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欲求不満抱え…電車内無差別襲撃、法廷で見えた両容疑者の共通点


 2年前、小田急線と京王線の車内で乗客が無差別に襲われた事件で、2人の被告は、欲求不満を抱えて孤立化し、面識がない他者に責任転嫁する身勝手な理屈を公判で明かした。法廷でのやりとりからは、2人に共通する無差別襲撃の「6要因」が見えてきた。

 「小中学校で同級生から毎日のようにゴミを投げつけられたり、無視されたりした」。京王線乗客襲撃事件を起こした服部恭太被告は被告人質問で、いじめを受けて他人に恐怖心を抱くようになった経緯を説明した。

 「友人と呼べる人が誰もいない中、唯一の大きな存在」として恋人がいたが、9年間交際した末、2020年11月の誕生日に別れを告げられた。7カ月後には女性が結婚したことを知り、「自分の存在価値が分からなくなった」。

 同じ頃、職場でも顧客とのトラブルの末に部署が異動となった。過去に自殺を図って死にきれなかったため、「死刑になるために人を殺すしかない」という理屈を持ち出し、自らを正当化した。

 インターネット経由でナイフ1本を入手し、ホテルを転々。人の命を奪うことへのためらいもあり、殺人をなんとも思っていないように見えた米映画のキャラクター「ジョーカー」になりきろうと考えた。ハロウィーンの日、ジョーカーに扮装(ふんそう)し、2カ月前の小田急線車内刺傷事件を模倣して京王線で乗客を襲った――。

 精神科医の片田珠美さんは「無差別殺傷事件を引き起こす6要因が認められる。小田急線の事件も同様だ」と指摘する。

 「6要因」とは、米国の犯罪心理学者が指摘した大量殺人事件の背景要因で、①長期間の欲求不満②他責的傾向(周囲に責任転嫁する傾向)③破滅的な喪失④模倣⑤社会的・心理的な孤立⑥武器の入手――を指す。

 小田急線事件で懲役19年の実刑判決が確定した対馬悠介元被告も、大学を中退してアルバイトや派遣先で働く中で友人と疎遠となり、劣等感を覚えたと法廷で振り返った。食料品店で万引きを見つかり、「出入り禁止」を告げられたことで怒りが抑えられなくなったとした。

 片田さんの分析によれば、京王線事件の服部被告は、いじめによる対人不信から長期の欲求不満と孤立につながり、交際相手との別れが「破滅的喪失」だったとみる。小田急線事件の対馬元被告も非正規勤務によって、やはり欲求不満と孤立の状態にあり、「苦しんできた自分には例外的に許される」と考えていた万引き行為を通報されたことを「破滅的喪失」と受け止めたと推測する。

 関西国際大の中山誠教授(犯罪心理学)は「『死にたいなら一人で死ねばいい』と思われがちだが、一人では死ぬことができないから事件を起こす。一筋縄ではいかないが、孤立化を防ぎ、大事なものを喪失した体験を相談できる居場所づくりを地道に進めていくことが重要だ」と指摘した。【斎藤文太郎】

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