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コロナ封鎖直前 命がけ脱北がドキュメンタリーに 支援者が語る秘話


 ミサイル発射を続ける北朝鮮で、住民たちの生活や人権状況は引き続き厳しい。中国経由で韓国へ向かおうとする住民もいるが、中国国内の統制強化により、脱出の難易度は高まっている。そうした中、新型コロナウイルス感染拡大による国境封鎖直前の2019年に北朝鮮を脱出した一家を追ったドキュメンタリー映画「ビヨンド・ユートピア 脱北」が製作された。主人公の一人、脱北支援団体のキム・ソンウン牧師に脱北の現状や映画化の背景を聞いた。

 19年のある日、韓国の地方都市に住むキム牧師のところに、米国で活動するマドレーヌ・ギャビン監督から、ドキュメンタリー映画撮影に協力してほしいと要請する電話が来た。

 「すぐに断ったよ。映画監督やスタッフがカメラを回す中で、中国の中を脱北者と逃げ回るなんて、中国当局に捕まえてくれと言うのと同じじゃないか」

 それでも最終的にはギャビン監督に協力すると決めたのは、その年の11月に監督が韓国まで来て「撮影に関しては全面的にキム牧師の指示に従う」と請け合ったからだ。

 同じタイミングで、北朝鮮を脱出し、中朝国境の中国側に隠れていたロー一家から、既に韓国にいる親戚を通じ救援要請が入った。そこで、キム牧師の団体スタッフらが中国に入り、中国内では目立たないよう携帯電話だけで脱出過程を撮影することが決まった。

 ロー一家にとっても、ギャビン監督にとっても、絶好のタイミングだった。決断が数カ月遅れていたら、コロナ対策のための移動制限で、脱出も映画撮影も不可能だったはずだ。

 映画に登場するのは2件の脱北過程だ。一つは成功し、もう一つは失敗した。携帯電話で撮影した緊迫感ある映像とともに、事態の進行そのものが「脱北ミッション」の難しさを示す。

 かつて脱北者はバスや鉄道で中国内を移動したが、今は身分証なしに公共交通には乗れなくなった。中国内のブローカーや協力者の助けを借り、北方の中朝国境から南部のベトナム国境まで数千キロを自家用車で移動するしかなく、1人あたりの脱出費用は200万円ほどかかる。

 キム牧師が映画化に同意したのも、脱北の必要性と困難さが広く知られ、国際社会からの支援の手が差し伸べられることに期待したためだ。これまで直接支援した脱北者は300~400人、ブローカーの紹介などの形で関わった人を含めれば1000人を超える。23年8月に北朝鮮がコロナ対策としての国境封鎖を緩和すると、すぐに支援を再開した。

 「2週間前にも3人、映画と同じルートで脱出させたよ」

 12月下旬に東京で話を聞いたキム牧師は、そう笑顔を見せた。

 完成した作品は先行公開された米国で好評を博し、23年のサンダンス映画祭米国ドキュメンタリー部門で「観客賞」を受賞した。日本でも24年1月12日から公開される。【米村耕一】

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