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アイヌ伝承の地に新たなメガソーラー計画 乱開発防止指針「骨抜き」


 北海道白糠町と釧路市音別町(旧音別町)の境界にある馬主来沼(パシクルトウ)西側の民有地で、新たに民間事業者による大規模な太陽光発電計画が浮上している。「イオル」と呼ばれるアイヌ民族の伝統的生活空間だが、5月にも海岸線で別の企業の計画が浮上しており、ソーラー事業の草刈り場と化している。

 今回は東京都中央区の事業者が計画。27日に縦覧が始まった環境影響評価(アセスメント)の第1段階となる「計画段階環境配慮書」によると、馬主来沼西側の総面積約330ヘクタールの山林に、道内最大規模となる発電出力49・9メガワットの大規模発電施設を整備する。

 馬主来沼は環境省が選ぶ「重要湿地」の一つ。沼の東側一帯は白糠町の「馬主来自然公園」で、河口には寄り鯨がアイヌ民族のコタン(村)を救った伝承がある「フンペリムセ発祥地」の高台がある。

 そこから望む夕日は釧路市の「音別新八景」に選ばれている。市作成のパンフレットには「冬に近づくにつれ、徐々に海寄りに沈む黄金に輝く美しい夕日を眺めることができます」とある。

 今回の計画地は、そこから直線距離で北西へ1・4キロ付近の山林。計画面積は確定していないが、最小で53ヘクタール、最大で84ヘクタールを太陽光発電用地として使う予定だ。

 配慮書には「可視範囲に馬主来自然公園が含まれているため、地域の要望や生活環境の計画変化に影響が生じる可能性がある」などと記述されている一方で、53ヘクタールを用地とする案については「景観変化に伴う活動と場の価値への影響も少ない」としている。

 同社は毎日新聞の取材に、この高台からできるだけ離れた場所に計画したことについて「送電線が近い」ことを第一の理由に挙げ、さらに「できるだけパネルが見えないよう景観にも配慮した」と説明。その上で「広大な土地だが、今の計画以上に(太陽光発電施設を)整備しないと断言できる」とも語った。

 予定地の一部は、釧路市が7月に施行した「太陽光発電施設の設置に関するガイドライン」に基づく、「設置するのに適当でないエリア」や防霧保安林なども含まれている。

 また、計画地付近では1993年から国の特別天然記念物のタンチョウ1つがいが毎年のように繁殖しているほか、沼の周辺でも最大2つがいが繁殖している。

 今後は道と経済産業省が審査に入り、来年6月からは約2年かけて環境影響調査が行われる。事業者は12月19日に「釧路市音別町コミュニティセンター」で住民説明会を開くことにしている。

 馬主来沼西側では5月、今回の計画地から約1・5キロ離れた海岸線で、別の東京の企業がメガソーラー(発電出力1・999メガワット)を計画していることが判明。乱開発を防ごうと同市は7月にガイドラインを施行したが、次々と浮上する計画に、市民からは「骨抜き」との声も上がる。

【本間浩昭】

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