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ブラックホールを立体模型で 視覚障害者が情報を「触って」理解


 3Dプリンターで製作したさまざまな立体模型に触りながら、視覚障害者への情報提供の可能性を考えるシンポジウムが8月5日、オンラインで開かれた。日本のほか、イギリスや中国から参加した視覚障害者や支援者、研究者ら160人余りが参加。今回はブラックホールなど「形のないもの」の立体模型が事前に送られ、参加者はそれらに触りながら専門家による解説を聞き、宇宙への理解を深めた。

 シンポジウムは、大学入試センターの教授で全盲の南谷和範(みなたに・かずのり)さん(46)らが科学技術振興機構の助成をもとに「誰もが知りたいもの、必要なものを自由に手に入れ触れられる社会」を目指して取り組んでいる研究プロジェクトの一環。8回目となった今回は、まず京都大名誉教授で天文学者の嶺重慎(みねしげ・しん)さん(65)が専門にしているブラックホールについて講演した。

 ブラックホールは、ガスや星、光など何でも吸い込み、宇宙の一番の謎と言われている。2019年に世界で初めて画像撮影に成功し、昨年、二つ目が撮影され、話題になった。ブラックホールの多くは直径50キロで、大きいものは太陽系サイズ。嶺重さんは「近づくと、スパゲティのように細く引き伸ばされて吸い込まれる」と切り出した。ブラックホールの入り口では、滑り台を滑るように光の速さで吸い込まれる。入り口の周りでは、強い重力で曲げられた光が永遠にくるくる回り、その部分は光っていると解説した。

 続いて、参加者に事前に送られたドーナツのような形をしたブラックホールの立体模型に言及。昨年、撮影された天の川銀河の中心部にあるものをもとに作った。嶺重さんは「ブラックホールの形や中が真っ暗なのかは、よく分かっていない。その中には物質の根源的な姿がつまっていると言われている」と前置き。今回の模型では、真ん中のへこんだ部分がブラックホールで、その周りがくるくる回っている光だと説明した。

 参加者からは「ブラックホールは、どの方向からも同じように見えるのか?」「ブラックホールに衝突した隕石(いんせき)はあるのか?」など多くの質問が寄せられた。

 その後、新潟大の教授・渡辺哲也(わたなべ・てつや)さん(55)が、プロジェクトによる立体模型製作の取り組みを振り返った。立体模型化すべきものとして、①大きすぎたり小さすぎたりして触れないもの②動いていて触れないもの③触ると壊れるもの④触るのが危険なもの--を挙げた。

 今回は、シンポジウムに参加したことのある視覚障害者からのリクエストもあり、天文学が扱う「形のないもの」としてブラックホールを取り上げたという。更に、参加者に前もって送った「入道雲」や「ウロコ雲」、「(打ち上げ)花火」といった夏の風物詩の模型の形を説明。視覚障害者が、触って分かるように①何を伝えるべきかを考える②画像の濃淡・色などに応じて高さを変える③両手に収まる程度の大きさにする④模型の解説文が必要--と伝えた。

 プロジェクトによる新たな試みも発表された。個々のニーズに応じた立体模型を全国で提供できるようにするため、プロジェクトがこれまでに培ってきた製作のノウハウを伝える「さわれる模型製作研修会」の開催だ。例えば点字図書館の職員が、図書館の建物や新刊図書に関連する建築物などの模型を作れば、視覚障害利用者がそれらに愛着を持つことが考えられるという。

 初の研修会の対象は支援者など視覚に障害のない人で、今年11月から来年3月まで全4回、東京都内で対面で行う。第1回は、11月1日から3日に開かれる視覚障害者向け総合イベント「サイトワールド」の最終日に実施。この日は、どんなソフトでどう造形するかを伝える。2回目は、どう加工すれば触れるように作れるか、3回目は、触って観察する人のために製作するうえで何に留意するべきか、最終回は障害の有無に関係なく楽しめる模型作りの工夫について――がテーマとなる。参加者の募集は9月上旬からで、今年度は助成があるため参加無料。

 受講修了者には、研修後、必要な立体模型をプロジェクトの3Dプリンターで製作・送付し、造形エラーに対してアドバイスする。加えて、立体模型製作の手伝いができる人として「全国造形サポーターマップ」(準備中)への登録も勧める。南谷さんは「プロジェクトの取り組みで立体模型に対する視覚障害者のニーズが確かにあると分かった。助成が終わった後も何とか提供できるように継続したい」と協力を呼びかけた。問い合わせは、同プロジェクト(3d4sdgs+sympo8@gmail.com)へ。【佐木理人】

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