にクマに襲われて重傷を負った男性に、被害の実態を聞いた。【聞き手・工藤哲】

北秋田市の湊屋啓二さん(66)

 ――襲われた時の状況は。

 ◆昨年の10月19日だった。市内中心部で、高齢女性や女子高生らが相次いで襲われていた。騒がしくて様子を見に自宅の外へ出て数時間後に車庫に戻ると、2メートルもない距離で黒い大きなクマと目が合った。

 「でかい、ヤバい」と思った瞬間、襲いかかってきた。その時はTシャツ1枚で薄着だった。腕の下3カ所、腰2カ所と足のつけ根1カ所を次々にかまれた。頭や顔、背中もひっかかれた。後で気づいたが、右の耳たぶは切れてなくなっていた。

 強く頭をかまれたり、かじられるなどして、頭皮が切れて骨の一部が見えてしまう状態だった。出血したので急いでタオルで止め、家族と警察や消防に通報した。頭に包帯を巻いてドクターヘリに乗せられ、秋田市の病院で治療を受けた。その後応急処置をし、8日間入院して退院できた。入院直後は左目が見えなかったが、次第に見えるようになった。あと数ミリずれていたら失明していたと思う。間一髪だった。

 ――どのようなクマでしたか。

 ◆おそらく1・5~2メートルの体長でかなり大きかった。きっと雄だ。よく見たら頭が黒ではなく、茶色がかっていたので高齢だったかもしれない。すごい力とスピードだった。おそらく走る速さは人の数倍だ。人力で対抗できる相手ではない。まだ捕獲されていないと思うので再びやって来るのではないかと心配だ。

 ――傷の状態は。

 ◆頭皮がビリビリして、突っ張るような感じがある。出血もあり、寝ていると枕に血がしばらくついてしまう状態だった。かまれた腕の付け根がまだ痛む。歯が食い込んで、傷が深く入ってしまった。1カ月間は肩より上に腕が上がらなかった。髪の毛も以前より抜けるようになってしまった。

 すぐに搬送してくれて病院で専門の医師に診てもらった。医療用ホチキスで傷口を閉じ、口や目の下を縫ってもらい、眼底検査や破傷風の処置もしてくれた。病院の対応は迅速で、とても感謝している。

「クマはまず目や顔を狙ってくる」

 ――課題や教訓は。

 ◆サイレンの音で異常に気づいたが、最初は「交通事故かな」と思った。近くに潜んでいる可能性があると分かった段階で、行政側や警察は住民に早く知らせてほしかった。動き回っていると分かったら、住民はとにかく家にとどまり、外を出歩かない方がいい。移動は極力、車でせざるを得ないと思う。

 クマはまず、目や顔を狙ってくる。そこをしっかり守ることが大切だ。現実的には、バイクなどのヘルメットを外出時にはかぶったり、革ジャンを着たりすることで傷を浅くできるのではないか。致命傷を防ぐためにもクマ用の「ヘルメット」や体に着ける「プロテクター」をぜひ早く開発し、市販してほしい。

 ――急に鉢合わせて、防御策はありましたか。

 ◆秋田県の担当者は、うずくまったりスプレーを使ったりするよう呼びかけているが、住宅地でとっさにやるのはまず難しい。襲われて負傷しても「運が悪かった」と泣き寝入りだ。被害者は予期せぬ形で襲われ、長期間にわたり心身に深い傷を負うが、支援態勢は非常に乏しい。行政側には何らかの支援策を検討してほしい。

湊屋啓二(みなとや・けいじ)さん

 北秋田市特産のバター餅本舗「鷹松堂」代表で、全国内水面漁業協同組合連合会理事。

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