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800万円を泣く泣く工面「地獄です」 我が子のホスト通いに悩む親


 25歳の娘が家を出る時、いつも通りに「いってらっしゃい」と声をかける。それが、つらくてたまらないと夫婦は言う。「娘が何をしに行くか、分かっていながら見送るんです。地獄ですよね……」。娘は行き先を言わないが、2人は知っている。収入を得るために働く性風俗店か、そうでなければホストクラブだ。

「どうも娘が風俗店に…」

 我が子がホストクラブに通い詰め、多額の借金を背負ってしまったと悩む親が増えている。東京・歌舞伎町に事務所を構える公益社団法人「日本駆け込み寺」には今年に入って、50件近い相談が寄せられている。

 「娘から何度も借金の肩代わりを頼まれた」「どうも娘が風俗店に勤めているようだ」「そもそもホストクラブがどういうところか分からない」

 前代表で理事の玄秀盛さん(67)は「これほど相談が絶えないのは明らかに異常」と話す。新型コロナウイルス禍が始まる前、こうした相談は年に数件だった。

 25歳の娘と向き合う夫婦も7月以降、何度か相談に訪れた。妻は専業主婦、夫は会社勤めでいずれも50代。東京近郊に住んでいる。娘が1年半で歌舞伎町のホストクラブにつぎ込んだ金額は1000万円。夫婦が肩代わりした分だけで800万円を超える。

 初めて娘のホスト通いを知ったのは2022年の年明けだった。「借金が80万円あり、返済のためにお金を貸してほしい」と相談された。ホストクラブへの支払いのために消費者金融から金を借りたという。

 会社員だった娘は、月々の給料から返すとも言った。その年の夏にも同じようなことがあった。「はまったわけじゃない」と言われ、2度とも頼まれた額を貸した。

 しばらく止まっていたホスト通いが再び始まったのは、23年に入ってからだ。職場の人間関係や残業、ストレスから再び足が向いたようだった。娘はやがて会社も辞めた。

お互いに「どうしていいか分からない」

 今春以降、何度か「売り掛け(ホストクラブへの借金)がある」と、金を貸してくれるよう頼まれた。数十万円から、多いときには200万円近く。夫婦は「これが最後」と思いながら、その度に金を工面した。

 家族で何度も話し合った。娘は「風俗で働いて返す」と言い、妻は絶句して泣いた。その後には、娘が泣きながら「昼の生活に戻りたい」と言ったこともある。「本心だった」と妻は思う。「自分を傷つけながら、本人もどうしていいか分からないのでしょう。私たちもどうしていいか分からない」

 夫婦が苦しんだのは、誰にも相談できなかったことだ。隣近所や親戚、勤務先の同僚。「正直言って、親として娘の状況が恥ずかしかった」。夫婦で励まし合ったが、今後どうなるかも分からず、不安が募った。7月、ネットで知った日本駆け込み寺を訪れた。

 夫は言う。「自分の家族がこうした問題に直面するなんて思いもしなかった。夜の街に関する何の情報もなく……。娘に金を出したのも、最後は娘のためじゃないんです。自分たちに何かの危害が及ぶのが怖かった」

「法的な規制を」

 日本駆け込み寺は7月、同じような悩みを抱えた親たちの当事者団体「青少年を守る父母の連絡協議会」を立ち上げた。「ホストにはまるのは何も特殊な子やない。問題は、学生や社会人になりたての女性に一度で30万円、50万円も払わせるホストクラブがあること」と玄さんは話す。「とても払えない額を借金としてホストに背負わされた女性たちが体を売る構図もある。貧困ビジネスの一種で、『自業自得でしょ』と言っては何も解決せえへん」

 協議会では、悩む親同士の情報交換や解決に向けた相談に応じる。顧問に就いた加藤隆太郎弁護士は「個別のトラブルは債務整理で解決できることもあるが、もはや構造的な搾取が起きている。売り掛けを規制するなど法的な枠組みを設けることが必要だ」と話している。

 問い合わせは、日本駆け込み寺内の協議会専用ダイヤル(03・5291・5335)へ。【春増翔太】

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