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人口130人の離島、留学応募なぜ増える?「最先端」と「温かさ」


 人口約130人の「魚島(うおしま)」。愛媛県唯一の離島自治体、上島(かみじま)町にあり、役場がある弓削(ゆげ)島から船で約40分かかる。町立魚島小中学校はこの春、全国募集の「魚島さざなみ留学」2年目を迎える。産卵期のタイ、サワラなど多くの魚が集まり、豊漁を伝える春の季語「魚島時(どき)」で知られる島。ここだけで味わえる瞬間を少年少女が重ねる「育ち時(どき)」に地域の未来をかける。

 現在、魚島小中学校の児童生徒は7人。地元で育った3人と、岡山、神奈川、大阪、香川からの「留学生」4人がともに学ぶ。大阪から来た中学2年の参河遼(みかわ・りょう)さん(14)は沖永良部島(鹿児島)、石巻市(宮城)でも留学経験があるが、2023年4月からの魚島生活では「今までで一番、地域に関わる回数が増えた」という。

 学校行事で底引き網の体験をしたのは初めて。島で盛んな卓球にも熱中した。住民総出で楽しむ祭りでは、重いみこしをかついだ。島の住民は4人を、「遼さん」「快吏(かいり)さん」などと名前で呼ぶ。「自分のことを思ってくれる。うれしい」と感じる。

自然体験とICT教育を重視

 ピーク時の1950(昭和25)年に全校で279人がいた魚島小中学校。ところがこの数年は3、4人になった。学校存続のため町教委が打ち出したのが、「自然」と「ICT(情報通信技術)教育」を両輪とする、さざなみ留学だ。人型ロボットの「Pepper(ペッパー)」を学校に常駐させ、子どもたちが自在にプログラミングする。米国人、英国人の2人によるALT(外国語指導助手)による週2回の英語教育も強みだ。

 2023年10月の国語の時間。7人は方言について学んだ。方言と共通語の違いを知ったあと、魚島の方言の意味を考えた。「いきいきどんこ」の意味を聞かれ、「とても苦労している」と正解した留学生が何人もいた。「地域の人と話して、いつもたくさんの方言を聞くから」だ。自分たちの方言についてもさまざまに話し合い、かけがえのない時間になった。

 住宅を改修した男女別の寮に入る4人。保護者と学校、留学生はオンラインで毎日結ばれ、画像が次々に届く。頑張ったこと、感じたこと。書き込み報告も絶えることはない。

中学校卒業後の進路も用意

 一方、弓削島にある上島町内唯一の高校で、やはり全国募集の愛媛県立弓削高校にも町教委が17年に県内初の「公営塾」を設け、地域おこし協力隊員らを運営に起用して魅力ある学校づくりを進めている。自宅から通えない生徒のため、町教委は新たに「ゆめしま寮」(30室)を24年の春に開くなど、離島留学生の「その後の道」も用意されている。

 魚島小中学校の24年春からの留学応募者は17人。中学までを魚島で過ごすだけでなく、それ以降の飛躍を心に描いて島を訪れる生徒、保護者は増えている。香川県丸亀市出身の中学3年、中野咲恵さん(15)も、上島町の環境に魅力を感じる留学生の一人だ。「みんながフレンドリーで、家族のように感じられる。弓削島はサイクリストも多く、国際交流が身近にある」。英会話に磨きをかけ、観光ガイドや通訳への礎も上島町で築いていく考えだ。

 魚島で生まれ育った小学5年、横井壮輔さん(11)は学校で最年少。「(何年もの間)年上しかおらんかったから、年上に負けんように頑張る」と話す。でも、同級生や下級生を迎えたいという願いもある。「ここに来てよかったなと思ってもらえるように、僕たちが全力で楽しませる」と胸を張る。

 「自己実現ができる学校」(清水伸・町教育長)へ向け、それぞれの歩みが続く。【松倉展人】

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